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初恋の相手は前世の自分  作者: 無為自然
第一章:新たな人生の始まり
14/22

第十話「邂逅」

長くなってしまいました。



「……パーティ?」


「二週間後にアルの誕生日パーティがあるのよ」


「お父様の……?」


「そう、……あなたも出席するんだからきれいなドレスを用意しなくちゃね……」


「は……恥ずかしいです。知らない人の前に出るのは初めてだし……」


「大丈夫よ。シーナちゃんは十分かわいいわよ。ほかの貴族のご子息も参加なさるからきっとモテモテよ」


「……………………」


「そうと決まれば当日着るドレスを買わないとね……。シーナちゃんはどんなのが好きかしら……、白?ピンク?ひらひらのたくさんついたやつ?それとも……」



 タタタタタッ。


(僕は男だーー。男にもてたくないっ!)


 全力でお母様から走り去る僕。


「シーナちゃんてば恥ずかしがり屋なんだから……」




 タタタタタッ、タッ。



「はぁ……はぁはぁ」


 二週間後にパーティ……、ひらひらのかわいいドレス……、男にもてもての僕……。


「にゃああぁぁーー」

 思わずあげてしまう奇声。


「ううぅ……、……鳥肌が立ってきた」

 僕は心は男でも身体は女だから……、いつか……男と結婚しないといけない……のか……?


 重大な事実に気付く僕。

 ショックで立ち直れそうにない。


「……………………」


「………………………………」


「……そうだ、今日は気分転換に森で魔法の練習をしよう。……一人だけど、魔法も十分使いこなせるようになったし、大丈夫なはずだ」


 

 そして僕は最近魔法の練習に使っている近くの森へと向かう。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




「……、……ブリザードッ」


 ザクッ。


 氷槍が脳天に刺さり、倒れる一体のハウンドウルフ。


「魔物にもずいぶん慣れてきたな……。これならこの森も安全だな」

 この森に来てすでに魔物は十体以上は倒している。


「おっこれは……、ツクの実だ……。この甘酸っぱいのがいいんだよね。もって買えろっかな……」


 ガルグアァァァーー。


 突如として聞こえた魔物の吠え声に、背後を振り向くとそこには……。

 今まさに引き裂かんとする鋭い爪と牙。このまま僕の身体に達しその鋭利な爪と牙はいとも簡単に引き裂くであろう。


「えっ……、だめだ……詠唱が間に……合わない」

 これは自らの魔法に過信し、魔物を侮った僕への罰なのだろうか。

 襲いかかる魔物にどうすることもできない僕には目を閉じ、むなしく命が奪われるのを待つことしかできなかった。




 …………そう思ったが……。




「はああぁぁーーーー!」

 

 ザシュッ


 

 ドトッ……ドタッ


 

 振り落とされる剣。真ん中で胴体を真っ二つに切り裂かれるハウンド・ウルフ。

 それをやってのけたのはシーナと同じくらいの年の容姿の整った金髪の少年だった。



「…………はぁはぁ、……君大丈夫?」


「あ……、ううん……。大丈夫」


「よかった……、ところで君は…………っ!!」


「……さっきはありがとう。わたしはシーナよ」


「……………………」


「……ん?……何か顔についてる?」

 なぜか先ほどから見つめられているような……。

 どこか僕におかしいところでもあったのかな……?


「…………はっ……、いっいや……なんでもない。僕はカルマ。よっよろしく……」

 こちらを見つめていたかと思えば、突然顔を赤く染めそむける少年。


「そう……?ならいいけど。カルマて呼んでいい?わたしもシーナって読んで」


「あっうん……。しっ……シーナ……」

 カルマという少年は挙動不審で落ち着きがない。それに顔も赤く風邪でも引いているのだろうか?


「ちょっと、じっとしててね」

 

「ちょっ……まっ……」


 

 熱があるか確認するため僕のおでこと彼のおでこをくっ付ける。


「ん~~~~。熱はないかな……」


 ぽっ。

 

 さっきより増して赤くなるカルマの顔。


「ん?やっぱり熱あるのかな……。さっきより顔真っ赤だし」


「はぁはぁ……。だっ大丈夫だからっ、熱なんかないからっ。ほっほらこんなに元気だから」


「そう……?でも念のために……ほら」

 魔法で小さい氷を作りそれを持っていたハンカチで包んで渡す。


「シーナ、君は魔法が使えるのっ?」


「うん」


「すごいな……その年で……。ということはさっきのは……。しかもそれは風と水の合成魔法じゃないのか?」


「そうだけど……」 


「二属性も使えるのか……、僕は剣が少し使えるだけだよ」


 実際には水、風、光の三つだけど。


「でも十分すごいよ。魔物を一刀両断してたじゃない」

 

「いや……、たまたまだよ。あのときは必死だったし」


「たまたまじゃないと思うけどな……。迷いなんかなく魔物に向かってたし、それに……カルマがいなかったらわたしたぶん死んでた。もう一回言うね。ありがとう」

 感謝の気持ちをちゃんと伝えたくて彼の手を握りながら、心からお礼を言った。


「う……、うん……」


「早く風邪治るといいね」


「…………。……だから熱があるんじゃなくて……、君がかわいくて……なのに……」

 ぼそっとつぶやく何かをつぶやくカルマ。


「何か言った……?」


「言ってない。なにも言ってないから」





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



カルマside:



 僕は森の中にいた。


 


 なんか辺りがすこし涼しいと思い、そちらへ向かうと地面が一面凍っているのを見つけた。


 すると少し離れた方から魔物の気配がしたので進んでいくと……


「っ!?」


 そこには青い髪をした少女と狼のような姿の魔物がいた。

 このままではあの華奢な少女は魔物に抵抗する術もなく、いとも簡単にその命を奪われてしまうだろう。僕はそう思い剣を抜き魔物へと駆けだした。


 

 タタタタタッ


「間に合ってくれ……」

 僕は剣を習っているが、子供の力ではうまく魔物を相手にすることができるかは怪しい。

 それでもやるしかない。人を見殺しにすることはできない。しかもまだ子供であるのだから。


 タタッタタタッ


「えっ……、だめだ……、間に……合わない」

 少女の恐怖に引きつった表情。



 間に……合うか……?


「はああぁぁーーーー!」

 剣を両手で持ち力を込めて魔物へと振り落とす。


 ザシュッ


 剣が途中で止まりうそうになるも、渾身の力を込めて切り落とす。



 ドトッ……ドタッ


 魔物は胴体を真ん中で真っ二つに切り裂かれ地面にころがる。



「…………はぁはぁ、……君大丈夫?」


「あ……、ううん……。大丈夫」

 どうやら少女は怪我も負うことなく無事のようだ。


「よかった……、ところで君は…………っ!!」

 僕は正面から彼女の顔を見ると……


「…………さっきはありがとう。わたしはシーナよ」

 そこには……、



 淡い青色の髪は風に流れ、長いまつげにその細長い眉、青く透き通った瞳、熟れきらぬ果実の瑞々しさを持つ小さな薄桃色の唇、すべては完璧なまでに美しい位置に静止したままであった。

 白磁のように白くすべすべな肌、欠点のない目鼻だち、すべてが精巧に出来た人形のようだった。

 それは単に美しいとか、綺麗とかそういう次元のものではなかった。



「……………………」


「……ん?……何か顔についてる?」

 

「…………はっ……、いっいや……なんでもない。僕はカルマ。よっよろしく……」

 僕は思わす彼女の顔をずっと見つめていたようだ。


「そう……?ならいいけど。カルマって呼んでいい?わたしのこともシーナって読んで」


「あっうん……。しっ……シーナ……」

 顔が熱い。 

「ちょっと、じっとしててね」

 

「ちょっ……まっ……」


 急に少女の顔が近づいてくる。


 ……何をするつもりなのか?


その人形のような端麗な顔は止まることなくどんどん近付いてくる。その小さなぷるんとした薄桃色の唇に目が奪われる。


 ……まさかっ……キッ……キス!?

 僕はこの可憐な少女にキスをされてしまうのだろうか?


 

 ドキドキッ、ドキドキッ


 僕の心臓の鼓動は早く脈打っている。


 

 ほんとに……、キッキスを?



 目をつむりその時が来るのを待つが……、


 コツン


「ん~~~~。熱はないかな……」

 どうやらおでことおでこをつけて熱があるか確かめたようだ……。


 そして目を開くと真ん前には少女の顔。

 

 ちっ……近いっ。

 

 ぽっ。

 

「ん?やっぱり熱あるのかな……。さっきより顔真っ赤だし」


「大丈夫だからっ、熱なんかないからっ。ほっほらこんなに元気だから」


「そう……?でも念のために……ほら」

 そうすると彼女は魔法で小さい氷を作りハンカチで包んで渡してきた。


「シーナ、君は魔法が使えるのっ?」


「うん」


「すごいな……その年で……。ということはさっきのは……。しかもそれは風と水の合成魔法じゃないのか?」

 ……驚いた。二属性の資質を持っているだけどもすごいのに、それをこの年で難なくこなしているこの少女は天才だ。数十年に一人といないだろう。


「そうだけど……」 


「二属性も使えるのか……、僕は剣が少し使えるだけだよ」


「でも十分すごいよ。魔物を一刀両断してたじゃない」

 

「いや……、たまたまだよ。あのときは必死だったし」

 あのときは必死でたまたまうまくいっただけで、もう一回同じことをやれと言われたら、たぶんできないだろう。


「たまたまじゃないと思うけどな……。迷いなんかなく魔物に向かってたし、それに……カルマがいなかったらわたしたぶん死んでた。もう一回言うね。ありがとう」


「う……、うん……」

 それでも、こう……褒められてお礼を言われるってのはとてもこそばゆい。 


「早く風邪治るといいね」


「…………。……だから熱があるんじゃなくて……、君がかわいくてそれで見とれてたからなのに……」

 

「何か言った……?」


「言ってない。なにも言ってないから」

 ふう……、聞こえなくてよかった。聞こえてたら恥ずかしすぎるよ。



 それにしても少女はどうしてこんな森にいたのだろう……?


 服装をみると上質の布が使われ、細かい刺繍やレースなどが施され、ひらひらは多すぎず少なすぎず上品なデザインになっている。

 おそらくどこかの貴族の娘なのだろう。


「カルマくん……、一人でここ来るの初めてで……、どうやって出ればいいのかわかんなくなっちゃって……。ちょっと教えてくれる?」


「……うん、わかったよ。たしかこっちの方……に……行けば……」

 あれっ……、ここどこだ……?


「ごめん、僕も迷ったみたい……」


「え~~~~っ」



to be continued----

 これからはなるべく一話ごとに題名をつけていくつもりです。

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