19-7:桜からの乱入者
19-7:桜からの乱入者
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やっぱり、この手の魔法関係の物なら、教会に預けるのがもっとも無難だろう。
小歌もこの青年も魔法に何かしら通じて居るみたいだけど、教会の人間とは思えない。
波動がどうとか言っていたから、きっとリリもその波動というのに反応してすぐにここに駆けつけるだろう。
なら、こうして目の前の青年を弓で威嚇し、リリが来るまでの時間さえかせげは事態は好転するはずだ。
そう考えていた鳴恵の思惑は早速外れることになる。
突如として次元の亀裂が発生し、第三者がこの場に出現したのだ。
その者は、全身を薄桜色に染めた鎧で包んでおり、肉体という部分が全く見えていない。 本来なら露出しているはずの目の部分ですら、紅く発光しておりその奧をこちらから見ることは叶わぬ。
最初はあの青年の仲間かとも思ったが、青年の顔にも驚愕の表情が浮かんでいることから、違うのだろうと鳴恵は判断した。
薄桜色の戦士はまず、流誠と見て、次に鳴恵を見た。
その紅く発光している瞳が一段と強く光り、薄桜色の戦士は鳴恵に向って歩き出した。
どうやら、この薄桜色の戦士も鳴恵が狙いのようだ。
「ここに来た時点で、そうじゃないかと思っていたよ」
そう呟いて鳴恵は矢を放った。
正体不明の相手に確認もせずに矢を放つのは問題がある気がしなくもないが、薄桜色の戦士から放たれる殺気は小歌や青年のソレとは桁が三つほど違う。
何もしなければ、鳴恵はきっと殺される。
矢は薄桜色の戦士の左足に当たったが、その分厚い鎧に阻まれ、本来の目的である刺さるまでは至らなかった。
地面に落ちた矢を踏み砕きながら、薄桜色の戦士が鳴恵に迫る。
鳴恵は次の矢を弓に添えながらゆっくりと後退していく。
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突然の乱入者は流誠という存在を全く無視して鳴恵だけを追っていた。
部外者扱いされた流誠は選択を迫られることになる。
選択は、あの薄桜色の戦士につくか、金のブレスレットを持つ女性の加勢を行うかの二択だ。
見れば、女性の武器はあの弓だけのようだし、しかも魔法を全く使う気配がない。
使わないのか、使えない理由があるのか流誠に判断する術はないが、明らかに女性の方が苦戦を強いられている。
それに、あの薄桜色の戦士はためらいなく女性を殺しそうなほどの殺気を放っている。
クレデターの比などではなく、魔法使いとなって流誠が初めって感じるほどの圧倒的な殺気がそこにはあった。
「切り札は一枚か」
手にした漆黒のMSデバイサーを見る。
そこにあるのはたった一枚のカードだ。
ティーカを守るために使うと決意したこのカード、果たして他の女性を守るために使って良い物か?
「くうう」
爆発音と共に女性の悲鳴があがった。
見れば、薄桜色の戦士の両手に銃によく似た物が握られている。
アレから魔法を銃弾代わりにして撃ったのだろう。
「ごめん、ティーカ。でも、キミは絶対にボクが助けるから」
そう言って、流誠は漆黒のカードを薄桜色の戦士に向けた。
乱が教えてくれた通りだとすれば、このMSデバイサーで使える魔法は一枚に付き一度のみ。
ティーカを助けるために、秋生を戦うために、切り札は残しておきたかったが、そのために今ここで、あの女性を見殺しには出来ない。
心の中で呪文を唱え始めるその瞬間、だが、流誠は別の魔法の気配を感じ取り、詠唱を止めた。
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