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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
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第十二話「フェアリーダンス」



シーナside:



「ん~~、んん……」

 

 目が覚める。



「トイレ……」


 カルマが寝ているのを確認してから僕は茂みへ向かう。


 もう夜なので真っ暗なのだが、僕は光属性の魔法が使えるのでなんの問題もない。

けどあまり明るいと魔物が集まってきて、いくら防御結界を張ってようと破られるかも知れないので、最低限の明かりで向かった。



「はずかしいな……」

 いくら元男の子でも女の子の身体に慣れてしまった僕にとって、こんなところでするのはかなり恥ずかしい。

 

  

「だれも……いない……よな」 

 当然あたりにだれもいないはずなのだが、思わず確認してしまう。

 もしカルマに見られたら恥ずかしすぎてどうにかなっちゃうだろう。




「……………………湖……」


 トイレを済ました僕はふと目に入った湖が気になり湖へ向かう。



「魔法できれいにしたからって、やっぱりちゃんと洗い流したいな……」



 するする。


 服を脱ぎ、裸になる。

 



 ちゃぷ。


 裸になった僕はまず片足を湖の水につける。

 ひんやりとしてとても気持ちいい。


 

 ちゃぷっちゃぷっ。

 


 どんどん入っていき、やがて肩まで水につかる。


 「ひんやりとして……気持ちいいや」


 そして背を水につけ浮かぶ形をとる。


「きれいだ……。青いなあ……」

 そこにあったのは満月。元いた世界とは違ってこの世界の月は青い。

 

 月夜の光でも十分明るかったので明かりを消すと、月の光に照らされて湖は青く光りそれはとても神秘的だった。



「ほんとに異世界に来ちゃったんだな…………」


 でも、この世界に来れてよかったと思う。


 あたたかい家族や毎日の楽しい生活。

 僕は今、生まれてきて一番幸せだと思う。


 

 それに守りたいものもある。

 

 

 エリス。

 

 

 彼女の笑顔を見てると、とても幸せな気分になる。

 

 彼女の悲しそうな顔を見ると、僕も切ない気分になる。



 エリスを……、僕の妹を……、守っていきたい。その笑顔がいつまでも続くように。


 僕はそのためにはなんだってする。


 守るために強くなる。


 

 エリスが笑っていられるように。 








「…………………………」




 どのくらい経っただろうか。

 僕はしばらくの間、湖に浮かんでいた。



「そうだ……。ここなら……、あれの練習ができる」



 飛行魔法の練習。

 


 僕のオリジナルの魔法。



 この世界に飛行魔法はまだ開発されていない。 

 そこでこれを完成させれば、空からの魔法を打てたり、回避するのが容易になったりする。ほかの者が飛べない中で自身だけ飛べれば戦闘においてかなり有利にたてるだろう。もっとも……一部の上級精霊と契約をし精霊憑依した者を除いてだが……。

 


 精霊憑依とは自らの契約精霊と一時的に一体化することによって、飛行能力とより高度の精霊魔法を得ることができるものである。

 

 で……、僕の飛行魔法は疑似的に精霊の羽を再現し、飛行能力を得ようというものである。

 僕の膨大な魔力があるからこそできる芸当でもある。



 お母様に精霊シェリスに何度か会わせてもらい、その羽根を観察、研究してできたものである。羽を出すところまでは成功したが、危ないのでまだ一度も飛行実験をしていないのである。

 それにこの魔法はかなりの魔力を消費してしまうので、明日の分を残すことを考えると、せいぜい五分程度が限界だろう。


 

 「それじゃあ……、……シャイニングフェザーっ」

 羽を展開するだけなら何度もしているし、この魔法自体は膨大な魔力を必要とするだけで展開させるの自体は簡単である。なので詠唱は最低限でもできるのである。


 


 背中に展開される一対の透明な羽。

シェリスさんのものよりは小さく輝きは小さいが、十分飛行能力は得られるだろう。


「よし。それじゃあ……」


 念ずるとまず少しだけ浮かび上がる。

  

「飛んだっ」


 今度はもう少し高く、三メートルほど。


「よしっ。これならいける」


 水面と水平になるようにして飛んでみる。

 高さも自由自在に。


「やったっ……成功だっ」

 水面ぎりぎりを飛ぶのに挑戦してみる。

 

 …………が、



 じゃぷん……じゃぷじゃぷん…………じゃぽん。



 「……ごほっ、……ごほんっ」


 顔を水面に何度もついてしまう。

 ついたり、離れたり、ついたり、離れたり、最後には水の中へ突入。

 


「あ~~。苦し……、やっぱり難しいな」


 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



カルマside:



 僕はふと目覚めると、隣に寝ていたシーナがいないこと気がつく。



「あれっ?……シーナ……?」


「……いない。どうして……?まさか魔物に?」


「結界は……ちゃんと機能している。でも……万一のこともある。探しにいこう」

 


 シーナが作った中に光を閉じ込めた、手のひらに乗るサイズの立方体の形をした氷。

 それを持ち辺りを捜し歩く。



「いったいどこにいったんだ?」


 すると湖の方になにやら飛び回る明りを見つける。


「なんだ……?あれは?あっちにいるのかもしれない」


 敵の可能性もあるので茂みの中に隠れながら近づく。


 と……、そこにいたのは。



 背中に透明な二枚の羽を生やし、宙を優雅にに飛びまわるものを見つける。

 

 それは少女の姿をしているのに気がつく。



「まさか精霊……?」

 普通は精霊島にしかいないはず……、でも例外はあると聞いたことがある。あれがその例外なのだろうか。

 


 それは月夜の青い光に照らされ、優雅に飛び回る。 


 ときどき水面にちょこんと着水しては湖に波紋が広がる。



 

 それはまるでダンスを踊っているようで、とても美しく幻想的だった。

 

 いつまでもこうして見ていたい。

 



「……………………」




 しばらくこうして見つめていると、精霊?は着水しこちらへ向かってくる。


 生まれて初めて会った精霊と話をしたくて僕は茂みから出た。


 

 


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



シーナside:



 今度は急加速、急停止、ターンに挑戦。

 

 なんどかふらつき落ちそうになるが今度はなんとか成功する。




 しばらく飛行を楽しんでいると、いつの間にか残り時間は30秒切っていたので高度を下げゆっくりと着水する。


 ちゃぽん。



「初めてにしてはなかなかうまくいったかな……」

 身体を拭こうと、陸に上がると……、


 

 ざわざわ……バタン。



 茂みから出てきて倒れる人影。


「痛っ……た……。…………あっ……、……シーナ?」

 よく見るとそれはカルマであった。


 


 僕は今、服を着ていない……全裸である。


 

 つまり……カルマに裸体を見られたわけで…………、




「にゃあああああぁああぁァぁァぁぁーーーー」

 


 満月の月夜の湖に少女の悲鳴が響き渡る。 


  

 

 to be continued----

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