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0-0:七つの世界

0-0:七つの世界


◇7◇


 真紅の世界だった。

 世界を包み込んでいるのは、暖かな昼の日差しでもなく、優しい夜の帳でもなく、灼熱の炎。

 普段我々が住んでいる世界に空気があるのが当たり前のように、ここには炎があった。

 その世界にいる住民はただ一人。

 紅蓮の羽根を纏うその姿は天使のようでもあり、また、堕天使のようでもある。

 紅蓮の世界で天使は別の世界を見つめる。

 許させぬ大罪を背負いに罪人が逃げた異世界を見つめる。

 炎に映りし、別世界。

 そこは美しいまでの蒼さを持つ、銀河随一の水晶、地球だった。




◇2◇


 緑の太刀筋が闇を切り裂く。

 刀身に刻まれた文字は『成敗』。

 剣士は今宵も戦い続けている。

 緑の光が、まるで舞を演じているかのように迷いない太刀筋を描き、そのたびにこの世から闇が消えていく。

 美しくもあり、力強くもあり、高貴でさえある剣技は、神楽に似ている。

 もしこの戦いを見る者がいたのなら、その場を動くことができなくなっていた事だろう。 それは闇の恐ろしさに震えるからではない。

 まるで、尊大なステンドグラスを前に魅了されるかのように言葉を失うだろう。

 だが、この戦いを見届ける者はいない。

 剣士は今宵もまた、一刀の相棒だけを頼りに独り戦い続けていくのだから。




◇3◇


 白銀の雪が降っていた。

 儚く降る水の結晶に彩られた世界には、愛ではなく欲があり、平等ではなく実力があった。

 真っ赤に彩られた牢屋から伸ばされたのは雪にも負けない白く細い腕。

 助けを求めるように伸ばされたその手はしかし、誰も引き上げてくれない。

 いつもそうだ。

 白く細い腕の上に冷たい雪が降り積もっていく。

 今日は寒い。

 長い時間、外にいたら体を壊すかもしれない。

 ここは女の戦場だ。

 弱まった仲間を誰も助けてくれず、風邪を引いたのがきっかけで命を落とした同僚も一人や二人ではない。

  歌った。

  ここではない異世界の歌は客の注意を引くにはこれ以上ない武器となる。

 歌姫は、自分に勇気を与えるべく歌い、そして、差し出し細い腕で妖しく男を招き寄せる。

 そう、ここではそうする以外、明日を生きていく術はないのだ。




◇7◇


 漆黒の中、彼はいた。

 静かな闇の中、息を潜めて獲物を狙うその目は、猟犬のそれととても似ている。

 限られた視界の中に映るのは二人の警備員。

 そして、彼にしか見えない謎の女性。

 今はもう夜だ。

 女性は疲れたのか安らかな寝顔を無防備にさらしながら、夢の世界に旅立っている。

 彼は小さくため息をついて、女性の髪をそっと撫でた。

 女性はくすぐったそうに小さく身じろぎをしたが、起きる気配は無さそうだ。

 その仕草があまりにも可愛く、もう一度見たい気もしたが、あまりやると本当に目を覚ましてしまうだろう。

 彼は女性に微笑みかけ、待ち続ける。

 この闇の中から抜け出して、この女性との約束を果たすその時がやってくるのを、今は静かに待ち続ける。




◇5◇


 青の瞳が輝く。

 その瞳が映し出してきのは、二百年に及ぶ人間の罪と愚かさと、そして、優しさ。

 人形の如く美しく、人間のように感情に溢れたその瞳が次に映し出すものは一体何であろうか?

 友か、敵か、無か。

 少女は知らない。

 魔女も知らない。

 誰も知らない。

 この青い星に生まれた生き物は皆、生きていく。

 生き抜くために誰かと戦い続ける。

 青い瞳を持つ彼女も戦い続ける。

 それが、生きると言うことだから。

 それが、彼女が作られた意味だから。

 でも、これが、魔女が選んだ道だから。




◇6◇


 黄金の矢が解き放たれた。

 矢は狙いを外すことなく真っ直ぐに的を射抜く。

 射手は心を落ち着かせるべく一度、息を吸い込み、吐き出した。

 次の矢を弓にかけ、玄を引っ張る。

 心の泉に荒波を立てることなく、その瞳すでに雄々しく的を射抜いている。

 特別な力なんて、彼女にはない。

 だが、彼女はそれ以上に強く輝く心を持っている。

 その心さえあえば、どんな死闘だって戦い抜ける。

 この左腕に宿る盟友との大切な絆、かつて盟友と共に守り抜いたこの星、少女が守り抜きたい物は沢山ある。

 その全ては無理でも、出来るだけの、いや出来る以上のモノを守り抜くため、少女は弓を手に取る。

 少女の手から矢が解き放たれ、小刻みな音と共に再び的を射抜いた。




◇1◇

 紫の妖精がここにいる。

 

 そして、七つの物語が動き始める。


二年ほど前に、小生が”ダイジェスト・プレイ・セブン”と名して投稿していた小説です。

やってみたい事が出来たので、再投稿を開始します。

これから長い話となり、駄文ではありますが、歴史と推敲の一幕をお見せできればと思っております。

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