19-1:ティーカに選ばれし三人
19-1:ティーカに選ばれし三人
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「ふ~ん、ここが今日の練習試合の場所か」
弓道部に属している鳴恵は本日、他の大学へ練習試合に来ていた。
高校時代に出会った盟友に影響されて始めたこの弓道という競技。
高校の、それも二年からの参加というものあり高校時代は全く成果を出せなかったが、大学に入っても続け、いまでは何とか試合に出ても恥ずかしくない程度の腕前は手に入れることが出来た。
そんな鳴恵が、今日、練習試合に来たここは、私立聖霞ヶ丘大学。
彼女が、この日ここへ来たのは、偶然か? 運命か?
答えは誰にも分からず、だが、確実に物語りは進んでいく。
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「久我先生、この彫刻は倉庫へお願いします」
「はい」
日曜日の聖霞ヶ丘大学で、流誠は美術室の清掃を手伝っていた。
今宵は近衛乱と会い、互いの状況を確認し合う手筈を踏んでおり、それまでに自分なりにティーカの居場所を調べてたかった流誠だったが、ちょっと強引な美術教官の柚子先生に捕まってしまったのだ。
しかも、この柚子先生には、前回近衛乱と出会うきっかけとなった美術展のチケットを譲り受けているとかいう恩もあり、断るに断り切れなかった。
「はい。久我先生、しゃっきと働く。怠けたって仕事量は変わらないんだから、しゃんと働いて早く帰るわよ」
「了解」
理由はどうであれ、流誠はこの日、聖霞ヶ丘大学にいた。
ティーカがこの世界に残した最後のMSデバイサーがすぐ側に来ていることを、この時の彼はまだ知らなかった。
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「教官、ごめんなさ~い。送れていたレポートです」
休みの日だろうが、いや、休みのだからこそ余計に力を入れたゴスコリ(女装)少女は手にしたレポートを教官に差し出した。
本当は二日前の金曜日が提出期限だったのだが、すっかりと忘れていた小歌は、昨日一日で、レポートを仕上げて、教官室に強攻してきたのだ。
だが、小歌を前にしてもこの硬派で有名な教官は首を縦に振らなかった。
さあて、ここからいかにしてこの難攻不落の教官を口説いて……ではなく、説き伏せていくか。
小歌の戦いは、今まさに始まりのゴングを響かせたばかりなのだ。
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聖霞ヶ丘大学に集まった三人の魔法使い。
久我流誠、
藤永小歌、
神野鳴恵。
この日の彼らの出会いが、やがて七つを一つへ導いていく。
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