プロローグⅡ「別れそして再会」
僕は死んだ。
来月には高校入学を控えた中学生だった。
原因は両親の喧嘩のとばっちりだった。
僕の両親は仲が悪くいつも喧嘩していた。小さい時からずっとだ。その子供の僕は愛されておらず、疎まれていた。授業参観はもちろん親らしいことなんか一度もされたことがない。未だに離婚してなかったことが奇跡のようだ。
そんな家にいたくない小さい頃から僕は平日は夕方遅くまで、休日はほとんど祖父の家に遊びに行っていた。そして嫌なことがありそれに耐えられないのなら、何か没頭できるものを見つけてみてはと、祖父に勧められた剣道を祖父に稽古をつけてもらっていた。
その日父親はいつも夜遅く酔っぱらって来て、母親はそのことにうるさく注意していた。
父親は酔っぱらっていたせいかいつも以上に怒り出し暴力をふるい始めた。
悲鳴を上げる母親。
殺してやると叫ぶ父親。
二階で喧嘩している二人を止めるべく、急いで階段を上り父親から母親を引き離す。振り向くと母親は恐怖にひきつった顔で階段を慌てて下り一一〇当番した。
僕は母親に向かう怒りに狂った父親の前に立ちはだかった。
止めようも怒り狂った父親の力は強い。それでも必死に止める僕を父親は力任せに押し倒した。
階段のある方へ。
そして僕は新しい生活に希望を抱き、楽しみしていた高校入学を迎えることなく、三谷海斗としての人生を終えた。
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闇の中を漂う意識。
ここがどこなのかわからない。どれだけ時間が経ったかも分かんない。
何も感じることが出来ず、何にも聞こえない世界。
手や足を動かしてみるけど何にも手ごたえが無く、むしろ手足があるのかさえ疑わしかった。
ただそこに在るだけで何も感じない。
いやそもそも僕は存在していないのかもしれない。ただ僕の周りには何もない空間が広がっているだけ。何も感じないのだから暗闇とか空間というは間違っているかもしれない。
ただ分かっているには僕は死んだということ。ここは死後の世界なのだろうか。何もないこの世界で永遠とただひたすらといるのだろうか。
闇の中に何か違和感を感じたので周囲を探ってみると、何か光っているのを見つける。
ふと何か存在を感じた。
それはなんだか懐かしい感じがした。
その感覚が何か気になった僕はそれへ近づこうとする。
何の感触も実感も感じないこの世界では近づいているか、それどころかそれが可能なのかわからなかったが、それへ近づこうと必死にもがく。
じわりじわりと意識が光に向かって近づいてゆくのを感じた。
その光から感じるのはどこか懐かしい感じのするあたたかさ。
ずっと昔に感じたことがあるような……。そしてそれはとても大切な……。
そのあたたかさが何なのか、そしてこんなにも胸が締め付けられるのは何故か記憶の淵をたどる。
(!?)
……そうだ……思い出した。これは……あの少女だ。小さい頃夢の中であったあの悲しげな表情をした少女。
僕の初恋の相手。
小さい頃夢でよく会って、今では見なくなってしまっていた淡い青の髪と透き通った青の瞳をもつ女の子。
まさかここに彼女がいるのだろうか。
会いたい。
会ってと話をしたい。
あの子の笑顔を見たい。
その妙な感じするほうへ意識を集中させると、何かに引き寄せられる感じがした。それはだんだん強くなり、その少女の存在をより強く感じた。
その小さな光は一瞬弱くなったかと思うと、そこから大量の光が溢れ出し、視界全部を覆い僕を包み込む。