21-1:七つ巴 1
21-1:七つ巴 1
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「さあ、始まりだよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
魔力のない鳴恵でもその次元振動を感じることが出来た。
右腕にはめた”クロート”が振動に共鳴を始め、鳴動を始める。
「リリ!」
「分かっておる。何やつが知らぬがやってくれるわ。
クロートの位置をあぶり出すためだろうが、これほどの次元振動を繰り返せば、本当に次元が壊れしまうぞ。
鳴恵、早く準備をしろ。ここにいれば、小夜子達も巻き込むことになる。
いくぞ」
「ああ、分かったぜ」
六人目の魔法使いと四人目の魔法使いは金のブレスレットと青の瞳を輝かせた。
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鳴恵とリリシアは街を駆けていた。
一体誰が敵なのか分からない状況、何処にいけば安全なのか誰も知らない。
いや、鳴恵の手にクロートがある限り、この次元の何処でも安全な場所はないのかもしれない。
不意にリリシアの足が止まった。
気配を感じたのだ。
かつて、ティーカを捕らえるために共に戦った彼が動いたことを青人形は感じ取った。
前は味方であった。
しかし、教会の対応が決まらぬ今、クロートを狙うのなら、次元監視者である彼もまたリリシアの敵だ。
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炎の翼を生やした朱天使と雪色の笛を提げた白歌姫がいた。
「小歌殿、小職は先に向かわせてもらう。”クロート”の場所、感知できているな」
「はい。もうばっちりです。小歌もすぐに追い付くんで、ライナさんは小歌を気にせず急いで」
クロートからこの次元を守るため、四人目の魔法使いと三人目の魔法使いが動き出した。
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玉露は街を駆けていた。
次元振動がこの次元に及ぼす影響を剣士はまだ知らぬ。
だが、それでも緑剣士は先程の次元振動後から感じる気配を追って駆けていた。
次元振動の謎を突き止めるのは月島の本家の意志。
月島の剣士として本家に従うのは当たり前のこと。
だけど、それだけじゃない。
闇法師とは全く違うはずなのに、
この気配を玉露は知っていた。
あの秋祭りの喧噪が耳に蘇ってくる。
「この気配、まさか、鳴恵なの?」
微かな期待と、過大な不安を胸に二人目の魔法使いは津樹丸を手に街を駆けていた。
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秋生は空を飛んでいた。
朱天使である彼は飛行能力を有し、その速度もこの地球の魔法使いでは太刀打ちが出来ないほどの迅速である。
先程の次元振動により再覚醒を始めた”クロート”。
この次元にあらぬ物が発する特有の違和感が消える前にクロートの元にたどり着くにはあまりある速度であるはずだった。
が、しかし、
「魔法だと、何者だ!!」
神速の速度で飛ぶ朱天使を漆黒の檻が閉じこめたのだ。
手にしたコイン型MSデバイサーから火球を生み出し檻にぶつけるも、簡単には壊れない。
「このタイミングで小職の邪魔をするとは、サクラ・アリスなのか? それともまだ他にいるというのか?」
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『Black Rock』
呪文を刻んだ漆黒のMSデバイサーが、役目を終え、まるで桜吹雪のように儚く散っていった。
「今度は、邪魔させないぜ、次元監視者よ」
窓から見えるのは枯れた桜の樹。
その奥に彼女の笑顔を思い出し、近衛乱は動き出す。
「久我流誠。ヘマして、私の足を引っ張るなよ」
「そっちこそ、しっかり、フォロー頼むよ」
共に大切な者を守り抜けなかった二人の騎士。
だが、彼らの心に大切な者が居続ける限り、騎士の物語は終わらないのだ。
七人目の魔法使いと、一人目の魔法使い。黒と紫の騎士は守るべく戦う。
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