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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
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第十八話「襲撃者Ⅱ」


「どうしてお前がここにいるっ?何が目的だ?」



「それはあんた達ソフィネット家を潰すためさ。ここに集まった貴族もろとも殺す。ここには内政を担う身分の高い貴族も多く来ている。そうすればソフィネット家は責任を負わなければならなくなり、再び没落へと追い込まれるだろう。私はお前達のしたことは絶対許さないから……」

 


 貴族の中には魔法が使えるものも多いが実戦経験が少ない者がほとんどである。

 しかもドレスや動きづらい服装でその動きは制限され、それにこの建物の中ではあまり威力のある魔法は使えないし、接近戦を得意とするこの女がはるかに有利になるだろう。……となればかなりの犠牲者がでると思われる。



「……っ!? どうしてそこまでする?ソフィネット家は確かにひどいことをしてきたかもしれないけど今は違う。今の当主、私のお父様になってからは変った……、だから……」

  


 お父様は先の魔物の大進行で惜しみなく全面的に人々を支援し助け、薬だってより高性能に……より安価にして世界中に普及させ、各地に平民でも受けられるよう低料金の診療所を設けた。

 かつて悪行の限りを尽くし、一度は没落にまで追い込まれそうになったソフィネット家を改革し生まれ変わらせたんだ。 

 

 たしかにソフィネット家は昔はひどいことをしてきたけど今は……。

 


「そんなの関係ないっ。何が英雄だっ!いくらたくさんの人を救おうと、今までにお前たちのしてきたことは消えない。たくさんの人を殺したことは変わらないっ!……私のお母さんもお父さんもっ!だからっ私はここでお前たちを殺すっ!」

 

 女はエリスの首に突き付けていたナイフに力を込めると、エリスのその細い首はあっさりと切れ血は吹き出し、そしてナイフはそのまま頚動脈に達し切断…………、



「エリスっっっ!」


 




 ……しなかった。




「なっっ!?」


 

 ナイフはエリスの首に到達せず、目に見えない透明な障壁によって遮られていた。

 

 女はそれに驚きその視界内から僕を外す。

 そして僕はその隙を見逃さず女へと駆け抜け強引にナイフを奪うと、エリスを庇うように抱き力を込め後ろ蹴りを食らわせる。


 

 タッ……タタッ、


 ガシッ、ぎゅっ……ザシッ……。



「くっ……」

 

 女はそれでバランスを崩し後ろへと倒れる。 



「…………間に合ったか……。よかった……」

 先ほどの見えない障壁は僕が咄嗟に発動させた小規模の結界魔法である。


 

 女からエリスを取り戻し渾身の蹴りを食らわせたが、いくら鍛えたとはいえ一カ月じゃそう筋肉がつくわけないし、まして十歳ほどの体では大してダメージは与えられないだろう。


 


「ふっ……ふふふっ」


 思った通り女は大したダメージは受けてない様子ですぐに立ち上がり、こちらを睨みつける。


「ふふ……、痛いじゃないか。……とてもあのとき怯えて子犬のように震えていた少女には見えないな。まさかその年で魔法も使えるとはな……。子供だと侮ったのがいけなかったか……、なら私も手加減することなくその身体を切り裂き引きちぎり、元の形がなくなるまで徹底的に甚振ってやろう」


 女がローブをめくると腕にはブレスレット、それが一瞬光ったかと思うと女の手には刃渡り四十五センチほどの一対の剣、……双剣が握られていた。

 

 そしてそれは赤く鈍い光を放っていた。つまり……、それが示すのは……、


 

「魔法が使えるということか……。やっかいですね……」

 それに赤く光っているということは火属性を付加しているのだろうか……?


 僕も同じくブレスレットから刀を出現させ女へ構える。



「さあて……、始めましょうか殺戮をねっ!」

 女がこちらへ突撃してくるのと同時にエリスに可能な限り強力な防御結界をかける。



「そんなことしてていいのかしら?油断してると死ぬわよ」

 女の双剣は炎を纏いその威力を増している。その生み出す熱はすさまじく辺りの温度は急上昇する。

 その灼熱の双剣は僕を切り刻み焼き尽くさんと欲す。



「お姉ちゃんっっ」 




 カチン。

 

 女の双剣を片方は右手の刀で、もう片方は氷で作った盾で防ぐ。

 

 火属性を纏った双剣から刀へとじわりじわりと熱が伝わってくる。

 咄嗟につくった氷の盾はその熱に耐えきれずその役目を終える。



「なら……」

 こちらも刀に属性を付加する。

 燃え盛る灼熱の炎には、全てを凍て尽くす氷。



 パキッ、パキパキッ。


 風と水の合成魔法、氷属性を付加させた刀は難なく炎に打ち勝ち、徐々女の双剣を凍らせていく。


「くっ!?」


 このまま凍て尽くそうとするも、女はすばやく振り払うと2,3メートル後ろへバックする。



「強いな……だがっ」

 女は一瞬にして間合いを詰めると、目にも止まらぬ速さで右、左、右、左と双剣を振り落とす。


 それに対し僕は刀を最小限動かすことによって防ぎ、隙を見ては魔法で応戦する。






「はあぁぁーーーーっ!」

 


 シュン……、ガツン。ガコン……、ピキピキッ。


 バコン、シュン……ザシュッ。



 刀を振り落とせば女も双剣でガードする。

 切っては防がれ、切っては防がれ、激しい攻防が続く。


 隙を見つけては魔法を放つもどれも防がれてしまう。

 女も魔法を使えばすぐこちらも応戦する。


 

 この狭い建物の中では大規模な魔法は使えず、主に小規模の魔法と剣による小競り合いが続く。 


 お互いに一向にダメージを与えることなく体力だけ消費され疲労が蓄積されていく。 





「ちっ……なかなかやるわね。早く始末しないと気付かれるか……、ならば……」


「混沌なる闇よ……、具現化せし陰よ……、かの者を束縛し……、魂をも引き裂き……全てを食らい尽くせっ、デモンズ・イーターっ!」

 影か?どこだ?薄暗くて分かりづらい。



「……そこかっ!」

 すばやく術式を組み上げ光の矢を放つ。この程度なら詠唱は必要ない。

 

 キュウゥゥーー……。



 命中したそれは直径十センチほどの円状の口、びっしりと生えた無数の鋭利な小さい歯を持つ蛇のような陰でできた化け物だった。 

 あんなのに噛まれたらひとたまりもないだろう。でもこれなら…………。




 ギュウゥゥゥ……。


 カランッ。刀を落とす音。



「……うっぅぅぅーー」


 ……苦しい。

 

 先ほどのとは違う手の形をした陰で首を絞められているようだ。だんだんとその力は強まる。

 そうしている間にもどんどんと影は出現し身体は拘束され、さっきの蛇のような陰も現れる。


「死ね死ねっ、噛み殺せっ、食らい尽くせっ!……母さんや父さんと同じ苦しみを味わらせてやるっ!」


「お姉ちゃんっ!……ねえ、やめてよっ!どうしてこんなことするのっ……?」


「ふっふふふ、ふははははっ!死んじゃえっ、許さない許さないっ!ふははっ……」

 

 ……やばい。


 このままだと死…ぬ……。




 ここで終わるのか……?こんな……ところでっ……、あっけなく……。


「うぁっ……うううゥゥゥーー」


 もう……だめだ……。意識が…………遠のいて……いく。


 ……僕は死ぬのか。


 どっちみち一度死んでるんだ……。わずかだけども新しい人生を送れただけでも……。




《それでいいの……?》


 ……ん?何……だ……? 声が聞こえる……。

 

 聞こえるというより脳に直接響いてくる感じ。それにどこか懐かしいような……。




《諦めるの?》

 

 君は誰……? それにもう無理なんだ……、僕は死ぬんだ。どうあがいたって……。

  



《あなたにはやらなければならないことがあるんじゃなかったの?》


 やらなければならないこと……?




《あなたの大切なもの》 


 大切な……もの……?




《そう、あなたの大切なもの。守らなければならないもの》


「……うぐっ……うぅぅーー、……エ……リスっっ!」


 そうだ……。僕は何をしてたんだ。エリスを守ると決めたんじゃないかっ。


 この命を賭けてでも守ると決めんたんだっ!




《全てから守るのよ。あなたにはその(・・・)がある》





「っうあああぁぁぁぁァァァぅぅァァぁぁーーーーー!」




 僕はエリスを守る。


 

 何が立ちふさがろうとも、



 そのためには僕がどうなろうとも、


 

 そんなもの僕が全て打ち破ってやるっ!





「くっ何だ?影がっ……押されているっ!?」


 

 なんだか力が溢れてくる。

 

 身体の奥底から膨大な何かが……。

 

 これならエリスを守れるかもしれない。


 それにこれはどこか懐かしい……。





「うっ……光がっ!」


 二人の少女と一人の女は光に包み込まれる。



 影を消滅させ辺りを埋め尽くす光。


 すべてを飲み込む圧倒的なまでの光の氾濫。





 やがてそれが収まると、そこには…………。




 

 

 先ほどまでの少女とは打って変わり、目は金色に髪は青銀色に光り輝き、肌は透き通るように白く美しく、背中には八枚の光の翼を持ち、その姿はどこまでも神秘的で神々しかった。

 

すみません。

受験勉強のため9月からは不定期更新になります。



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