21-4:七つ巴 4
21-4:七つ巴 4
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水の獅子と氷の狼が桜色のクレデターを喰い殺す。
しかし、桜色のクレデターは簡単には死なない。
例え、腕一本であろうとも、その体の一部さえ残っていれば、奴らは刹那で再生してしまうのだ。
鳴恵には時間はかからぬと言い切ったが、これはもしかしたら少々手間取るかもしれない。
青人形であるリリシアは召還魔法が得意ではあるが、それしか使えない訳ではない。
一定区域にのみを攻撃する殲滅型の魔法だって幾らでも使える。
しかし、この桜色のクレデターには気になる能力も備わっていた。
その能力があるが故にリリシアは殲滅型の魔法を使うのを躊躇い、こうして一体ずつ確実に、少ない魔力で倒しているのだ。
「!?」
青の瞳が別の魔法を感知した、それも鳴恵の逃げた方角だ。
さらに、この魔力反応は、秋生が確保したはずのティーカのMSデバイサーである。
状況は刻一刻と変わり続けている。
それなのに、桜色のクレデターに足止めされている自身が不甲斐ない。
大切な、友を守りたいというのに。しかし、
『殲滅』
しかし、リリシアの友は鳴恵一人だけではない。
緑色の刀剣が桜色の闇法師を一刀両断し、その魔力は闇法師の欠片も残さぬほど悪しき存在を焼き尽くす。
「玉露!」
闇法師を狩るべく二人目の魔法使いがここに参上した。
「リリシア。鳴恵は一緒じゃないのか? この嫌な反応、鳴恵に凄く似ている」
津樹丸で闇法師を狩りながら、玉露はリリシアに問いかける。
「汝の勘は正しいぞ。今の鳴恵は、ある種の次元爆弾だ。それ故に、先に逃げてもらった」
玉露に近づき、互いに背中合わせになりながら、リリシアは簡単に状況を説明する。
今は時間がおしい。
一秒、刹那の遅れが、次元の崩壊を引き起こす可能性もあるのだ。
リリシアの簡単すぎる説明では玉露は状況を飲み込めない。
だが、たった一つ玉露にとって大切な事だけは分かった。
「分かった。なら、ここは僕に任せて、リリシアは鳴恵の所に。
リリシアは鳴恵の友達なんだろう、だから、僕の分まで鳴恵を守って」
「しかし、こやつら、手強いぞ。玉露、汝独りでは手こずるぞ」
「でも、僕は独りで十分だから」
いつも、まるで自分に言い聞かせる呪文のように言い続けてきた言葉。
だけど、今は何故かこの言葉を呟いても力が湧いてこなかった。
それでも、鳴恵とリリシアのために玉露は津樹丸を構える。
「恩に着るぞ。だがな、玉露、一言だけ言わせろ。
確かに、鳴恵は妾が友じゃ。
そして、玉露、汝もまた我が友であることを忘れるでないぞ」
その言葉を残し、リリシアは水の獅子に跨り一気に戦線を離脱して行った。
遠くなる青の魔法使いを玉露は笑顔で見守っていた。
リリシアに言ってもらったその一言が、何と心強い事か。
玉露は津樹丸をしっかりと握りしめ、桜色の闇法師を見据える。
『親友』
津樹丸の刀身に文字が刻まれた瞬間、緑剣士は友のために駆けた。
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