18-3:戦い
18-3:戦い
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「全くもって、今日限定だが、お前1人ぐらいなら、私が守ってやるぜ」
そう言って、乱は少女と異星人との間に立ちはだかった。
それまで乱など視界に入っていなかった8人の異星人達は己の標的を少女から乱へと移行させた。
「ちょっと、あなた何訳の分からないこと言ってるのよ。良いこと、私たちってまだ、互いの名前も知らない。たった今この場で出会っただけの存在なのよ。それなのに、どうして私を守るなんて言い出すのよ」
少女の必死の思いは、しかし、乱には届かない。
一度守ると誓った騎士はもはや後ろを振り向きはしないのだ。
「私がお前を守る理由、それはきっと簡単な事だ。
私とお前は似ている。お前は異星人に恋し、私は異次元人に恋した。
共に、許される恋ではないから、お前を見ていると少しだけ自分を見ているような気がした。だから、なんだろうな。私は、お前を少しだけ助けてやりたいと思ったんだよ」
そして、少女を振りきって乱はさらに前に出た。
自ら8人の異星人達の中心へ歩み進んでいく。
「だからって、そいつらは人間じゃない。あなたが戦って勝てる相手じゃないわよ!」
「そうでもないさ。これでも、異形のモノとは戦い慣れているんでね」
乱の言葉が合図となり、8人の異星人が同時に襲いかかってきた。
一部の隙もない連係プレイだが、乱のその全てをステップでも踏んでいるかのような軽やかさで捌いていった。
「あの男、戦い慣れている……」
乱と8人の異星人との戦いを眺めつつ少女が呟いた。
元々はこの星を侵略するためにやって来た彼女だ。
もちろん、武術にだって覚えがあるがその彼女を持ってしても乱ほどの動きが出来るか疑問である。
「でも、駄目。動きが良くても、決め手がない」
少女の呟きのように、乱の動きは申し分のない物である。
しかし、丸腰の彼は8人の異星人を倒す術を持っていない。
それに対して異星人達は皆、銀色の棒を携帯している。
あの棒は接触した物に超高周波を流し込み、物体を内部から破壊する兵器だ。
一度でも接触すれば、その瞬間に乱の命は潰えてしまう。
「おい、一つ聞かせろ。こいつらの武器、私が奪っても使えるか?」
「それは絶対に駄目。あなたが持てば、その瞬間、あなたは内部から壊れてしまうわ」
「そうか。分かった」
戦闘中だというのに、会話をする余裕が乱にはあった。
一方、敵は逃げ回っているだけだと言うのに、一向に攻撃は当たらぬ事に異星人達は焦りを感じていた。
その上、この獲物にはまだまだ攻撃をかわせる余裕があるようだ。
8人の異星人の内、リーダー格の一体が全体に命令を下す。
任務は極秘裏に進めなくてはならないが、時間を掛けるわけにはいかない。
8人の異星人達は一カ所に集まり、なんと互いの体を融合しあったのだ。
まるで泥人形をぶつけ合っているかのように融合し合う異星人達。
「駄目。逃げて、今後こそ、あなた本当に死んでしまうわ」
やがて、8人全ての異星人が一体の生物へと変貌した。
背格好は個体だった頃と一緒だが、その大きさはゆうに5メートルをも超えようかという大きさである。
この公園は周りに樹木が植え付けられているため、外からこの異星人を見ることは無いのだろうが、生身の人間が1人で相手できる存在だとは思えない。
だが、これほど巨大な敵を前にしても近衛乱の頬には笑みが刻まれていたのだった。
「助かったぜ。あんまり魔法は使いたくなかったんでね、一カ所に集まってくれると、非常に助かるぜ」
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