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21-7:七つ巴 7

21-7:七つ巴 7


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 乱の持つMSデバイサー”プロミス・オブ・AS”が刹那、鳴動した。

 流誠が魔法を使ったことにプロミス・オブ・ASが反応したのだ。

 敵はまだ流誠の存在に気づかず、その使命に満ちた瞳はいまだ”クロート”から離れていない。


 魔力を持つ青い瞳の少女のすぐ隣にクロートがあるため、次元監視者は下手に動くことが出来ないのだろう。


下手な魔力攻撃はクロートに吸収されて、クロートの覚醒を早めるだけ。

 そのすぐ横に、青い瞳の少女という豊富な魔力源があるのだ。

 僅かな魔力が引き金となり、クロートの覚醒は爆発的に進展する可能性がある。


 あのクロートをはめた女性、敢えてその身を前に出すことで次元監視者を牽制している。

「大した女だぜ」

 魔力が全くないというのに、MSデバイサーを持つ魔法使い達と互角に渡り合う彼女を賞賛し、しかし、乱は動く。

 闇騎士である彼は、次元監視者とは違い、この次元を守るために戦っているのではないのだから。


『Black River』


 プロミス・オブ・ASから、鳴恵めがけて魔力が黒の奔流となって迫る。

 鳴恵とリリシアは咄嗟に黒の奔流を避けるが、元々攻撃が狙いではない。

 あくまでもクロートの回りの魔力密度を高めれれば、それで良いのだ。

 後はクロートが勝手に魔力を吸収してくれる。

「近衛乱!!」

 それまで鳴恵を見ていた秋生の標的が乱へと戻る。

 コイン型MSデバイサーから火球が乱に迫るが、乱はそれらの火球を難なくかわすと、鳴恵との距離を一気に詰めていく。


 魔力を持つ乱が、直接クロートに触れれば、その覚醒はさらに促されることだろう。


 来名秋生が放つ火球を避け、乱は駆ける。

 この瞬間、この場にいる者全ての瞳が乱に集まっていた。


「ああああぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!?」


 そして、来名秋生の驚愕の声が聞こえてきた瞬間、乱は溢れてくる笑みを抑えることが出来なかった。

 次元監視者は、次元の危機を気にするあまり、己が狙われていることを失念していたのだ。


「流誠、私達の借り、そいつに返してやれ!!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 左腕が動かなかった。

 クロートを覚醒させるべく動き出した近衛乱。

 彼は囮だったと気づいたときには既に後ろを取られてた後だった。

 

 魔法が解け、透明だった彼の姿が露わになっていき、同時に彼に握られている左腕か次元振動を起こし、秋生に激痛を伝える。


「お前は、久我流誠」


 ステルスの魔法が解け、姿を現したのはティーカを守ると誓った騎士。

 どういう因果が動いたのか、まさか、近衛乱と久我流誠が手を組んで居たとは想定外の出来事だ。

「久しいね。ティーカを返してもらうよ!」

 そう言って、流誠はさらに秋生の腕を握りしめる。

 元々この次元の住民ではない秋生とこの次元の住民である流誠が触れあうと言うこと、それは僅かであれ次元振動を引き起こす。

 次元振動が引き起こす痛みは耐えれないわけではない。

 だが、今この場にはもっとも次元振動に触れさせて場なら無いMSデバイサー、クロートがある。

「愚か者どもが!」

 秋生は吼え、流誠を振り解こうとするが、流誠は離れない。

 逆にもう一方の手も使い秋生の動きを封じる。

「ああ、ボクたちは愚かだよ。でも、魔法が使えない今、お前を倒すにはこの術しかない」

 迷いのない決意。

 次元振動は自らの身も削っているというのに、流誠は秋生を抱きしめ、さらに次元監視者へ触れていく。


「離せ。このままではお主も壊れしまうぞ。それに、それ以前に、この次元が!」

「なら、その前にティーカを返せ!」


 次元振動に当り、互いの肌が裂け、全身が切り傷で覆われていく。

 刹那でも気を抜けば、意識が飛んでしまいそうな激痛が、二人を襲い、しかし、騎士も次元監視者もいまだ折れない。


 次元振動がさらに増していく。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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