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06.パパラッチの待ち伏せにあう

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「メイリー・ジャミル子爵令嬢ですよね!!」






おうりつまほうけんきゅうじょに、ぱぱらっちがあらわれた!!




メイリーの研究室に行く通路の柱から女が飛び出す!!


ぬおぉい! お、驚かせるなよ、心臓が悪かったらどうする! 心停止で天国行きだぞ! 勇者かと思ってびっくりした。まだ死にたくない、死にたくない。


どうやら、俺たちが来るのを待ち伏せしていたようである。

モブな俺など相手にしないとわかっているのでメイリーを後ろに隠す。なんと、モブは壁にもなれるのさ!




(この先立ち入り禁止だから、ここで張ってたのか……あー、ヤダねぇ、朝から)


相手は、顔の半分以上が覆われるようなドデカイ眼鏡を掛けた女である。年齢は変わりないくらいだが、背はメイリーや俺に比べるとかなり低い。鼻の周りには雀斑が浮いていて、短く切られた金茶色の癖っ毛は無造作に見えるものの綺麗に整えられている。


眼鏡とったら意外と可愛いとかいうフラグ持ちに違いない。かもしれないが、生憎好みではないんだよ!



モブな俺の好み。


一、行動力があるのが何より微妙。無駄な行動力はモブにはいらん!


二、俺の好みはもっと素朴な感じの同じモブ女子である!!


ぜひ、もっと勉強してから出なおしてきていただきたい。




「勇者のことを振ったって話題になってますけど、もう勇者に見込みはないんですか!?」


こっちが無視しているにも関わらず眼鏡っ子はメイリーに絡むので、更に俺は知れっと邪魔をする。


(しっかし、メイリーの機嫌悪くなるなぁ、こりゃ)




予測。たぶん、メイリーの家の周りには研究泥棒避けの魔法が幾重にも張ってあるので近寄れなかったのだろう、うちの家にはちなみにパパラッチは居なかった。

一応、伯爵だからね、簡単にそういうのしちゃいけないのさ。ははは、階級世界ってやつだ、俺次男だけど。


でなくても、あそこら辺には個々で結界張ってあるとこ多いし、近寄れなかった気もするけどね。




その点で言うとこの研究所も張られてるのだが――一体誰にどのようにして許可を取ったのか(もしかしたら知合いに口利きして貰ったのかも知れないが)首には一般客用のフリーパスが掛けられている。


「邪魔だ、退け」


「そんな少しくらいいいじゃないですか、ね。勇者様のこと聞かせてくださいよ!」


「三度は言わない、退け」


メイリーは苛立たしげに見下ろす。

その眼光があまりにも鋭かったので女は短く「ひっ」と悲鳴を上げて、矛先をこちらへ向く。


「じゃあ、代わりに貴方のお話聞かせてください!! 婚約者のスぺクター伯爵子息ですよね!? 勇者よりも自分を選んでもらえて今の感想はどうですか?」


代わりってなんでしょうね、俺モブですけど、代わりはないよね。


「残念だけど、メイリーのことはジャミル子爵に、俺のことはスぺクター伯爵にそう言うのは許可を貰ってね、じゃあーね」


背中からメイリーを出して、「さあ、行きましょう」と背を押す。

これ以上機嫌が悪くなられると、後々苦労するのは他でもない俺なのである。モブは気苦労が多いので、なるべく減らしたいのだよ。平穏に生きたいのだよ!


地味なモブ人生なんて素敵なんざんしょー。


「そんな、待って!」


服の端を掴んで、女が俺をひきとめる。おーい、意外と高いのよ。普通のシャツだけど絹なんで。


「本当に少しでいいんです、お話聞かせてください!!」


「だから、聞きたいなら許可取ってって言ってるでしょうに」


せっかく人が優しく言ってあげているのに、女は退かない。モブだけど貴族なんだけど、俺。仕方ない電子コールで警備員呼ぶか。


メイリーが暴れて悪評とか付いたら嫌だし。


「いい加減にしないと、警備員呼んでここからつまみださせるよ?」


「あたし、これが初取材なんです、お願いですからっ!!」


(聞き分けがないなー)


やっぱり呼ぼうと、脳内に相手を思い浮かべる、が。


「いい加減にしろ、シャドから離れろ」


待てなかったようである。

腹の底から出るような低い声が、女を諌める。


「気にしなくていいって、ね。ほら、君も放して、放して」


女から服の端を外させる。


「スマイル、スマイル」


軽くメイリーの肩を叩いて、警戒を解かせる。




パシャ。




カメラのシャッター音。


なんですかね、仲の良い二人の図? 捏造で、勇者のことで喧嘩する二人の図?

どっちにしても、この女ってば本当に空気読めない。もし、気にするなって自分に言われたとでも思ってるなら神経図太いと思うんだけどな。


モブはあんまり自分から色々しないものなんだけど……正当防衛は誰でもするもんってことで。


「へっくし、いやん、俺ってば風邪の引き始め?」


カメラの真ん中に小さな氷柱が刺さる。


あら、誰がやったのかしら?

俺、え、知らない。モブだもの。魔力そんなに持ってないんだけれども?


記憶がないよ。こほん、こほん。


「きゃあああああああああああああああああああああああああああああぁ」


「おやおや、どうしてそんなところに氷柱が?」


髭ないけど、親父をマネして髭をくるりん。


眼鏡の奥の眼光が、キッと睨む。茶色の瞳には怒りが滲んでいる。

こう言うのってなんて言うんだっけか。先にそっちがやったわけだし、責任転嫁?


大体、俺何にも知らない。咳しかしてない、してない。


「このこと記事に書きます!」


「何のことかわからないけど、許可が下りたら書くと良いんじゃない? ほら、警備員も来たようだし帰れば?」


二人、警備がこちらに向かって走って来る。この女の悲鳴を聞きつけたようだ。


「如何しました!?」


「この人たち私のカメラを……」


「んー、別に俺たちは何もしてないよ。それより、この子、許可誰に取ったのかしらないんけど勝手に写真を撮った上にしつこーく付き纏ってきたからひんむいて持ち物全部取り上げてから、摘まみ出してくれない?」


ニコニコ笑う。へへへ、モブは平穏を乱す奴が嫌いなんだぜ!


「あ、持ち物は全部メイリー・ジャミル宛てに届けてくれると嬉しいな」


「何、勝手な……」


「「かしこまりました」」


次男だけど伯爵子子息なモブ、つまり俺。加えて、メイリーはこの研究所の名誉研究員。

パスを首にかけてるだけの身元不明な眼鏡っ子と俺たちのどっちに警備員が味方するかなんて一目瞭然!


「シャド、行こう」


「はいはい。それじゃあ、よろしくね」


手を引っ張られてながら歩く。

女が何か言う声が聞こえた気もするが、俺の耳は都合のいいことしか聞こえないの。ほら、モブだから。






パタンと、研究室の扉が閉まる。

メイリーの眉間には深い皺が刻まれている。ひえ、これは俺に八つ当たりするフラグか!?


「どうした、どうした、ほれ、スマイル。笑え、な?」


皺を指で押さえる。


「ちゃんと、一人でも追い払える」


手をはたき落とされる。地味に、痛い。


「え、俺何にもしてないよ。なんか、氷柱は勝手に生えたっぽいよ!」


眉八の字だと、モブな俺と違って綺麗なお顔がメイリーちゃん台無しよー?


「わたしのせいでシャドに嫌な思いさせた……ごめん」


「してない、してない」


けど、勇者を説得させるの真面目にやんないとだな。


作戦思いつくまで逃げようと思ったけど、パパラッチという敵が居たのは思わぬ盲点だった。あんな風に待ち伏せされるとか全然考えてなかった。


今回は女だったからいいけど、男とかだったらモブは非力なので勝てません! メイリー連れて、ダッシュで逃げるよ! 格好悪いとか、何それ、格好良いと美味しいの?


生憎、モブには関係ない常識だよ!


「まかせろって、言ったろ! つっても泥船ぐらいにしかなれんけど」


沈む確率高いですが、それでよければ乗船お待ちしております!!


「泥船じゃ、最後沈むじゃないか」






メイリーが呆れるみたいにしてだけど、笑ったので泥船乗船ってことで。



鈍感だけどメイリーのことぐらい守ろうとするのがモブなシャド。女の子の心を知らず知らずに鷲掴みするけど、フラグは自分で折るか、メイリーに折られるので恋愛に発展しない!!

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