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19-5:スタート アップ

19-5:スタート アップ


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 その次元振動は七人の魔法使い全員が感じ取ることができた。

 

 炎に包まれた世界にいた朱天使、

 小夜子と一緒にニュースを見ていた青人形、

 夜に備えて早めの食事に準備をしていた緑剣士、

 聖霞ヶ丘大学の敷地内にいた紫騎士、

 そして、

 闇色の騎士と彼が追っている桜色の狂気、

 

 その瞬間、誰もがクロートの発する振動を感じ取った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「リン殿、この世界の復旧は任せた。小職は至急、現場に向う」

「現場って、今の波動の事だよね。あれって、間違えなく……」

「ああ、クロートの波動であろう。サクラ・アリスが動いたのかは判断つかぬが、時は一刻を争う。リン殿、他の次元事件はお主に任せた」

 そうして、四人目の魔法使い、来名秋生は、サクラ・アリスの襲撃のよって甚大なダメージを受けていた自分の次元から飛び立つのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 同じ波動を、小夜子と元に三時のおやつを楽しんでいたリリシアも感じ取った。

「リリシアちゃん、どうしたの?」

「分からぬ」

「え?」

「妾にも分からぬことが起きている。何だというのか、今の波動は、まるで世界の次元が飲み込まれるではないかと思うほどの、津波のごとき波動は。

 ……まさか、フェイト……だとしたら、アレがやはり………」

「何かが起きたみたいね。私には、全く感じなかったけど、リリシアちゃんがそれだけ言うのだから、かなりの事態みたいね」

「この波動、放っておけばこの次元が崩れ去るぞ」

 事態は全く把握できていないが、危機だけはなんとか把握することができた。

 小夜子と一緒に入れないのが寂しいなどと嘆いている時間はない。

 下手をすれば、小夜子やリリシアの住むこの世界そのものが消えてしまうのかもしれない。

 青人間は青人形へと戻り、ベランダの窓から一気に飛び降り、水の獅子を召還するのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 クロートの波動を感じ取っても玉露は料理作りを止めはしなかった。

 気にはなったが、あの波動は闇法師のソレとは全く異質の波動だった。

 月島の使命は『闇法師』を狩ることだ。

 それ以外の事件まで手を出していてはとてもじゃないが体が持たない。

「ねえ、津樹丸 あの鳴恵って僕の料理食べたら何て言ってくれるかな?」


『不明』


「そうーだよね。津樹丸は僕のご飯食べれないもんね。今度また会うことがあれば、渡してみようかな」

 感じた波動がやがて来る試練の始まりであるとはまだ知らず、玉露はご飯を作り続けていく。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「すみません。急用ができました」

 そう言って、流誠は美術室を飛び出した。

 乱からもらった漆黒のカード―プロミス・オブ・AS―が激しく反応しているし、流誠自身も今の波動を感じ取ることで動悸が激しくなっていた。

 何が起きているのか分からない。

 これがティーカに繋がる道であるのかも分からない。

 だが、心も体も今を見過ごしてはならないと訴え、流誠を急かせる。

 波動の震源地はすくそこだった。

 目と鼻の先とも言える距離にいたのに、事が起きるまでに気づく事ができなかった事に違和感を感じながらも流誠は構内を走り、そして見つけた。

 

 力無く地面に倒れ伏す小歌と、呆然と右腕にはめた黄金のブレスレットを見つめる少女を。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「クロートだと、何処だ」

 ポケットからプロミス・オブ・ASを取り出し、乱は波動の逆探知をかけようとするが、既に波動は消えていた。

 小さく舌打ちをして、乱は空を仰ぐ。

 一瞬の出来事であったが、あれだけの波動だ。

 次元を越え、彼女の元にも間違えなく届いていることだろう。


 あの桜色の彼女に。


「お前はどうするつもりなんだ?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 クロートの波動を感じ取った瞬間、桜色の光はすぐに行動を起こした。

 配下の一体をクロートの発生元に転送させ、回収を命じた。

「やっぱり、ティーちゃんの言うとおり、あの次元にクロートもあったね」

「そうみたいね、サクラ」

 桜色の光がすぐ側にいる紫の妖精に語りかける。

 桜色はどこまで嬉しそうに、紫は全く浮かない顔つきであったが。

「どうしたの、ティーちゃん。全然嬉しそうじゃないよ。

 クロートが手に入れば、私と乱君のためだけの次元を作れるし、ティーちゃんもティーちゃんの次元を作れるんだよ」

「そうね。でも、素直に回収できるかは、分からないわ。あの波動からするに、きっと次元監視者もクロートに気づいたわ」

「大丈夫だよ、ティーちゃん。鉄鬼兵はそうそう柔じゃないよ」

 そう言う桜色の声は、サンタクロースを待つ子供のようにはしゃいでいた。


(でも、あの波動の震源は聖霞ヶ丘大学の付近。まさかとは思うけど、流誠。あんたは、今は魔法を使えないのよ。お願いだから、出てこないで)


 紫の妖精の願いは、しかし、既に砕かれ、紫騎士はクロートの前に居た。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



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