3-1:偽りだからね
3-1:偽りだからね
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『Purple Star Are Go!』
カードから放たれた紫の輝きがクレデターを飲み込んだ。
紫騎士、久我流誠。
彼は今宵もまた、人知れず戦っていた。
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「ねえ、ティーカ、結局の所、クレデターって何者なの?」
もうすぐ日付けが変わる時間。
自宅で、ほんのりと顔の赤い流誠が肩に座っているティーカに尋ねた。
三時間ほど前に、流誠はクレデターの気配を感じ、戦地に赴き戦い、見事、クレデターを撃破したのだ。
この酒は勝利のご褒美みたいなもんだ。
「そ~んなこと、あんたには関係ないでしょう」
流誠同様、顔の赤いティーカが言う。
彼女もまたお人形サイズのコップにアルコールをついで貰い、晩酌しているのだ。
「でもさ、これから先、ボク一人で戦っていくしかないんでしょう?」
「うん? じゃなによ、あんたはあたしのナイトじゃ嫌だっていうのよ!」
酔っぱらいの上司と何ら変わらない口調でティーカが言う。
「それとこれとは、別物だよ、ティーカ。僕は君のナイト。それは変わらない」
その一言で、ティーカは顔をさらに赤くして黙ってしまう。
「だけど、今日を含めて、六回、クレデターと戦った。それだけ戦うと流石に、自分の力がどれほどのものか分かってくるし、自分の弱点も見えてくる。
今はまだ相手が悪くないから勝てるけど、僕は多分、三体以上のクレデターを同時に相手にしたら間違えなく負けると思う」
「あんた、独りが不満なの?」
「かもしれない。独りって言うのは、寂しく、辛く、苦いものだよ」
そう言って、流誠はポケットから紫騎士の証であるカードを取り出した。
ティーカのナイトの証であり、魔法を使うためには必要不可欠な触媒だ。
月明かりを浴びて紫色のカードが妖しく光る。
「まるで、悟ったみたいな物言いね。そーいうの気にくわないわ」
流誠の肩から飛び出したティーカは彼の眼前に現れ、ビッシと人差し指を突き立てた。
「流誠。二つだけ、教えてあげるわ。あんたが本当に戦わなくてはならないのは、クレデターなんて下っ端の存在じゃないのよ。だから、あんたはこれから、真の死闘という地獄のような日々を送っていくことになるかもしれない」
ティーカの気丈な振る舞いの中に、刹那、儚げな表情が宿る。
クレデターについてや自分の正体についてティーカがあまり語ろうとしない理由はまだ分からない。
でも、そこに何かしらの理由があることは確かなようだ。
「でも、戦うのはあんた一人じゃない。あたしは、後2つ、流誠のカードと同じ力を持つ魔法の触媒、MSデバイサーを持っている。
だから、あんたはきっと近いうちに仲間を得ることになるわ」
ティーカの言葉に、救われたのか、救われていないのか、微妙な表情を浮かべる流誠だが、心の靄は少し晴れたようだ。
「っま、でも~」
そう言って欠伸をしながら、ティーカは下降を始める。
「あたしのナイトは、あんた一人だけなんだけどね」
そして、流誠の太股に降り立った妖精は、その固い筋肉をベット代わりに眠りにつくのだった。
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