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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
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第五話「第二の家族Ⅲ」


 


 僕がシーナ・ウィンドル・ソフィネットとして目覚め、ソフィネット家に保護された次の日。

 あれだけひどかった怪我も完治し、平穏な日々が訪れるかと思われたが、今、僕はいまだかつて経験したことのない危機に直面していた。




「やだぁーー」


「シーナお嬢様逃げないでください」


「いやだっ。それだけは……」


「駄目です。このまま不清潔でいるおつもりですか?怪我も完治しましたし、もうお入りになっても問題ありません」


「お風呂なんて入りたくない」

 

 そう、お風呂である。目覚めてすぐにリフィアさんが寝ぼけたままの僕を連れてきたのは、浴場である。ホテルの浴場よりも大きくて豪勢で、いつもなら風呂好きの僕にとってはそれは嬉しいことのはずなのだが……。

 


 一つ問題があるのである。


 それは今僕は男の子ではなく、かわいい女の子の体なのである。しかも初恋の少女のである。

 今僕はそのシーナという少女なのだが、心は男の僕には恥ずかしい以外のなんでもない。

 それと女の子の裸を見てしまうという罪悪感。


「だからっ……。僕は男の子であって……。その……裸を見てしまうのは……」


「そうかもしれませんが、仮に今入らなくてもいずれは乗り越えなくてはならないのですから……。それに今日は旦那様と奥様にお会いしなければならないのですから、清潔にしなくてはいけません」


「うぅ~~だって……」


「さあ、入りますよ」

そういってリフィアさんは僕のネグリジェを脱がし始める。


「ひゃぁ」

つい女の子のようなかわいい声が出てしまう。


「恥ずかしがる必要はありませんよ。お嬢様はだれもが認める美少女ですから」

ついに全て脱がされてしまう。そして……。


「うぅ……」


 前には全身を映せるほどの大きさの鏡。


 そしてそこに映るのは……素っ裸の少女……。

 初恋の少女の、今は僕の……裸。


 絹のような白い肌、胸元の小さな膨らみには、先っぽにわずかにつんと小さな突起物。腰にかけての緩やかな曲線。


 裸を見るのはこれで二度目だがこの衝撃には慣れない。

 頬が熱い。おそらく真っ赤っかになっているだろう。



「さあ……」


「うっうん……」


なんかリフィアさんも頬が少し赤くなっているような……。体調でも悪いのかな……。





ガラガラガラ。


開かれる浴場への扉。



 なるべく体を見ないようにしてさっさと洗って出よう。こんなのいつまでも見てたら悶え死んじゃうよ。……うん、そうしよう。


「見ないように……、見ないように……」

浴場に入る僕。



ガラガラガラ。


閉じられる扉。

そして浴場に入ってくるリフィアさん。


「えっ!?」


「なんでリフィアさんも入ってくるの?」


「なんでって……。お嬢様のお身体を洗うのはメイドである私の役目ですが……ふふ」


「じっ自分でやりますから。大丈夫です」


「そういうわけにもいけませんから……。ふふふっ」


「リフィアさん?なんか目が怖いよ……」


「ひゃあ」


「三年ぶりの……シーナお嬢様の……はぁはぁ」


 ぶるぶる。

 なんかリフィアの目つきがまるで獲物を見つけた獣のような目に……。


「……なんか性格変わってない?」

なんか僕の貞操の危機?


「さあ早く……洗いましょうお嬢様。…………じゅるり」


「きゃあぁぁーー」


「さぁ……さぁ……」

ぶるぶるがくがく。


「ひゃぁっ。……そんなところ……さわら……ないで……」


「お嬢様のすべすべの肌……」




この後リフィアさんに体中あちこち触られたりして思う存分弄ばれることに……。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「うぅ…………。リフィアさんがあんな人だったなんて思わなかったよ……」


「私はただお身体をお洗いしただけですが」


「あちこち触ってきたし……」


「洗うには触らないといけないと思いますが」


「白を切る気?」


「なんのことでしょう?」


「僕を弄んだくせに……」



「…………。……あんなにかわいいお嬢様がいけないのです。以前より増して……」


「リフィアさんて前からあんなふうだったの?」


「いいえ……。私もあんなことは初めてです。お嬢様があまりにもかわいくて……、自分じゃ溢れる衝動抑えられなくなって……つい」

普段冷静で優しいリフィアさんがあんなふうに……。


「どうやら新たな自分を見つけてしまったようです」


「見つけなくていいよ…………」

リフィアさんはやさしいけど、またあんなことがあるかもしれないと思うと……。


「はあ……」




「この後お嬢様のご両親とお会いになります」


「わかってるよ……」

僕はこれから(シーナ)の両親に合わないといけないのだ。

自分の親であり、好きな人の親でもある。複雑な気分だ。



 スタスタスタスタ。


 スタスタスタスタスタ。



「このドアの向こうに奥様と旦那様がいらっしゃいます」


「僕は以前のシーナじゃないけど……大丈夫かな……」


僕はシーナであってシーナではない。

エリスとリフィアは受け入れてくれたけど、両親もこの僕を受け入れてくれるとは限らない。

僕自身よく自分のことをとくわかっていない。


「奥様と旦那様にもちゃんと事情をお話ししてありますから……。それにあのお二人ならきっと大丈夫ですよ」


「うっうん……」



 ガチャッ。



 部屋の中にいたのは、銀髪の若くて綺麗な女性と白髪交じり青髪のガタイのいい男性。

 銀髪の女性が母親だろうか……、かなり若く見える。とても二児の母親には見えない。むしろ姉だといわれた方が納得できる。

 男性の方は背筋を伸ばして、貫禄のある表情をし座っている様は威厳があり圧倒される。


「おっ……おはようございます」


「シーナちゃあぁぁ~~んっ」


 どどどどどっ……だきっ、ぎゅぅ……。


つい最近これと同じ光景を見たような気がする。気のせいだろうか?いや、気のせいではない。どうやらエリスは母親に似たんだな……。


「シーナちゃんっ、シーナちゃん」


「生きておったか……。シーナよ……」


「……お母さん……?お父さん……?」


「そうよ……私があなたの母親であの人が父親よ。あれでも人一倍あなたのこと心配してたのよ。あのとき以来まるで魂抜かれたかのように元気なくて……。毎晩シーナ、シーナて寝言言ってたわ」


「なっっ、何を言う、シルヴィア」


「本当のことじゃない」


「そんなことはないっ。…………シーナ……心配をかけるな」

 そういうと父親はすぐ後ろを向いてしまう。

 震えてる。もしかして泣いているのだろうか?


「素直じゃないんだから……。……シーナちゃん……、うっ……」


 みんな僕のことを受け入れてくれる。シーナもリフィアもお父さん、お母さんもみんな……。


「……うぅ…………ぐすん……」

なんか最近泣いてばっかりだ。僕ってこんなに涙もろかったっけ?




家族がこんなに温かくて優しいものなんて知らなかった。

このぬくもりをもう二度と手放したくない……。



リフィアさんが大変なことに……。


初恋の少女の体を手に入れてしまった少年海斗。初めて知る家族の温かさ。はたしてこの後彼はどうするのか……。



次回もよろしくお願いします。

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