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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
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第十三話「別れと決意」

 

 昨日あの後僕は、カルマをビンタではり倒したあと、急いで元の場所に戻って何重にも結界を自分の周りに張って寝た。

 

 あんなことがあったらもう恥ずかしくて、カルマとは顔を合わせづらい。




「シーナ……、シーナってば」

 すると背後から聞こえるカルマの必死な声。


「来ないで」


「ごめん、僕が悪かったって」


「わたしの裸見たくせに」


「悪かったよ……。あのときは精霊だと思って……、あまりにも綺麗で見とれてたんだ」


「じっくり見たんだ……。わたしの裸じっくり見たんだ」

 

「ごめんってば……。あのときは暗くてあまり見えなかったって」


「でも見たんじゃない」


「うぐっ……」


「カルマなんか知らない」


「ほら……機嫌直してくれよ。ほら……ツクの実またとってきたから」

 


 ツクの実……。


 ほどよく熟しておいしそう……。でも……、


「食べ物なんかにつられたりなんかしないもん」


「ちがうのもあるよ。さっき見つけたんだ」


「……それは希少でめったに手に入らないあのシュカの実?」


「えっ……そうなの?」

 

 とろけるような甘さとわずかな酸味が特徴らしい。

 まさかそれがこの森にあるとは……。


 食べたい。ものすごく食べたい。


「……いる?」


「……うん」

 カルマからからシュカの実をもらい口に入れる。

 広がるとろける甘さと、絶妙なバランスの酸味。


「おいしい……」 


「そう?ならよかった」


「幸せ……。こんなおいしいものがこの世に存在したなんて……」

 ほっぺたが落ちそうなくらいうまい。

 

 

「……許してあげる。……べっ……別に食べ物につられたわけじゃないんだからねっ」

 決して食べ物につられたじゃない……、それじゃなんだかカルマに餌付けされているみたいだ。



「ぷっ……。そうか……ありがとう」


「それにしてもほんとにおいしいわね。このシュカの実……」



「昨日はほんとにごめん。僕が悪かった」


「…………ばか」




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 それから二人で連携して魔物を倒したり、しょうもない話をして笑いあったり、魔法で作った氷に果汁をかけてかき氷を作って食べたりと有意義なひと時を過ごした。

 カルマといっしょにいるととても楽しかった。

 



 それは昼を過ぎたころだった。



 森を歩き続けやがて見つけたのは森の出口。




「森を出れば後は帰れると思う……」


「そう…………。じゃあ……もうお別れだね」


「うっ……うん。……シーナともう会えないのはさびしいな……」


「わたしも……。短い間だったけど楽しかった」


「でももう会えないとは限らないよ。こうして会えたんだから……いつかきっと」


 僕のフルネームを教えればいいのかもしれないが、ソフィネット家は恨まれているし……もしもカルマに嫌われたら……、また僕と関わることによって危険が伴うかもしれないと思うと言いだせなかった。

 

「そう……ね。また会えると信じてる」


「……………………」


「…………さようなら、……カルマ」

 

 たぶんこの世界に来て初めての友達だったと思う。いや……、前の世界でもあまり親しい人はいなかったから、生まれて初めての親しい友人なのかもしれない。


「…………さようなら」






「………………シーナ、好きだ……」

 金髪の少年のつぶやいたその声は風の音にかき消され、少女に聞こえることはなかった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 カルマと別れた後、僕を探しに来てたリフィアさんに見つかり夕食までこってり叱られた。




 そして今……、



「はぁ……」


「エリス……もういいでしょ?」


「だめ。すごい心配だったんだからね……。お姉ちゃんが……死んじゃったらどうしようって……」

 

 あれからエリスはお姉ちゃんとずっといっしょにいるとか言って、ずっと僕に引っついている。


 一日中ずっとだ――――――。 

 

 

 魔法の練習のとき、寝るとき、お風呂に入るとき、……挙句の果てにはトイレまで一緒に来ようとしてきた。

 ずっと手を繋いだままだし、ときどき腕を組んで顔をすりすりしてきたり、そして夜は抱き枕に……、とにかく僕から離れようとしないのだ。

 

 それになんか屋敷の人達には会うたびに微笑ましいものを見る目で見つめてくるし……。


 

 一人で行こうとするとものすごく怒る。 ……といっても全然怖くないし、むしろそのむくれた表情は可愛いし守ってあげたくなるのだが……。いくら妹とは言え女の子にいつまでも抱きつかれては、心は男の子である僕はどきどきせずにはいられない。

 以前の……、前世の?僕ならあの日記から判断するに……嬉々として受け入れそうだが……。



「やっぱり危ないから……、やめようよ……」


「エリス……約束したじゃない……」


「でっでも……」 



 僕はこれから剣の練習である。


 僕は魔物との戦いで魔法に頼りすぎるはよくないと思い、あれ以来剣の特訓をしている。

 エリスが特に反対したが、エリスを守るためだと説得を試みた。

 すると絶対勝てるわけないと思ってたのか……一度勝負して騎士団長に剣で勝てたらという条件で許してくれた。

 

 剣道をやっていたとはいえ、祖父以外相手にしたことはなく祖父には常に負けていたし、しばらく剣を振っていないこともあって自信は全くなかった。



 

 危ないので勝負は真剣ではなく木刀で行われた。



 結果は僕の勝ちだった。

 

 まったく予想外であっけなく勝敗はついてしまった。

 あの騎士団長はかなりの使い手として有名らしいのだが……。


 どうやら自分は思っていたよりかなり剣の腕は良かったようだ。



 そうだとすると、僕が一度も勝てなかったあの祖父はいったい何者なのだろうか……?

 たしか歳は80近いはずなのだが……。 


 あの人はもしかして、昔勇者でもしていて魔王を倒す旅でもしていたのだろうか?

 そう言われても、十分納得できてしまう。

 

 あの半端ない強さならさくっと一人で魔王倒してきそうだ……。



「エリスを守るためだから……」


「……でも……、もしもお姉ちゃんが……死んじゃったら……。わたしっ……わたしは……、うぐっ……」


「エリス…………」

 

「うぐっ…………。……うぅええ~~~~ん」


「大丈夫だから……。わたしは二度とエリスを一人ぼっちなんかにしないから……、お姉ちゃんはここにいるから……」

 泣いているエリスを強く抱きしめ、大丈夫だからと繰り返しつぶやく。



 ――――――――――――。


  

 ――――――――――――――――――――――――。


 

 しばらくしてエリスは泣きやむと安心したのか僕に抱きついたまま眠りに就いた。



「すーーーー。すぅーーすーーーー」



「エリス…………、安心して眠り……。……必ず守って見せるから……」 



 少女は再び妹を守ると心に誓い、その決意を強めるのであった。







pv30000、ユニーク5000、突破しました。

ありがとうございます。


遅いかもしれませんが、そろそろ登場人物設定を投稿したいと思います。

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