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04.まさかの勇者と鉢合わせ(改)




「見失ったかと思えば……まさか、こんなところに居ようとは」






ててて、てっててーん。


事件です。大事件。

やばい、俺――勇者と鉢合わせしたっぽ。わーお。きっと今俺の顔は鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているだろう。くるっぽー。




以下、勇者に見つかるまでの経緯。


王さまとの面会が終了して、俺は「やっとお家に帰れる。はー帰ろ、帰ろ」と城の門を目指していた。

あの召喚状の悪い所は、呼び出しはしてくれても帰る時は自分の足で帰らないといけないところだ。ついでだから、家にも帰してくれれば良いのに。って絶対皆思ってると思う。

そうか、「てめぇにゃ、立派な足が付いてんだろ」ってことか、さすが王さま超上から目線過ぎる。鬼畜ぅう。


まあ、それはいいけど馬車って街のどこで借りれたかな。同じ王都にあるけれど貴族が住む場所は意外と遠い場所にあるんだよね。今の精神状態じゃ長時間歩いて帰るとか正直ムリ、しんどい。

あーもう、なんで貴族の家って一個一個広い土地を使うんだろ。そのせいで、街から少し離れる破目にななってるのに馬鹿じゃないの。あー、エコじゃない。


貴族なんて見栄っ張りな奴らだからしょうがないけど。と、考えながら歩いていた。まさしく、これがいけなかった。




ドン。




「あ、すみません」


考え事をしていた俺は前から来た人物に気付かず、肩をぶつけてしまった。

相手の顔を見るために、下を向く。はい、皆さまおわかりでしょう。


――相手、勇者でした。






以上、経緯の回想終了。




何俺平然と城の中歩いてるんだよ。そりゃ勇者居るよ、だって王さまのお気に入りだもの。お城に今勇者パーティー留まってるもの!!

家に帰るための手段とか気にしてる場合じゃねえよ、もう、なんで出会ってから気付くんだよ。しかも、こいつ今自ら「見失ったかと思えば」って言ったじゃん。未遂じゃなく、俺を殺し(やり)にきてたよ。


「人違いです、ではさようなら」


「それじゃあそういうことなので」と、頭を下げてダッシュで逃げる。



モブの特徴その一、逃げ足だけは速い。


モブの特徴その二、人ごみに紛れるとわからない。



しかし、逃げる前に捕まえられたら終わりなのが俺らモブ。

ひぃ、怖い。痛い、痛い、力超強い。モブな俺の肩ピンチ、大ピンチ。折れる、折れる!! ひ弱なの、さっきそこは王さまに叩かれたのと、ぶつかったのとの相乗効果でもうこれ以上の衝撃に耐えられないのです。ピーチクパーチク。


「あの、手を離していただけませんでしょうか?」


「お前だ! その高い背、間違いない」


(ぐはっ。まさかの背で気付かれた。顔で気づけよ、勇者! もしかして、今朝からの攻撃もこの身長を基にしてたのか、同じような背の奴にもしてんじゃないの、何コイツ!)


ぎちぎち。


ぎゃああああっ、力が益々籠ってる! ほんと、痛い、めっちゃ痛いからっ!

やめてー、折れるー、誰かーヘルプ、ヘルプ!! ここに勇者の皮を被ったいじめっこが居ます。暴君です。鬼、悪魔。赤子同然のレベルの人間に対して酷い。勇者は俺の心の中ではもはや、魔王だよ。


「このくらいの背の人間なんていくらでも居ます、よ。俺の友人も同じくらいです、ええほんと」


同じくモブ仲間で親友のルックくんも同じくらい高いです。俺の方が若干高いけど(ここしか自慢がないので、主張しているわけではない)。


「だったら、名を名乗れ!」


「ルックです。ルック・テイクです」


すまん、マイフレンド。お前の名前言っちった。だって、心の中に浮かんでたんだもの。まあ、考えてたからしかたないんだけど。

あいつ赤毛だけど非常時だもの、許されるよね(全然関係ないけど、俺は一般的な栗毛である)!?


だって、今だって肩の骨折られそうなのに俺、超不利なんだもの。


大体、王宮ってのは不審者が易々と入りこんだり、攻撃などができないように王族や宮廷魔術師と言った一部の人間しか魔術が使えないようになっているのだ。

同様に武器も騎士など許可されないと持ちこむことができないようになっている。


(奴は武器も持っていて、魔法も使い放題。ほら、俺赤ちゃんと同レベル!!)


この条件を除いた素のレベルとしても、完全に負けているのでそこら辺の虫と魔王でもいいかもしれない。どっちにしろ、俺の中であいつは魔王だ。怖い、超怖い。


「……そうか、悪かったな。ルック・テイク」


ほっ。やっと、解放されたぜ。


絶対に口に出さない一言を勇者へ送ろうと思う。人は簡単に信じてはいけませんよ。ここに、居るような俺のように日常から嘘に慣れ親しんだ生き物も居るんですからね。


さあ、懺悔も終わったことだし、墓穴を掘る前に帰ろう。すぐ帰ろう、今帰ろう!

知合いとか出てきたら困るからお家に帰ろう!! 王宮とか知合いの貴族とか、俺が知らなくてもこっちの名前知ってるようなやついるから勇者にばれる前に逃げよう。


「それじゃ、今度こそ失礼します」


もう一度礼儀正しく頭を下げて、別れる。

角を曲がった瞬間、ダッシュ。光の様な早さで俺は走った。今まで生きてきた中で、ベストテン入りする逃げ足だったと思われる。






「あー、怖かった」


王宮から出て、一息吐く。

いやー、知合いに合わなくて良かったぁ。俺を王さまのところまで送ってくれた筋肉隆々の人たちが途中に居て超怖かったなあ、もう!

実のところ、勇者に頼まれて今度こそ逮捕されてしまうかと。ふぅ、ヒヤヒヤしたぜ。よし、当分城には来ないことにしよう。


しかし、勇者に俺のことを告げ口するような人も居なくてよかったよ。ドッと疲れたからね。さて、ここから先は、まっすぐ馬車借りて帰ることにしよう。


……だが、今回のことでもしかしたら、モブな俺の顔なんて皆わかんなくて、髪の色と身長で判断してる可能性が今日の勇者のせいで非常に濃厚になってしまった。

茶色とかありふれた色のせいで、背の高い人が勇者の犠牲になっていませんように。あと、怨むなら俺じゃなく勇者を恨むように。


皆、マジで身長と髪の毛の色で判断してないよね?


複雑な問題過ぎてこの疑問を解決したいような、したくないような。けど。昔から俺以外の人が俺に間違えられること多かったからなぁ、正直判断されている気がするなぁ。すんごい複雑ー。


「家に帰ったらもう、どこも行きたくないわ」


明日は、有休使いたい。


あ、そうだ。今度マイフレンドのルックに会ったら「ごめんね」って飯でも奢ろう。そうしよう。それから、一応、彼が被害に合わないことだけは祈っておこう。他の人は、不運な事故ってことにしておこう。俺に間違われたことが悪いんじゃない、間違った勇者が悪いんだもの。











これから数分後、真実を知った勇者の雄たけびが城下に響き渡ったとか、渡らないとか。


俺は聞いてないから、知らない。

聞こえた気がするけど気のせい。きっと、気付かなかったんじゃないかな。いや、まったく聞こえなかったな。うん、全然聞こえなかったわ。

だって、俺、王さまや筋肉隆々な人たち以外の他の人には会わなかったし彼らが口滑らせてない限り城に来たこと知られてないはずだしね!




まったく、口が軽い男ってやーね。



あれ、ヒロインが01以降出てない。次回はメイリーちゃんが出るよ!

※5月3日にいろいろと付け足しました。

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