19-2:出会い。そして……
19-2:出会い。そして……
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「はああ。なんとか、終わったよ」
攻略時間、2時間45分。
小歌はなんとか、教官を説き伏せ、送れていたレポートを受理して貰えたのだ。
たかがレポートといえど、あの石頭教官はレポート一つが未提出だったため単位を与えなかったという噂がたっているのだ。
きっとここでの小歌のがんばりは無駄にはならないはずだ。
「とはいっても、休日がもう殆ど残ってないな。あ~、これから何しようかな。新しい服でも見に行こうかな」
とやっと手に入れた休日をどうやって過ごすか、考えている小歌。
そんな彼の耳元に、風を切り裂く音が聞こえてきた。
丁度、小歌が歩いている近くに弓道場があった。
考えもまとまらないしということで、小歌は何の気無しに弓道場へと足を進めた。
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「へええ」
弓道場で小歌は、真っ黒な黒髪をポニーテールで結っている少女に弾かれていた。
女性であることは顔立ちや、胸の膨らみから間違えない。
だけど、その女性の目つきは小歌が知る誰よりも雄々しかった。
雄々しき瞳が、静かに確実に的を射抜いている。
そして、その後を矢が追い、見事に的の中央を射抜いた。
素直に、凄く格好いいと小歌は思った。
それはどうやら、小歌だけじゃないようで、聖霞ヶ丘大学弓道部の中でも数人、黒髪ポニーテールの女性に、憧れと言うよりはときめきといった視線を送っている。
女性はそんな視線など全く意に介さず、静かに正座し他の選手へ射手を譲った。
「うん?」
そんな女性の右の袖口から金色のブレスレットが覗いていた。
弓道の事はよく分からない小歌だったが、あんな装飾品つけたまま試合とかしていいのだろうかと、さらに黒髪の女性への興味を増していく。
「よ~し、決めたっと」
休日の過ごし方を決めた小歌は、早速売店へ向かい、自分のお昼ご飯を買いに行くのだった。
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一方、その頃。
「はい、久我先生。せ~ので持ち上げるわよ。せ~の」
「はい」
一人の魔法使い、久我流誠は、いまだ片づかない美術室の清掃に悪戦苦闘していた。
彼の仕事はもうしばらく続きそうだ。
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