21-8:七つ巴 8
21-8:七つ巴 8
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うわぁ、があぁ」
鳴恵の右腕に激痛が走る。
次元振動に当り、クロートの覚醒が早まっていく。
耐えきれず、両膝を地面につけ、左腕でクロートを握りしめる。
急いで、すぐ隣にいるリリシアを見る。
そこにいれば、魔力を喰われる。
瞳では確かにそう伝えたはずなのに、リリシアは先程の鳴恵がそうであったかのように、笑顔で鳴恵の忠告を無視して、そこに立っていた。
「妾は、けして友を見捨てはしない」
鳴恵にだけにしか聞こえない小さな、でも、心強い言葉だった。
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そして、奴らが前触れとして、前触れもなく現れた。
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「クレデターなの!?」
小歌の驚愕が示すように、そのクレデターは普通では無かった。
漆黒ではなく桜色をしたクレデターの出現。
この場にいる六人の魔法使いの表情がそれぞれ変わる。
「小職らの次元振動が呼び寄せたのか? それとも、この色は……」
秋生はコイン型MSデバイサーから火球を生み出し、流誠に対して零距離発射を行う。
『Flame Fire』
爆風に煽られ、流誠の体が次元監視者から離れた。
もちろん、自身にも相応のダメージが残るが、これ以上次元振動を招き事態の悪化を招くわけにはいかない。
「桜色のクレデター。何故だ、何故、ティーカの気配がこいつらから?」
流誠は肌に感じる魔法の気配に戦慄した。
呟いたように、このクレデターからティーカによく似た感覚を感じてしまう。
「動き出すか、サクラ」
乱の呟きに呼応するかのように桜色のクレデターが一気に動き始めた。
彼らの狙いはただ一点。
鳴恵の腕にある黄金のブレスレットのみである。
「………」
リリシアは無言で、桜色のクレデターを眺める。
クロートがこれだけ近くにあり、かつ先程の次元振動でその魔力吸収力も格段に増えている状況。
魔法を使うことはもはや出来ない。
覚悟を決め、ゆっくりと深呼吸をする。
「ふう。まあ、やるだけの事だけはやらないとな。こんなんじゃまだまだ諦めきれないぜ」
鳴恵は桜色のクレデターを見つめつつも、いつも通りの口調であった。
秋生と流誠が離れたことで、取りあえずの次元振動は収まり、それに呼応してクロートから流れてくる激痛も止まった。
これなら動くことも出来るし、微力ながら戦うことも出来る。
生憎、武器である弓矢は背負ってないが、人間が原始の頃より持っていた武器、拳ならちゃんとある。
桜色のクレデターを相手に、鳴恵とリリシアは魔法ではなく、我が身で戦った。
人形として人工的に作られた存在であるリリシアは、その身体能力もまた人を超えている。
常人には捉えることの出来ない蹴りでクレデターをなぎ倒していく。
鳴恵もまた引かず、桜色のクレデターにクロートを奪わせない。
そして、闇法師ある所に月島あり。
緑の閃光が、桜色の闇をなぎ払った。
二人目の魔法使いが、七番目として登場したのだ。
「鳴恵、リリシア。大丈夫?」
愛刀、津樹丸を構え、月島の剣士は桜色の闇法師を斬り殺していく。
状況を知らない玉露は躊躇うことなく、魔法を使い闇法師を狩る。
それを咎めるいとまは無かった。
刹那の一撃で、この場にいた桜色のクレデターは全滅したのだ。
そして、訪れる静寂。
流誠、玉露、小歌、秋生、リリシア、鳴恵、乱。
七人はここに今、集い、そして、己が信念の元、それぞれが敵と戦うのだ。
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