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31.キレイとぐちゃぐちゃ(side:ピュア)




「そろそろ内容は決まったかどうか、聞いてきてくれ」






ゆうしゃは獣のようにぐるぐると今日ずっと部屋中を歩き回っていた。メイドが三時のお茶を出してくる頃にはもう我慢が出来なかったらしい。


「ピュアが聞くの、なんで? 自分のことは自分でっておうじーが言ってたよ」


「いい子だから行ってあげなさい」


「おうじー、そう言うのってムジュンって言うんだよ! 言葉にはセキニンを持たないといけないんだよ!」


視界に入るとこにばっかり居たし、最初からこのつもりだったのかもしれない。むう、ピュアだって暇じゃないのに。


「お使いも勉強のうちだ」


「とうへんぼくの話はピュアわかんないもん。あと、男が三人集まるとむさくるしいってアダラ言ってたよ!」



ぷんぷんしながら、ピュアは自分の部屋を出る。後ろがうるさくなったけど、知ーらない!




(ピュア、あんましお城の中歩くの好きじゃないのに)



お城の中には、クスクスクスクス、わらう大人たちと、グチグチグチグチ、ぼやく大人たちとかが居る。

他にもおうじーやゆうしゃが居て、とうへんぼくって罵られるダムとかなんかいっぱい他にも居る。


ホント言うとピュアはあんまし、お城の人が好きじゃない。みんな、よくピュアのこと「カワイソウ」って言うんだもん!

「カワイソウ」ってあわれむってことなんだって。それって、見下してるってことなんだってピュアちゃんと知ってる。


それに、わらう大人たちは目がイヤ。ぐちゃぐちゃしてるから好きじゃない。


ピュアは、おうじーたちが旅してる時に見つけた子供なんだって。まじゅーにおそわれて両親は死んじゃったらしい。ちょうど通りかかったんだって。で、魔力が高いから保護してくれたらしい。

覚えてないから知らないけど。


なんか、怖いことだから忘れちゃったんだって。よくわかんないけど。


おうじやゆーしゃ、ダムはちょっと好き。

でも、ピュアにいろんなことをキョウヨウするのにいろんなことを隠すところは好きじゃない。

時々、大人たちと同じようにぐちゃぐちゃした目をするとこも好きじゃない。




(アダラはそんな顔しないし、ほとんどのお話おもしろいからお城の中で一番好き)


冷たいって王子たちは言うけど、アダラの顔は石像やガラス細工見たいにとってもキレイだとも思うの。なんで、わからないんだろう。きっとカンサツリョクってのが足らないんだ。


このお城中の中で一番キレイなのに、気づけないなんて「かわいそう」なーの。






「コンコンコン、アダラあーけーて」


声を掛けるとガチャガチャっていっぱい鍵を開ける音がした。少ししてからギィっと鈍い音ともに、扉が開く。驚いたことに、アダラは頭に何もつけてなかった、背中までさらさらの茶色い髪が伸びていた。


「アダラが頭になにもしてないとこ初めて見た、昔の絵に出てくる人みたい!」


お城の中にも沢山飾ってる絵みたい。うんうん、あんなものよりずっとキレイ!


「感想はいいから、早くお入りなさい」


「はーい」


アダラはピュアが入るとまた鍵を閉めた。この間まで鍵かかってなかったのに、なんでだろ? ま、いいやピュアは入れたし。


「あ、魔石だ」


部屋の中央に置いてあるテーブルの上には色とりどりの魔石と、一個だけ大人の拳サイズの黒っぽい色のがあった。


「これも魔石?」


「これはただのお守り。他の人には言ってはいけませんよ?」


「ふーん。あれ、青いのはないんだね」


「青」という言葉を口にすると、アダラは一瞬理解できなかったのかオウムみたいに「青?」って繰り返す。


「魔石しかここには置いてませんからね」


「あれも魔石だってピュア習ったよ。魔力をソクテイするんだよね?」


「そうですね、あれは魔力の測定他、地底にある魔石の採掘にも使用します。そして、それだけ。個人的にあれを魔石と呼ぶのは常識上正しくないというのもあるけれど」


頷きながら石を数える。黄色や赤色が沢山あって、ちらほら緑色や紫色もある。緑色や紫色はものすごく高いはずなのに全部、金貨よりも大きい。


「これどうするの? 全部すごく高いんだよね?」


「一部は、ちょっとした仕掛けの材料にします。あとは、この機会に手入れをしようと思いまして」


仕掛けにするんだ。なんかもったいない。このままここで陽の光を浴びてるほうがキレイなのに。


「ふーん。あ、そういえば勇者がもう内容は決まったかって言ってたよ」


「丸一日経ったわけでもないのに、相変わらず躾が足らない犬ですね。ですが、ここに入って来られても面倒ですし決めてあげることにしましょうか。ピュア、貴女は何が好きですか?」


「ボードゲーム!」


ボードゲームは街の子供たちの間で流行ってるらしくて、ちょっと前におうじーたちから貰ったの。でも、ちっとも勉強勉強っておうじーたちがうるさくて遊べてないの。きっとピュアに一回も勝てないからやらせてくれないんだと思う。大人げないのー。


「今度、アダラも一緒にしようね。おうじーたちすんごく弱いから相手にならないの」


「勇者もですか?」


「ピュア、おうじー、ゆうしゃ、ダムの順に強いの」


「でしたら、それにしましょう」


それにしちゃうの?


「きっと、ゆうしゃ文句言うよ?」


「ほほほ、一度目はそういうのがいいんですよ。シャド・スペクターが勝てるようなものがね」


よくわかんない。なんで、一度目はそういうのがいいんだろう。ゆうしゃに負けてほしいのかな。


「部屋はそうですね、謁見のための待合室がいいですね」


「待合室ね、わかった。あとでおうじーたちに伝える」


「良い子ですね」


アダラはピュアの頭を優しく撫でた。

手袋してるから温度はわかんないけど、優しい手つきなのでこれもピュアは好きかも知れない。やっぱり、好きにとしく。えへへ。


「ねえ、アダラはおにいさんのこと応援してるの?」


「誰の味方でもありません。勇者でも、シャド・スペクターでも。カミサマの意思に従うだけです。それより、ピュアちゃんとお勉強するんですよ」


「ちゃんとしてるよー」


むう、ちゃんとさっきまでお勉強してたのに。


「街にもできるだけ遊びに出るようにして、小間使いみたいな仕事も買って出るのですよ。いつまでもここにいるべきではないのですからね」


おうじー並にいろんなことにくちうるさいのはちょっと好きじゃない。


「はーい」


「可愛い頭を早くお利口さんにして、勇者みたいならないように一人前になってここから出て行くんですよ」


ちょっとよくわかんない。だけど、おうじーと違ってちゃんと理由も教えてくれるとこは好きだからいいや。


「ピュア頑張るゆうしゃみたいにならない。でも、ゆうしゃはおひめさまと結婚できるほど、人気者らしいよ?」


「できるわけないじゃないですか、あれに。大体王族(たぬき)どもが自分たちの血の中に勇者の血を混ぜるなんて考えただけでも吐き気を催すでしょうね。方便ですよ、我関せずとしているのでしょう。あえて言うならどちらかと言えば王は、勇者派なのでしょうがスペクター家にも、ジャミル家にも喧嘩を売りたくないでしょうからね」


「むろん、王子はどうか知りませんけど。あれは狐なみに性格が悪いですからね、何を考えているのか理解できません」と、アダラはめんどくさそうな顔を作る。


「おにいさんたちの家そんなに、すごいの? はくしゃくとししゃくなんだよね?」


「簡単な話です。あの二家に喧嘩を売るのは西と東に喧嘩を売ることにもなりますからね。シャド・スペクターのことで西が腰を上げるかはかなり微妙ですが、東は下手に干渉すれば動くでしょう。勇者の正体を知らないからこそ今はまだなにもこっちに言ってきませんけど」


「東の国がなんで?」


西も東もドウメイってのを組んでいる仲の良い国なのに。


「夫人は順位はかなり下でしたが王位継承権も嫁ぐ前は持って……」


「わかった。つまりは東の国の血を引いている女の人だから、おねえさんに手を出されると怒るんだ!」


「話を遮らないで頂戴、いくら子供に優しくとも手が出ますよ。おほん、……それもありますが、メイリー・ジャミルの才も欲しいのですよ。東の王家には女児が生まれにくく、女性が王位を継ぐと国が栄えると信じているのですよ。そう言うわけで、彼らにしてみれば才のある彼女は非常に魅力的なものに映っているはずです。ジャミル家には東の貴族へメイリー・ジャミルを嫁にって話があったに違いありません。今回の騒動から言って承諾しなかったようですが」


アダラはいつもの表情のまま、指で緑色の魔石を転がす。


「対して魔力も高く王立研究所で国の内部的機密に関わっているメイリー・ジャミルは中央にとっては手放し難い存在。こうして、隙さえあれば王家所縁の者として才のある彼女を自国に連れ戻したい東と中央の拮抗した関係ができるというわけです」


「へー、アダラは物知りさんだね」


「こんなものは、蓄積された常識にしかすぎません」


「ピュア勉強になるよー? アダラが先生ならいいのに」


おうじや、来る先生たちの話はアダラの話みたいに頭に入ってこない。つまんないし。


「子供に勉強を教えられないなんて、愚かとしかいいようがありませんね。と、言ってあげなさい。きっと、もっと上手に教えようとするでしょう」


「ん、何かあったら言う」


「人間とは大切なこととして様々なことを隠し、曖昧にする生き物ですから教え方が悪くても仕方ないのですよ。結果として、大切なことさえも失って行くわけです。救いようがありませんね」


「えー、アダラは悪かったって思ったことや、正しくないことをしたことってないの?」


悪いことや正しくないことっていっぱい普通はしちゃうのに、アダラはいつだって真っすぐ。おうじーたちをいじめて、あれ、いびるだっけ? とにかく、迷いがない。とっても、それは素敵なこと。みんなぐちゃぐちゃ汚い。


「正しくないことはしたことがないですね。ですが、悪かったと思ったことなら三回ほどありますよ」


「正しくないことはしたことないの?」


「ないです。自分が何時だって正しいですし、もうカミサマ以外の誰かの言葉に二度と惑わされることはありませんから。大体、正しい正しくないというのは誰かの物差しで図られたものです。自分が正しいと思っていればそれは正しいことなのです」


「じゃーあ、悪かったことって?」


「一度目は誰より大切な人の願いを裏切った時、二度目はその人の大切なものを奪った時に。三度目は答えることもできない感情に対して夢を見させた時ですね」


瞼が伏せられる。長い睫毛。髪と一緒で茶色の睫毛が、茶色い目に少し濃い影を作る。


「どうしてそんなことしたの?」



「選んだからです。二度と手の届かぬものより、目の前の大切なものを」



アダラの目がカラス玉みたいに輝く。もっと派手な色だったらもっとキレイだったんだろうな。ちょっと勿体ない。目を入れ替えてもおうじーやゆうしゃのじゃ、こんな風にはならないんだろうけど。


「それもカミサマのため?」


「そうですよ。あの人のためだけに、存在し行動するのです」


目がきゅうっと細くなる。笑い顔だ。いつもみたいな顔じゃない、石像や絵なんかよりも温かい。


(こういう顔ってなんていうんだっけ……?)


勉強した中にあったのかわかんない。少しだけ、それを向けられる神様がずるいと思った。


「さて、お喋りは終わりです。こっちはこっちで準備することがあるので、貴女は勇者たちのところへ御戻りなさい」


「はぁい」






部屋から素直に出てく。三回目の鍵の音がちょっとセツナイ。


(さて、今からどうしよう)


ピュアは良い子だけど、おうじーたち所へは行かないのでした。

なぜなら、あんなに素敵なもの見たのにもったいないもん。お城の中のぐちゃぐちゃで汚すなんて嫌なんだもん。


「神様ってちょっとずるいよね」


あの顔を一人占めするなんて。あれ、なんかちょっと胸のところがムカムカしてきた。


(よし、ゆうしゃの部屋に行って悪戯しちゃおう。動物を部屋に入れるのはこの間やったし、どうしよう?)






そうして、素敵なことを思いついたピュアはにっこりとホホエムのでした。




次回シャドの更なるカミングアウト大会結構予定、HAHAHA。

ちなみに、ピュアの言葉は「ひらがな→まさしく意味不明な言葉」、「カタカナ→意味は知っているけど理解できない言葉(人物名は除く)」、「漢字→意味を理解している」風に書いてます。

てか、なんだろうピュアがちょっと名前に反して腹黒くなった。


補足:前王弟の娘でシレーナさんは昔伯爵令嬢。王位継承権を持ってた。従兄弟だなんだが居るので、継承権は限りなく下。東の国の王家の血を引く女性の方が少なくたままた女王になった人たちの時代に栄えたせいで、女の人が王位を継ぐと栄えるってのを信じている。だからって言って女性の継承権が高くなったりするわけではないが、国外に嫁ぐ場合貴族とかから文句が出ないように国籍を放棄する必要がある。

以上、無駄設定でした。

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