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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
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第四話「第二の家族Ⅱ」




「……うぐっ…………。……お姉ちゃぁぁん…………」




 どうして…………。

 

 

 どうして僕はこの子の名前を知っているのだろうか……?


 

 どうしてこの子を見てると切なくて、そして心の底から嬉しさで満たされるのだろうか……?


 

 「……お姉ちゃん……泣いてるの……?」


 「えっ?」



 涙。

 

 あれ?泣いてる。

 

 どうしてだろう?

 

 今日会うのが初めてのはずなのに。

 二度とこの子、エリスを手放したくない。そんな気持ちになるのはなんでだろう……?


 わからない。けど……。

 


「エ……リスっ……」


 ぎゅっ

 

 抱きしめる。この子を二度と手放さないように。


「……お姉ちゃん……いたいよ……」


「……だめ。離さない……。もうエリスを一人にしたくない……」


「お姉……ちゃん……うぐっ……。エリスは……もう一人は……いや。お姉ちゃんのいない生活には耐えられない……」

 


「……うん、わかった」




「……これからはずっと二人一緒だ……」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





「僕は三谷海斗という中学性…………のはずです」



あの後しばらく抱き合い、涙が枯れるまで泣き合い、夜遅いのでエリスを寝かした後……。

僕はリフィアさんに事情を全て話した。僕がシーナではなく三谷海斗という少年であることも。



「つまりシーナお嬢様としての記憶はなく、ミタニ……カイト……としての記憶をもっていると」


「はい……」


「でも、エリスお嬢様のお名前を覚えていらっしゃいました」


「それが僕にもわからなくて……。なんかエリスを見てたら切なくなってきて……胸が締め付けられるような気持ちになって……、そしたら……」


「エリスお嬢様の名前を思い出した?」


「……はい」


「やっぱりあなたはシーナお嬢様本人に間違いないと思います。さきほど試していただいた杖の方もちゃんと反応しましたから」


「本当に本人以外には出せないないのですか?あれは」


「間違いありません」


「……そうか……。僕が誰なのか何者なのかまだよくわからないけど……。はっきりしていることはひとつあります」


「それは?」


「僕はエリスといっしょにいたいことです。もう離れたくなんかありません。この想いだけは何があっても本当のものだと思います」


「そう……ですか。私の知っているシーナお嬢様もとてもエリスお嬢様を大切にしておりました」






「お嬢様」


「はい?」


「傷のほうはどうでしょうか?治癒術も施しましたし、そろそろ包帯をとってもいい頃だと思います」


「あっそうですか。……本当だ。あんなに大きな怪我だったのに、全然痛くない」


僕は今、包帯を巻いた上に寝間着、ネグリジェ?を切着ている。正直女の子の恰好はものすごく恥ずかしい……。しかもピンクのひらひらの付いたかわいいやつだ。



「……こんな服……恥ずかしい」


「今お嬢様が着ているのはエリスお嬢様のものです。本来なら三つ年が離れてるですが、お嬢様はあれからお姿に変わりないようで、サイズもだいたい合ってるようでしたから」


「えっ?」


「お嬢様の服は長い間使ってなく着るには洗濯しないといけないですが、間に合わないのでエリスお嬢様のをお借りしました」


「これエリスの……。……いくら妹のでも恥ずかしいよ。僕は体女の子でも心は男だし……」

 

 さっきは突然抱きつかれて驚いていて、気付かなかったがエリスはかなりの美少女なのだ。どこまでも透き通っていて、穢れを知らない純粋な子供ような目、薄桃色の小さい口、あどけない愛くるしい笑顔。それに青い目、淡い青色の目は初恋の少女と同じだった。



「大丈夫です。とても似合っていてかわいいですよ。私でも思わず見とれてしまいそうです」


「ううぅ…………」


かっ……かわいいって……、

恥ずかしすぎるっ。男の子なのにかわいいって言われるなんてっ。



「リフィアさんのほうが、美人でかわいいじゃないですか」

 

 漆黒の瞳、肩までかかる艶やかな黒い髪。完璧なまでに配置され整った顔のパーツ。

 胸には大きな膨らみがあり、そこから腰にかけての魅力的な曲線。

 黒い髪、漆黒の瞳は日本人に似ているが、鼻はすっと高く、陶器のように白い肌、スタイルの良さ、どれをとっても美しいとしか言いようがなかった。



「そっそんなことないですよ……。私なんかよりもシーナお嬢様のほうが……。それに以前のお嬢様よりも表情が豊かで可憐で……」

彼女はぽっと頬を赤らめる。


「うっうぅぅ…………」

やっぱりすごく恥かしい……。






「私だって……」



ぎゅっ。


彼女は僕を引き寄せ抱きしめる。

震えてる。



「わっ、リ……リフィアさん?」



「私だって……シーナちゃんが生きてて嬉しかったんだから……」

どこか懐かしいぬくもり。彼女に抱きしめてもらっているとなんだか落ち着く。


 だけど……、この体は十歳程度で身長が低いため、彼女が僕を抱きしめると、僕は必然と彼女の豊満な胸に顔をうずめることになる。


「う~~。はっ……はずかしいです……」


「……?あっごめんね……。ちょっと苦しかった?シーナちゃんとこうしてまた会えてうれしかったから……、つい……」

 彼女の抱きしめる力が弱まる。

 

「リ……リフィアさん……」


「リフィア……。私のことはリフィアって読んでください」


「で、でも……」


「呼び捨てでいいのよ。昔のシーナちゃんもそう呼んでくれましたし……」


「年上の人を呼び捨てにするのは……ちょっと……」


「気になさらないでください。私はそのほうが落ち着きますし、それに私はメイドですから……」


「……うん、わかったよ……。……リ……フィア……」


「はい」


「やっぱり、恥ずかしいです…………」


「それなら……今すぐでなくてもいいですよ。私はシーナちゃんと一緒にいられればそれで……」


「……うん、わかった」 




……なんか幸せだ……。

今まで親に大切にされたことはなく、自分は必要とされてなかった。

でもこの二人は僕をこんなに大切にし、喜んでくれたり、悲しんでくれる。



「幸せだ…………」 



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