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23.昔確かに思ったこと




「我儘言ってごめん、なさい」






小さな女の子が俺の顔を覗く。泣きそうに、痛そうにして。


背中も手もすごく痛かったのに、それがどこかに吹っ飛ぶくらい強烈に思ったんだ。こいつを守らなきゃって。






「ぶっふーぅ」


ブフっと臭い鼻息が俺にかけられる、げほぐほげ、し、新鮮な空気をください。


「ポニポニさん、俺はこんな臭いアラームは希望してないです、げふげふ」


「ひひん」



あーっと、低い声で呻きながら干し草の感触を味わう。


「もう、なんだよぅ。夢の中の俺自身まで俺を責めるとかどうなってんだよー」


しくしくと顔を覆う。あいたたた、手を動かしたら背中が痛い。

くそう、夢の原因はこれに違いない。け、だから南の人間は嫌なんだよ。どいつもこいつも喧嘩っぽいんだよ。


他は痛くもなんともないから、昨日のはもう良いけどね!

どっちかって言うと、良くないのは子供の頃の俺なんだよ!!


(ううぅ、あれは俺の黒歴史なんだ。守るとか馬鹿じゃね、ガキじゃね? 子供の頃は黒歴史の塊なんだよ!)


あの頃のメイリーの印象は、やたらと扱いにくい知合いの女の子だった。

我儘は言うし、顔は始終しかめっ面だし、可愛いとか思うなんて到底無理でした。


けど、俺より小さいのがポツンとしてる姿とか見たら放っておけなくて、構ってたらいつの間にやら後ろから付いて来るようになった。

まあ、それでも「友達とか作ってくれたら肩の荷が下りるんだけどなぁ」などと、メイリーが一人立ちしてくれるのを願っていたんだけども。


これもそれもシュロムが変なトラップとか仕掛けたせいである。あんなことがなければ、変な保護欲とか生まれなかった。絶対、なかった。断言する!!


(もっとも、一番馬鹿なのはこいつが泣くの嫌だなとか思ったあの時の俺なんだけどね!)


思って、守ろうとして、本当に馬鹿である。


子供の頃の俺にもしも戻れるなら、一言言いたい。

「それは弱い弱い詐欺である。超強いから放っといても大丈夫だ。むしろ、お前の方が本家本元弱い子だから気を付けろ」って言いたい。




昇ったばかりの陽を見ながら、朝の空気を胸に吸い込む。


「風呂に入りたい」


ちょっと、俺臭うんでないか?






「ぶっふぅーぶるる」


鼻息荒いポニポニに乗って、ジャミル家に到着です!

言っておくが、ちゃんと実家のお風呂に入ってから来ましたから(身だしなみは完璧です、きらりん。林檎も上げてきました、何もかも完璧です)!


えーえー、そのためだけにわざわざ家に帰りましたよ。


ちなみに、親父は俺のこと待ってたけど「臭っ」って言って、メイリーが貰ったのと同じ青い手紙を押し付けたらどこかへ行ってしまわれた。「そんなに臭いか、俺。酷いな、へこむんですが?」と、思ったりもしました。好きこのんで臭くなったわけじゃないんですからね!


……まー、そうは言いつつも、正直なところ、家とか帰る気なかったので途中まではメイリーん家にまっすぐ行こうとしたわけですけども。


一応、逃げた罪悪感があるので帰りづらかったわけよ。で、「メイリーん家で、風呂と服は借りればいいや」とか思ってたんだけど、ここじゃ服が借りれないことに気付いたわけですよ! だって、この家の男はドルークさんだけだから、手足がつんつるてんなことになるわけよ(十センチくらい身長差があるんじゃないかな? スクスクと身長だけは育ったシャドくんです!)。


普段だったら妥協したけど、さすがに、王子の前にそれじゃ出ちゃ駄目だろってことで、自分の家に帰りました。




ドアノッカーを使って、来訪を告げる。金属のぶつかる音がして、少しすると足音がドアの向こうから聞こえた。


朝は通いのメイドさんが俺を迎えてくれる。メイリーは起きてるけれど、出迎えてくれたためしがない。本人曰く、「シャドが来る前に部屋を綺麗にしてる」とか言ってるけど、冷蔵庫同様に人が使ってるのかと思うほど綺麗なのにどこをどう片付けているのやら。


「遅い」


あれ、デジャブ。


「なして、君が出迎えるんですかね?」


メイリーさんの初お出迎えです。言っておくが、遅刻とかじゃない。まだ七時五十分、セーフセーフ。


ポニポニに起こされたのは五時でした。超迷惑なことに。狙ってやったんなら、馬刺しにしてやりたいです。おかげ様で間に合ったということは、この際置いておく。


「昨日、明日も早く来てって言った」


「言われたけれども了承してないから、俺。メイリーさん、そこんとこ重要です」


メイリーは不満げにする。確約してないので、俺は悪くないです。わざわざ待ってたとか思いつかないです。


「男だって朝は何かと準備があるのだよ」


そりゃあもう、いろいろとあるんですよ(メインは、女の子といつ出会ってもいいようにのいろいろ)。今回は王子の前にも出るので、更に気を使いました。


「いつもとどこが違う、わからない」


「男のたしなみはそこはかとなく伝わればいいんだよ、違わないとか言うな! てか、玄関でなんで俺の身だしなみチェックが行われるんだよ! 早く中に入れろよ、お前も準備すんだろうがっ!」


髭剃って化粧水したり、髪の毛を無造作を装ったりしてるんだよ! 香水を今日はどれにするかなとか、体臭問題まで考えてんだよ! ダラダラとできる服装で常にゴロゴロしてたいのを我慢して、服装だって会う人や行く場所に合わせてるんだからな!!


男は化粧とかの分がない分、他のことで気を使ってるんです!!


今日のシャドくんコーデ。茶色のウール・コート(暑苦しいから普段着ない)、同色のベスト。首には白のスカーフ。コンセプトは、貴族っぽくです。なんちゃって貴族じゃないです。


「ふーん?」


(可愛くねーなぁ、コイツ!)






上がりこみました、メイリーの部屋です。相変わらず綺麗ですこと!



さておき。


立たせて、一周させる。今日メイリーが来ているの黄緑色のドレスだ。首元まで襟があるタイプなところを見ると、こいつも一応配慮したのだろうということがわかる。


(アイメイクはブラウン系として、問題は口紅だな)


口紅をオレンジにしてチークもオレンジにするというのもありだが、ベージュ系にしてするのも捨てがたい。しかし、だ。口紅をベージュ系にすると若さの欠如が気になる。


(今日はオレンジにするか)


「決めたから化粧下地塗れ、むらなく塗れよ」


「うん」


鏡台の前に座らせる。

メイリーに化粧下地を塗らせている間に、手の甲に数種類のファンデーションを塗り色を作る。こいつは色が白いのでその日ごとに気を使ってやらないといけないので、大変めんどくさい作業である。


「塗ったら顔出せ」


体ごとメイリーは体をこちらに向ける。


「シャド」


「なんだよ、俺は神経のいる作業中だぞ。目を閉じろ、目」


瞼が閉じられたことに満足し、ファンデーションを塗る作業に入る。


「シャド」


「今作業中」


「シャド」


渋々、手を止める。


「忙しいのに、一体なんだよ」


俺は今王子が会って求婚したくなるような、更なる美女にお前をしている最中だぞ!


「昨日、メッセージ送ったけど届かなかった。どこで何してた?」


「別に何も」


手を下ろす。

酒場に行く前に全部の電子コールを止めたことを思い出す。


「家に帰って来ないって、おじ上が……」


「朝には帰ったから、平気」


「どこに居たの?」


しつこいな。俺は化粧中なのに。


「どこって、別に街でそのまま酒飲んで寝てただけだよ」


「ルックと?」


「一人で」


何これ、取り調べですか? 別に何もしてませんよ、されはしたけども。


「そんなことはいいから化粧をさせろ、髪もまだなんだぞ。お前が王子さまに会って粗相のないようにいろいろと叩きこむことがあるんだからな!」


「……………」


黙ったのをいいことに、化粧を仕上げていく。

ああ、今日も完ぺきである。これで意外と生きれる気がするんだけどなぁ。






綺麗なお顔になったメイリーの髪に櫛を通す。


(今日は簡単に上げておくだけにするか……、待て待て、一本の三つ編みも捨てがたい)


「上に結ぶのと、三つ編みとどっちがいい?」


「上に結ぶだけでいい」


髪を集めて上で結ぶ。軽く紐で縛った後で、服と同じ色の幅の広いリボンでそこを結ぶ。


「おー、可愛い可愛い人形みたいだ」


俺は、大変満足である。


「……………」


「メイリーさーん?」


反応がないので、頬を突っついてみる。


「何、むくれてんだよ、お前」


「昨日はあのおばさんのところに行ったの?」


おばさんとは、レインのことである。

こいつらなんでか知らんが、仲が悪い。会うと睨みあいが始まるのだ(最終的にはネチネチと言い争いまでする)。


「行ったけど、定期的に俺行くし別に関係なくね?」


「泊ったの?」


「あ、アホか! 泊るわけないだろうが!!」


な、なんですか、こいつ変なことを! 大体、女の子が簡単に「何かあったの?」的なこと訊くな!


本当に世の女性は、男は繊細な生き物なんだってことを理解していただきたい。小さな傷でも、膿んで大打撃になるようなか弱い精神をした生き物なのです。


「俺とレインはそんなんじゃねーよ、馬鹿か、お前は」


「ならいい」


メイリーが少しだけ口の端を上げる。


「本当にそういう馬鹿な考えはやめてください」


レインにも俺にも失礼である。


「俺は誰も好きじゃないです」




ごすっ。




上記の音はメイリーが俺の腹を殴った音です。


「げほげほ、痛っぅうう! 何すんだお前は!」


「馬鹿」


化粧もして、髪を結んだ俺に対して、何なんだ!


もう、本当になんでこんな強い生物を守ろうなんて思ったんだよ、過去の俺!!


「馬鹿」


「二度も言うな!」






昔、君は弱かった。俺は昔強かった。それが変わるなんて思ってなかっただけのこと。



女の子の化粧って、おもしろいよね。なんか顔が別人になるのがすごいと思う。あ、男は本当にめんどくさい時と許される時は準備、こんなに頑張らないよ。

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