3-4:本当のこと言うと
3-4:本当のこと言うと
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『lord Purple Star』
もう何度目か分からない呪文が、カードに刻まれる。
左右から同時に襲いかかってくる黒い拳を避け、流誠は呪文を思い描き、カードに文字を浮かび上がらせる。しかし、
『Purple Star Al……』
逃げた先には別のクレデターがいて流誠は、新手に気を取られてしまった。
カードに刻まれていた文字が儚くも消えていく。
紫騎士の『Purple Star』はその威力ほど絶大だが、魔法を完成させるにはそれ相応の呪文が必要となるのだ。
呪文をカードに刻んでいる間に、四方八方から同時に攻撃されていては、とてもじゃないが、呪文を最後まで作れない。
しかも、今日のクレデターは今までのクレデターとは明らかに違う。
二足歩行で手もちゃんと二本あるし、頭もある。
ぱっと見は人間に見えなくもないが、口や鼻などのパーツは一切無い。
それはまるで、人の影が立体化したかのような存在だった。
しかも、このクレデターは僅かながらも知識があるように思える。
流誠が魔法を使えないよう、見事な連携技で息つく暇を与えない。
「っく」
戦闘が長引くにつれて、流誠の反応は僅かに遅くなっていた。
ティーカのナイトとは言え、流誠の本職は教師だ。
人並み以上の体力は持っているわけではない。
人型クレデターのボディーブローがクリーンヒットし、流誠は地面を転がる。
「流誠」
体内の毒液を吐き、人型クレデターを牽制していたティーカが慌てて流誠の元へ飛ぶ。
一気にとどめを刺そうと流誠に群がる人型クレデターに向かって、狙いなんて定めず、とにかく毒液を吐き散らす。
「っく。やっぱ、思った通りボクの魔法は、一対多数には向いていないみたいだね」
口の中の血を吐き飛ばし、流誠が口元を歪める。
それは何も痛みのせいだけではない。
紫騎士の証であるカードを手にしてもティーカを守ることが出来ない自分に対する、自虐の笑みでもある。
「シャアア。こいつら、派生型は、寄生した世界の生き物をまねて、進化してしまったクレデター。
シャアアア。でも、派生型が生まれるには世界に寄生して30年は掛かるはず。シャア、どうして」
体内の毒液の底が近く、合計9体の人型クレデターを倒すには明らかに足りない。
ここは逃げるしかない。
今の、流誠とティーカでは、人型に進化した派生型クレデターには勝つことが出来ない。
「流誠、毒液の霧を作るから、その隙に逃げるわ……」
『殲滅』
その時、流誠とティーカは確かに、魔法が発動するのを感じ取った。
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