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王都警備隊・2  作者: 風羽洸海
穢れた遺産
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八章


  八章



「だからってこれは、ちょっと無謀だったかなぁ……」

 うう、と半べそをかきながら、リーファは夜の丘に立っていた。頭上で木立がざわめき、生温い風が唸る。微かに腐臭が漂うのは気のせいだろうか。

 数歩先に、ミルテの白い姿が浮かんでいた。虚ろな顔で地面を見下ろし、何をするでもなく立ち尽くしている。

 リーファは宿から無断拝借してきたシャベルを地面に置き、空を仰いだ。雲が多いが、月は出ている。角灯なしでもなんとかなるだろう。いくら夜中とは言え、誰かが目を覚まして外を見ないとも限らないし、もしもウートが警戒してここを見張っていたら、大騒ぎになってしまう。

 もちろん、村の勤勉な農民たちが寝静まるまで、充分に待った。街と違って明かりが落ちるのは早かったが、それでも用心して夜半まで様子を見たのだ。

 とは言え、手早く静かに済ませるに越したことはない。

(大丈夫、落ち着け落ち着け……あれは『ミルテ』だ。幽霊だけど……)

 強く我が身を抱き、細かな震えを抑えようとする。怖がるな、と己に言い聞かせて。

(生きてる人間と同じじゃない。でも、全然違うわけでもないんだ。慎重に相手をすれば大丈夫、怖くない)

 脳裏を、青ざめたシンハの顔がよぎる。

(オレがしっかりしなきゃ)

 すとん、と体から余分な力が抜けた。震えが止まり、不思議なほど意識が冴える。リーファはシャベルを取り上げると、ゆっくりミルテに歩み寄った。

『……ここかい?』

 リーファがそっと声をかけると、ミルテはこくんとうなずいた。

『思い出したの』

 小さな声は鈴の音のように震えた。白く仄かに光る指が、地面を指差す。

『あたし、ここに……埋められたわ』

『ここで殺されたのか?』

『ううん』

 ミルテは首を振ったが、それきり黙り込んだ。仕方なくリーファは、ひとまず穴掘りに取りかかる。シャベルを突き立てると、乾いた音が鳴った。

 ざく、ざく、ざく。掘り進む音が夜の静寂をかき乱す。リーファはちらちらと屋敷に目をやりながら、ひたすら掘った。こんな時にこそ馬鹿力の国王がいれば役に立つのに、と恨めしく思いはしたものの、自業自得なので悪態をつくわけにもいかない。

 黙々と腕を動かし続けることしばし。黒々とした穴の底で、白いものが月光に浮かび上がった。ふう、とリーファは一息ついて、心の準備をする。

『荷馬車で運ばれたわ。夜中だった。街からここまで』

 ぽつぽつとミルテが言葉の切れ端をこぼす。それにともなって、リーファの意識に断片的な感覚が閃いた。荷馬車の揺れ。覆いをかけた荷台の膨らみ。藍色の空に瞬く星がひとつ、ふたつ――あたかも、自分がミルテの幽霊になって殺害当夜の情景を眺めているかのよう。

 リーファは小さく頭を振ると、白く露出したものを避けてシャベルを入れた。が、そこで動きを止める。

(待てよ?)

 このまま、多分ミルテの遺骨であろうものを掘り出した場合、どうなるか。

 ウートにしゃれこうべを突き付けて、おまえの屋敷の裏庭からこんなものが出てきたぞ、と言ってやることは出来る。だが、もしウートが予想以上に知恵の回る性質だったら、こう反論するかも知れない。

 おまえが埋めたに違いない、でっちあげだ、――と。

 そう考えると、立会人がいないこの状況で掘り出すのは、いかにもまずい。

 リーファは立てたシャベルに寄りかかり、さてどうしたものかと頭をひねった。これを誰に知らせ、立ち会いを求めるべきか。ここは王都ではないから、警備隊に調査の権限はない。ティエシ村の治安を司るのは、王都近隣地域を担当する執政官である。だが平和な村に執政官が常駐する必要もないわけで、実質的に村の揉め事を解決するのは村長の仕事になっている。

(ってことは、ここの場合はウートが牛耳ってるだろうな……村人を味方につけられるかどうか、怪しいな)

 いっそ面倒な手続きを飛ばして、王の裁きを下して貰おうか、という誘惑に負けそうになり、リーファは慌てて首を振った。シンハに頼るのは簡単だが、王はいつでもどこでも呼べば現れる便利な妖精さんではないのだ。安易に特例を作って癖になると困る。

 と言って執政官を呼びに行くのは面倒臭い。

(ミルテが殺されたのは王都の中のことなんだから、警備隊の誰かを引っ張って来られないかな)

 あれこれ考えながら、ひとまずまた穴を埋めていく。ミルテが非難のまなざしを向けているのに気付き、リーファは慌てて説明した。

『そう恨めしい顔をするなよ。オレだって早いとこ掘り出して、ちゃんとした墓を作ってやりたいけどさ、今ここで一人でやっちまったらまずいんだ。明日にでも、立会人を連れてきてやり直すよ』

 埋め戻した土をシャベルで固め、よし、と額の汗を拭う。それからリーファは、屋敷の方を見やって言った。

『なあミルテ、ほかに何か思い出さないか? 殺した奴は見えなかったにしても、誰がおまえをここまで運んできて埋めたのか、とかさ』

『あの人よ』

 途端に、ミルテの声は憎々しげな迫力を帯びた。リーファはぎくりと怯み、少女の顔を見つめる。月光を透かす瞳に、怒りの焔が暗く揺らめいていた。睨みつけているのは、ウートの屋敷だ。

『きっとあいつが父さんも殺したんだわ』

 獣のように歯を剥き出して、ミルテが唸る。リーファは悪寒を感じながらも、平静を装ってうなずいた。

『ふむ。んじゃ、ちょっくら家捜しするか』

『……?』

 ミルテが不思議そうに振り返る。あどけない少女の顔に戻ったのを見て、リーファは思わず微笑んだ。

『本当にウートのおっさんが何かしたんなら、ミルテと親父さんの持ち物を、どこかに隠してるかも知れないだろ』

 今現在のウート氏がミルテを殺して埋めたということはなかろうが、何らかの形で先祖の所業を知ったのはまず確実だ。日記や手紙の形で記録されているか、親から子へ口伝てにされたとしても、物証が残されている可能性は高い。

(それに、セウテスの親父さんのことも気にかかるしな)

 ローナはフォラーノ氏が帰るところを見たと言ったが、だとしたらまだ戻っていないのはどうしたことか。どういうルートで王都に戻るつもりだったのか知らないが、西から王都に入るには、リーファたちが通ってきた街道ぐらいしか道がない。そして、ここに来るまでそれらしい人物には会えなかった。

 リーファはシャベルを草むらに隠すと、ふとミルテを振り返った。

『一緒に来るかい?』

 何気なく誘ってから、幽霊相手によくも言えたものだ、と自分で驚く。だが、そうと気が付いても、恐ろしくはならなかった。いつの間にかミルテのことを、生きた人間と同じように考えていたのだ。

 ミルテは迷わずうなずき、ふわりとリーファの傍らに漂ってきた。一瞬だけリーファはぞっとしたが、何食わぬ顔をして歩きだした。

 屋敷、と言っても田舎屋敷なので、貴族の館や城のように大きくはない。高い塀も、忍び返しのついた柵もないし、衛兵が見張りに立っているわけでもない。リーファにとっては、侵入など造作もない家だ。

 昔さんざんあちこちの家に忍び込んできた経験から、リーファは開いている扉や窓を見付ける勘が鋭くなっていた。なんとなくこっち、と見当をつけて行くと、たいていの場合、用心の甘い場所を見付けられるのだ。鍵がきちんとかからない戸、夜も少し開けてある窓、まるきり人気がなくて物音を立てても気付かれない部屋、等々。

 今夜もその勘はよく働いてくれた。すぐにリーファは屋敷の一角に開いたままの窓を見付け、そっと中を覗き込んだ。

(よーしよし、ついてるぞ)

 ぼんやり浮かび上がる物の輪郭と、建物の中の位置からして、厨房だろう。竃のそばはよく年寄や女中の寝床になっているが、ありがたいことに誰もいない。犬や猫も。

 ではお邪魔しますか、とリーファが窓枠に手を掛けた時、背後でミルテの気配が動いた。リーファは素早くしゃがんで壁に背をつけ、息を殺して周囲の物音に耳を澄ませた。

 バササッ、と鳥のはばたきが聞こえた。風のざわめき、鼠や虫の微かな気配。

(……?)

 リーファは眉を寄せ、さらに待った。原因のはっきりしない違和感に、肌がむず痒くなる。ミルテはいつの間にか姿を消していた。

(なんだろう。何か……変だ。時間が止まった?)

 ここに義従妹のフィアナがいたら、時間の相が部分的に歪んで共振を起こしているようだ、とでも言っただろう。だが魔術の知識がないリーファは、ただ『妙だ』とだけ感じて行動をためらっていた。

 困惑しながら待つ内に、小さな足音が耳に届いた。こちらに来る気配はなかったが、リーファはぎくりと身を固くした。

 視界の端を、黒い人影がゆっくり横切る。リーファは壁にへばりついたまま、ぞっとなって竦み上がった。肌が粟立ち、髪が逆立つような気がする。おなじみの、この世ならぬ者に出くわした時の恐怖だ。

 だが今感じているのは、それだけではなかった。この世の者に対する恐怖、とでも言おうか。身の危険を知らせる本能の警告が、ちくちくとうなじを刺す。

 人影が屋敷の中に消えると、ふっと緊張が解け、妙な違和感もなくなった。リーファは用心しながらほっと息をつき、肩の力を抜く。

 屋敷に忍び込む気は、もうすっかり失せていた。どうにも験が悪い。

 とは言え手ぶらで帰るのも……、とリーファは辺りを見回した。それを待っていたように、ミルテがすうっと現れる。心なしか、顔がこわばっているように見えた。

『あっち』

 か細い声でそれだけ言い、ミルテはすっと手を上げた。指差したのは、ついさっき人影が現れた場所。リーファは顔をしかめ、小声で呻いて抗議した。が、ミルテはもうそちらへ滑るように移動している。

 やれやれ。リーファはため息をつくと、忍び足で後について行った。

 じきに、人影がどこから現れたのかが分かった。木陰の暗がりに納屋があったのだ。外に出しっぱなしの農具から察するに、乾草をしまっておくためのものだろう。亜麻農家と言っても、休耕地で放牧を行なうので、牛や馬も飼育しているのだ。青草がふんだんにある今の季節は、たぶん、納屋の中はほとんど空っぽのはず。

(代わりに何が入ってるのかね)

 あんまりぎょっとするような物でなければ良いが。

 リーファはそんな事を考えながら、南京錠をちょいちょいといじって外した。音を立てないように気をつけながら、ゆっくり慎重に扉を開ける。

 中には――

「当たり」

 思わず口笛を鳴らしかけたのを堪え、口の中でつぶやく。奥の柱に誰かが縛られ、地べたに座り込んでいた。リーファが扉を閉める間に、ミルテがふわりと飛んで、囚われの人物に近寄る。ミルテの放つ仄かな光で、それが金髪の男だと見て取れた。

『父さん』

 ミルテのささやきが聞こえたのかどうか。男はぴくりと身じろぎし、顔を上げてどんよりしたまなざしを向けた。

 リーファは「しぃっ」とささやきで合図し、急いで男の傍らに膝をついた。幸い男はミルテが見えていないらしく、リーファの動きだけを目で追っている。

「フォラーノさんかい? ルクス=フォラーノ?」

 リーファが問うと、男は数回瞬きしてから、こくりとうなずいた。それから何度か口を開きかけたものの、なかなか声が出てこず、苦しげに顔を歪める。

「……すけ……て……くれ」

 ようやく絞り出した声はかすれ、ひび割れていた。

「あいつ……狂っ、てる」

 それだけしゃべったものの、あとは咳き込んで言葉にならない。リーファはルクスを縛っている縄を解きながら、ここ数日よく助けを求められることだ、と内心で呆れた。そういう時期という奴なのだろうか。

 固い結び目との戦いに勝利すると、リーファはルクスに手を貸して立たせた。

「頑張れ、なんとか逃がしてやっから」

 リーファは女にしては力のある方だし、ルクスも大柄ではないが、それでも全体重をかけられると支えきれない。リーファは歯をくいしばり、こんな時に限ってシンハがいない事の不便を呪った。

『父さん……じゃないの?』

 ミルテが近くを漂いながら、悲しげに首を傾げ、半透明の手でルクスの顔や肩に触れる。だが当人は全く気配すら感じていないようだ。自分の足を動かすことだけに集中し、息を切らせている。ミルテがなぜ勘違いしたのかは分からないが、物悲しい光景だった。

(本当の親子でもこんな事があるのかな)

 ふとリーファは想像し、淋しくなった。気付いて欲しいのに、伝えたい事があるのに、相手には姿も見えず声も聞こえない。

(だよなぁ……見えないのが普通なんだから、死んじまったらどうしようもないよな)

 自分が死んだ時、万一、昇天し損ねたら。そうなったら、誰かが声を聞いてくれるだろうか。伝えたい言葉を受け取り、して欲しいことを叶えてくれるだろうか。

 もし、そんな人間が誰もいなかったら。

(……オレが『見える』のも、必要なこと……なのかな)

 見えるのは神に呪われているからだと、幽霊など見えず関わらずにいるべきなのだと、そう思い込んでいたけれど。でも、もしかしたら。

 なんとなくそこまで考えを進め、リーファは自分の結論に気付いて我に返った。

(いやいや待てよオレ! なんだろうと怖いもんは怖いぞ!? 幽霊なんか出会わないにこしたことねえって!)

 危ない危ない。つい情に流されるところだった。

 一人で忙しく悩んだり突っ込みを入れたりしていたもので、リーファは納屋から出るまで、外の気配に気付かなかった。

 ルクスを肩に担いで一歩、納屋から踏み出した途端、

「――!」

 爪先から頭まで、氷のような悪寒が走り抜けた。立ち竦み、顔を上げる。暗がりの中に、ぬっと人影が佇んでいた。月光もほとんど届かないのに、蝋燭の明かりひとつ持っていない。それでいて、リーファのように足元に注意する素振りも、目を凝らすような気配もなく、じわじわとまっすぐに近付いて来る。

 リーファはごくりと喉を鳴らし、半歩後ずさったが、ルクスが邪魔になってそれ以上は動けなかった。

(まずい、こいつは……まずいぞ)

 脳裏で危険信号が最大級の警告を発し、逃げろ、と喚き立てている。にも関わらず、足が動かなかった。ルクスを置いては逃げられない。だが、どうすれば――

 ずんぐりした黒い人影が、手を伸ばしてきた。

「裏切り、者……」

 聞き覚えのある男の声だ。まるで寝言のような喋り方だが、奈落の底から響くように、虚ろで暗い響きを持っていた。

「行か……せる……ものか」

 じわり。指先が、ほとんどリーファの顔に触れそうになる。

 ――と、その瞬間。

『返して』

 小さな声が人影の動きを止めた。白い光を帯びたミルテが、ふわりと影の前に立ちふさがる。伸ばされていた手が、火傷したようにびくりと跳ねて引っ込んだ。

『返して。父さんを返して。あたしを返して』

 ミルテの全身が、怒りのために膨れ上がっていた。長い髪が蛇のように鎌首をもたげ、癒えていた傷口が開いて瞬く間に服を深紅に染めていく。

 今度はミルテが手を伸ばす番だった。血に染まった両手を。人影がたじろぎ、後ずさる。ミルテは容赦なく迫った。

『返して』

 たった一言の要求を突き付けられ、人影はいやいやと首を振り、手で耳を塞ぐ。だがそんな事をしても、ミルテの声を締め出すことはできないようだった。

『返して。返してよ』

 繰り返す声がどんどん甲高くなり、悲鳴に、そして絶叫になる。

『返して。返して。返して返してカエシテカエシテ!!!』

「うあああっ!!」

 とうとう耐えきれず、人影がどうっと倒れた。その途端、ミルテもぴたりと口をつぐみ、辺りに静寂が戻る。危機感も恐怖も霧消し、何事もなかったかのように、フクロウが穏やかに一声、鳴いた。

 リーファは無意識に歯を食いしばっていたことに気付き、ふうっと息を吐いて緊張を緩めた。

「何を……したんだ?」

 おぶさったまま、ルクスが不可解げにつぶやく。今の光景もやりとりも、まったく見えておらず聞こえてもいないとは、リーファからすれば羨ましい限りだ。

「オレじゃねーよ」

 リーファは端的に答え、ミルテにサジク語で話しかけた。

『こいつ一体、どうなっちまったんだ?』

 ルクスがぎょっとして怯むのが、背中越しに分かった。さもありなん、助けが来たと思ったら、何もいない宙に向かって意味不明の言葉をしゃべるおかしな女だったのだから、多少の動揺は大目に見てやるべきだろう。

『あいつは逃げたわ。この人は、寝てるだけ。朝になったら目を覚ますはずよ……何も覚えていないだろうけど』

 ミルテは平坦な口調で答えた。その胸で、シンハから貰ったお守りがぼんやりと明滅している。怒りや憎しみに囚われかけたのを、お守りが救ってくれたのだろう。ミルテの姿はまた、元通りの無害で清潔な少女に戻っていた。

『そっか。んじゃ、このまま転がしとこう。下手な事して起こしたら、説明すんのが面倒だもんな』

 リーファは意識して明るい口調を保ち、ふと倒れている男を見下ろした。どうやらガウンをしっかり着込んではいるようだが、さすがにまだ、夜は冷える。少し迷ってから、リーファは一旦ルクスをその場に座らせた。

「ちょっと待っててくれるかな。こいつ、このままだと風邪ひくかもしれないからさ」

 言うだけ言うと了解の返事も待たず、納屋からわずかに残っていた乾草をかき集めてきて、倒れたままの男にかけてやった。その時になってやっと、リーファはそれがウートだと気付いた。ずんぐりした体型といい、声といい、すぐに判って当然だったが、先刻までの暗い影は、まるで人間とは思われなかったのだ。致し方ない。

(うーん……ウートのおっさんも、何か面倒なことになってるみたいだなぁ)

 一人助けたと思ったら、また一人。それも今度は、あまり助ける気分になれない、尊大で怒りっぽい男だ。やれやれ。と言って放置もできないのが辛いところである。

「とりあえず、一人ずつ順番に行くしかねえな」

 そう声に出して呟くと、リーファは再びルクスに肩を貸した。

「んじゃ、宿に戻ろう。もう皆寝ちまってるけど、水ぐらい飲ませてやれるよ」

「ありがたい」

 ルクスのかすれ声には、深い感謝の念がこもっていた。


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