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33.真っすぐ見つめた世界から




「昔っからメイリーの尻に敷かれている」




幼少期と青年期のみの俺たちの関係を見た人が言う台詞である。


だがしかし、「ナニソレワロスw」と笑ってやりたい。聞いて驚け、少年期に偉かったのは俺の方である。こっちが可愛くないとそっぽを向けば向くほど愛されたいと頑張るのがメイリークオリティ。恋は盲目って怖い。


才能を開花させていくメイリーは正直、目障りだった。

死ぬほど可愛くなかった。あれで、ヒヨコみたいに付いて来るとか迷惑以外の何物でもなかった。迷惑。めっちゃくちゃ迷惑。


おまけに、俺の欲しいものをいらないと言うのだから堪らない。手を伸ばしてもけっして届かないのに、持ってる奴ほど平気で捨てるのだ。可愛さが失せたら憎らしさが湧いて来たってしかたなかった。

俺はまだまだ子供だったのだから。


大体、相も変わらず子供の俺(ヒーロー)を見ているし、することなすこと一緒にやろうとしてくるから「こいつ俺のこと実は嫌いなんじゃね?」って何回思ったことか。






「ご子息のことは事例がないことですので、どうなるかは……覚悟だけはしておいてください」


この言葉は、ヤブ医者が両親へ言った言葉であり「大丈夫」だと言う大人の言葉を嘘で建前と本音が言葉にはあるのだと気付いた日の言葉である。



「貴方のような人がこの歴史ある学校に来るだなんて、実におこがましいことですね。両親に感謝することです!」


この言葉は、とある陰険な女教師が言った言葉であり俺が自分の現状を正しく知った日の言葉である。



「神は、人に越えられる試練しか与えません。貴方が耐え忍び、努力を続ければやがて報われる日がきますよ」


これは、どっかの頭のいかれた司祭が言った言葉であり事実無根の意味も何もない慰めの言葉である。



「疫病神がたまに学校来たかと思えば、また本ばっかり読んでやがるぜ」


「しかたねーよ。魔力がない時点で別に勉強する理由ねーもん、アイツ」


この言葉は、自分より格下を見つけては優越を感じるという大人予備軍の言葉であり人の感情は伝染し、子供の方が残酷だと痛感した言葉である。



「スペクター伯爵もあの子が長男じゃなくて本当に、よかったというものだ」


「ほんとよねー、あんな子が自分の子だなんておカワイソウねー」


この言葉は、人に媚びることと陰口が得意な暇人どもが口にした言葉であり理解している事実でも人から聞くと心が傷つくのだと理解した言葉である。



「てめぇのせいで迷惑してんだよ! どいつもこいつも人のこと間違いやがって、うぜぇんだよ。いい加減にしろよな!!」


この言葉は、正面から珍しく食ってかかって来たルックとの出会いの言葉であり自分の影の薄さを認めなければならなかった言葉である。



「今日からぼくをダーリンって呼ぶわ、愛したいから」


この言葉は、俺と同じように嫌われた某魔術師の言葉であり愛というものが無償だと思っている馬鹿は死ぬべきだと涙した言葉である。



「お前の浅はかな行動が家の恥になるとまだわからんのか、この愚弟がっ!」


この言葉は、自分がいかに恵まれているのかをまったく理解できていないくせに嫉妬心だけは立派な兄の言葉であり人が持っていた最後の希望を打ち砕いてくださった際の言葉である。



「シュロムまでとはいかなくとも、もう少し頑張りなさい」


この言葉は、あんな化物と不良品を比べると言う暴挙を冒したストレスに弱い髭ででぶな父親の言葉であり努力なんて凡人以下がどれだけ必死になっても努力にすらならないのだと実感した言葉である。






「あれはあたしが本当に産んだのか?」


その言葉は、世界を真っすぐやめた日に。


「魔獣と呼べるレベルの獣を狩れと言ってるわけじゃないだろうに。たかが熊だぞ? お前に取り柄はないのか? 魔法も魔術駄目、剣術も駄目で何があるんだ?」


その言葉は、自分の存在意味を失った日に。




「そんな仕事就くことに、そんなに何か意味があるのか?」




世界は緩やかに色を失っていき、鮮やかさを絶えた後は一気に黒く塗りつぶされ――闇へと姿を変える。


心の傷はひたすらに積み重なり、癒える事はない。

時が経ち痛みが薄らいだとて、些細な痛みに再び傷つけられては血を流すのだ。


大きな痛みが積み重なり続ければ、やがて腐る。

腐ったそれは、土が土に、灰が灰に、塵が塵へ還ったとしても永遠に元通りになることはないのだろう。


幾度世界が、終末を迎えようとも。






上記の数々は、真正面から世界を見た際に俺が頂いた言葉である。ついでに、なんか、ちょっとカッコよく俺の心の痛みを訴えてみた。


実を言うと、世界を俺が真っすぐに見つめなくなったのは、世界にべったりと不良品の判を押された日ではない。


もちろん、魔力がないといわれて不安になったし、傷ついた。

傷ついたけどご存知でしょうか? その場のノリと言う言葉を!!


大人があれだけ右往左往していればなんかそういう感じになるのです、ええ。むしろ、メイリーが俺より強かったことにショックを受けていただけです、ええ。


考えてもみてほしい。

たかだか十歳が魔力がないと言われたことを正確に理解できていたと思うてかっ! 正しく理解なんてできてなかったわ。

てか、大体、十歳やそこらで一般より魔力がかなりないと言われたからといって理解できるか! もちろん、知識としては魔力がどんなものーとかっていうのはわかってたよ。


けど、元から制限されていて日常に不要だったものが突如として与えられただけなのですよ!

別になかったからってどうってことないわ!


フ、と、俺が言ったところで負け犬の遠吠えなんですよね。知ってるー。


俺の心に大打撃を与え続けたのは母親とメイリーである。

あいつらは的確に人の心を抉る言葉や行動をやりだす。堪らない、耐えられない。


もちろん、最初は真っすぐに努力して突き進んでいつか報われる日を夢見たさ。はっ、すぐに凡人以下にできることなんてないって気付いて忘れてやったけどね。


にしても、子供ってのは本当に残酷ですねー。いやはや、もう純粋ゆえにありえないほど残酷なんですよ。大人の感情や考えを素直に受け取ってそれをさも自分の感情や考えみたいな態度でくるわけですよ。俺も相当だったけど他の奴らも相当だったね。


しかもこっちが階級上だから暴力はしないから性質が悪い。

やられたら、傷を理由に訴えられるけど陰口じゃなにもできません。


俺の学生時代の別のあだ名を披露しよう!

「疫病神」である。由来は、俺が近くにいると魔術や魔法がうまく使えないとか言うんですよ、意味がわからん。どうみてもいろいろ差し引いてみても、俺原因じゃなくね? 言いがかりも甚だしいわー。

鵞鳥が金の卵を産まなかったからって、鵞鳥を買った場所に文句言うくらいないんですがー。


そして、大人たち。もう腐っていたね。ありえなかったね。

見ず知らずの人に俺は何でここまでボロクソに言われなければならないのかというほどにボロクソ扱いをうけたよ。

なのにさぁ、そういう人たちに限ってうちの両親に媚びるわけよ。「媚びを売らなくちゃ生きていけないなら徹底的に媚びろよ!」と、声を大にして言いたい!!


俺はぶっちゃけて言うと傷つけられる痛みを知っているからこそなるべく人を傷つけないように、且つ、自分が傷つかないことを最優先に(ここ超重要、自分超可愛い。大事!)していただけなのである。


そう、俺がとった行動こそ世界をちょっと斜めから見て人の心を察しつつ、その斜めから全力で頑張るというものだった!!

結果として、嫌われるのは仕方ないと諦めることはできた。と言っても、慣れることはできなかったけれど。でも、仕方ないさ。俺にとって世界というか現実というか環境すべてがかなり酷いものだったのだから。


もちろん、恵まれていなかったなんて嘘は言わない。きっと俺は一般より恵まれてはいた。だけど、すべてが重たくのしかかるだけで息苦しくなっていって、どんどん生きていきたくなくなっていったのだ。


世界を真っすぐ見ることをやめると少し心が楽になった。


なんというか、人の防衛本能って本当に恐ろしい。どんな環境でも生きていこうとするとかマジ恐ろしいわ。全力で頑張って否定されると心が痛むけど自分から斜めに突っ走ると多少緩和剤のようになるし――他人の言葉が心に届きにくくなったってだけなのに、ね。


真っすぐ幼いまま見つめるには残酷すぎたけれど死ぬにはなんだかんだで勇気がいるし、かといって死ぬかもしれないとか言う大人の言葉を鵜呑みにしたりするのも違うしで。

この現状から逃げ出すことができればいつか、また、なんとかなるんじゃないかってちょっと夢も見てしまったり。




さてさて、ここで最上級に傷ついた時と、世界を赦せなくなった時の回想を行いたいと思います。





その時俺は、王立学院の一年生だった。夏だった。

入学から二ヶ月ほどたったその日、バケツの水を凍らせるというだけの普通なら難しくない試験が行われた。


俺にはそれはできなかった。自分の属性なのに、できなかった。


水はただゆらゆらと揺れていた。


もちろん、最初っからうまくはいかないだろうと思っていた。

だから、って諦めたくはなかった。魔力がないからっていうのをなにもしない理由にはしたくなかった。


人のことを解剖したいとか言って来る仲良くもない魔術師のところへ通い、図書館と言う図書館を巡り古代魔術の勉強をした。


ここで解説。現代魔術とは自分の体内の魔力を消費して使うものなのに対して、古代魔術は空気や水など周囲の魔力をそのまま使用したものであまり魔力を人々が体内に持ち合わせていない時代に開発されたものになる。


なんで、現代魔術と古代魔術などという種類が存在するのかと言う解説も一つしておきましょう。時の流れという残酷な現実に廃れてしまったわけよ。


だって、体内の魔力で事足りるようになったわけだし、不要でしょ? まあ、後から古代魔術のほうが有用性があったということにお馬鹿さんな現代人は気付くわけですが時すでに遅く、改良とかそういうのが容易に自分たちでできなくなったわけです。


それでも、多くの魔具やら昔の古代魔術の書き方やなんやらは大切に保管されていたので今の人でも身近にはあったわけですが。いやはや、必死だったね。日に日に陰口は増えてくし、周囲の視線は気になるしで!

バケツの水を凍らせたらなんとかなるかなーなんて。


けど、結果は惨敗。俺には魔が付くものがそもそも向いてなかったっぽい。はい、残念。


俺を受け持っていた女教師は階級社会やら魔力による才能にうるさい人だったから、そして、そういうことを言ったのである。

今なら「でっすよねー、そんな親の寄付金とかで学校なりたってるんですもんね、嫌ですよね。お給料とかそこにも反映されてるんですよね☆」っていうけども純粋なあの頃の俺は「すみません」と泣きたい気持ちで言ったよ! 言ってやったさ!


しかも、この話まだ続く。


俺の直後の生徒が誰ひとりとして成功しなかった。

おかげで学校では、疫病神扱いスタート。なんでだ、ないだろ。俺がなにした!! 魔力にもタイミングにも嫌われてるけど、なんだ!!!


さらに、この話は続く。

後日、別の生徒が実行したら教室内が凍りつくと言う惨劇もあった。


はい、ここでクエスチョンです。

この後、大人は一体何をしたでしょうか。チッチッチチ、はい、正解は、手のひらをいきなり返したでした。最低ですね、俺の心はどんどんヒーロー志願からネガティブヒッキーへ直進です。


俺が魔力が低い故に術が発動しなかった。

仮にそれが正しい場合、古代魔術がわかるかもしれない人材の芽を摘み取った可能性があったと彼らは思いなおしたらしかった。


しかし、彼らは馬鹿だった。


この時、俺は嘘を一つ吐いた。「あれは、レイン・ドゥンケルが描いた」と。この件によりあれが禁忌の魔術師とか呼ばれ出すきっかけになったりするわけだけど、それは置いとく。


大人たちが信じた。やっぱり、俺にできるはずがなかったと、笑った。

その事実だけが俺にとっては真実だった。


魔法だの魔術だのが嫌いになったとしてなにが悪い。どうせ使えないのだから、誰も気づいてなんてくれないのだから真実を口にする理由がなかった。




続いて、俺が世界を赦せなくなった時のことを話そう。二年と七か月前、再び夏に事件は起こった。


あの試験から徐々に、俺は学校へ行かなくなり試験とか参加が必須な行事だけ行くようになった。

代わりに図書館に通っては、暇つぶしに本を読んだりして過ごしていた。

やがて本当に本が好きになった俺の夢は、本に少しでも関わり合いになれる仕事がしたくなっていった。


その年は学校を卒業し、就職だったり更に別の学校へ行ったりなんだったり将来が決まる大切な年だった。


俺は、軍学校なんかに行く気はなかったので当然、就職組になった。


国での就職がまあ、いろいろと難しかったので、知合いのツテをつかってこっそりと他国での就職先を探すことにした。


見つけてきたのは、北の国で勉強するのが難しい子供たち相手に本を読み聞かせたり、文字とかを教えたりするようなそんな名誉職でもなんでもない仕事だった。賃金も危険度の割に安かった。

なのにさ、やりたいと思ったわけよ。


文字が読めたらいろんなことができる。いろんな仕事にだって就ける。仕事の幅が広がるし、本を読むことで世界だって現実よりもずっと広くなる。

魔力がある分だけ就ける仕事が増える。でも、魔術を理解できていないなら魔力なんて意味がないんだよ。


司書とかも憧れてたけど、簡単にあの人たちに見つかりそうだったし、何より俺はそういうのを応援したかった。できることをできないと嘆いて欲しくなかった。環境によってとかそういう自分に関係ないもので、できることとできないことを決めて欲しくなかった。


大げさに聞こえるかもしれないけど、そんな風に思ってた時期もあったわけですよ。


サクラサク。

後日、届いたのは、合格通知で無事就職できるはずだった。やっと俺はここからどこかへ行けると思った。やり直せるんじゃないかと思っていた。




また、駄目だった。


合格通知を受け取った三日後、不合格通知が送られてくると同時に、俺はシュロムと親父に囲まれて言われた。城にも仕えない、軍人にもならないのは家の恥だと。


息ができなくなるかと思った。

俺の夢は誰にも認めて貰えなかった。恥だと言われた。

すぐさま理解した、裏でなかったことにされたのだと。


俺は西の国境に居る母親の元へ向かった。

認めてほしかった。許しがほしかった。せめて、母さんが「なっていい」と言えばなかったことにされたがまた、あったことになると思った。


――馬鹿だった。世の中甘くないって知ってたのに。


「そんな仕事就くことに、そんなに何か意味があるのか?」


そう、言われた。夢見がちボーイは当然、廃業となった。

意味なんてない、俺がなりたかったそれだけだった。けれど、それを伝えることすらもう無意味だと悟った。誰のことも赦せなくなった。憎くなった。嫌いたくないのに。


心ほとんど折れかけ状態で、国に帰るとメイリーが就職先を決めていて、こう言った。


「私と同じとこに就職しよう? 一緒じゃなきゃ行かないって言ってるから大丈夫」




馬鹿にしてるんだと思った。殴りたかった。首絞めてやろうとかと思った。

なんでもわかってるって風に振る舞う姿に、心が折れた。バッキボキどころか、ゴキュボキュぐらいキモイ音で。




俺はメイリーが目障りだった。ものすごく目障りだった(大事なことなので何度も言う)。


世界から、どんどん俺の存在が薄らいでいく気がして不安だった。いっそ殺してくれと神に何度願ったことか。なのに、自分を明確にとらえられる瞬間があったわけですよ。


……それが、メイリーと居る時だった。

普段は見えない影のように襲って来る悪意が、あいつと居る時だけは明確なものとしてあった。俺を明確にしてくれた。


だから、利用した。


嫌えども、恨めども、憎めども。

それを遥かに超えてすべてがやはり愛しかった。最初は気付いてほしかっただけだった。俺の痛みに、愛に。目障りだという感情よりも自分の醜い欲望の感情の方が勝っていたから、傍に置いた。


羨まれて、苦しむ姿を見て、疎まれて。


結局、満たされなかったけれども。

だって、既に世界を真っすぐ見ていなかった俺に何かが届くわけがない。


しかし、そうだと気づいても、それでもこの赦されるぎりぎりの境界線で繰り返される愛憎劇は終わらなかった。先に捨てたのはメイリーだからと、自分に言い訳までして。


「メイリー、うざい。俺がうんなとこ、行くわけないじゃん。一人でどーぞ」


俺が本気で嫌がるとあいつは何もしなくなる。


強い口調で咎めれば二度とやりたいだなんて言わなくなる。


メイリーを救おうと、俺の悪口を言うような奴は憎み嫌ってしまう。



俺には理解できなかった。なぜ、俺のことを好きなのかが。俺はこんなにも俺が嫌いなのに。一番赦せないのに。


「ん、就職はする。シャドが簡単に使えるような魔具作りたいから」


絶句した。


(こいつ、俺のことどんだけ好きなんだよ!!)


医者からはある日、ぽっくり行くかもしれないと言われ。

名前どころか顔すら知らん人にさえ陰口を言われ。

家族は家の恥だと言う。


俺は母親が昔死にかけた時、助かった瞬間ホッとしたと同時に酷く残念だった。死んでほしいと思っていた自分が怖かった。


メイリーに化粧をさせたり、髪を結わせるのは男を敬遠させるためだった。美人になればなるほど隙がない女は敬遠したいという心理を使ってただけだった。


レインとは傷をなめ合っていた。

一人ではさびしいが、他人には縋りたくも弱みも見せたくなかった。あの温度が、距離が丁度よかった。他人を平気で利用できる男なのである。


そんな男が良いとかずっと言い続けるのである、メイリーは。メイリークオリティマジ怖い。




向日葵の花が嫌いだ。見たら焼き捨てたいくらい嫌いだ。

太陽を見つめているのは成長する途中までなのに、ずっと片思いをしている。見ているような素振りをするところが嫌だ。


あの花にメイリーは似ている。昔の俺ばかり見ていて、今の俺なんて見ていないくせに好きだなんてそれが恋だなんて、愛だなんてそんなわけあるはずない。


この時になって、俺はドロドロとした自分の中の感情の名前に気付いた。






矜持は何の意味も持たない。己が悪くないとしても必要ならば頭を下げるべきだ。喉が渇いた時、泥水を口にしなければ死ぬならそれは飲むべきだ。

矜持を保とうとするために、機会や生を捨てることなど意味がない。


だが、最低限守らなければならない人間としての決まり事がある。

理性を捨ててはいけない。理性を捨てればそれは獣だ。


俺は心ない言葉に傷ついた。しかし、それをメイリーにぶつけたり、他の人を傷つける理由にしてはいけなかった。



これは、踏み外してしまった俺が守るべき最後の一線なんだろう。

堕ちるところまで堕ち、彼らと同じような心ない人間にならないための一線。



誰が赦そうとも、今さらこの感情を言うことなどできはしない。


世界を俺が赦さないのと同じように、もう、後戻りはできない。



俺は手の届くところから居なくなるぐらいなら、自分から捨ててしまいたかっただけだった。手の中から勝手に逃げていくのを見て「ああ、やっぱりお前もか」と、諦めたかった。俺と違うのに俺を選ぶお前が許せなかった。期待させておいて、裏切るのではないかと怖くて堪らなかった。

できることならば、ヒーローのままで居たかった。ずっと。


でも、どうだろう。人を不快にさせない術を俺は持っていない。

どうしたらコイツのためになるのかわからなかった。


俺が居なくなったら他の誰かを好きになるだろうと思った。

だけど、弱ってる所にツケ入るようなような馬鹿には渡したくなかった。


幸せになってほしかった。

望むことを全部してやりたいと思った。


色あせて、闇に包まれて、世界には何もなくなった。

そこへ仄かに灯ったりするから悪いのである。手放しづらくなっても仕方ないじゃないか。


それに、依存されてるだけの関係なんて阿呆な話あるわけがなかったんだ――依存関係が成り立ってる時点で、どちらも依存してるんだから。






真っすぐ見つめた世界から一言、将来有望なイケメン絶賛募集してます。




一部聖書引用。

てか、感想受付うまく停止できてなかったorz


いつもより長いですよ! シュロムとシャドは結構根本が似てる。


誤字脱字修正済。

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