第八話「守るための力Ⅲ」
今回でようやく世界観がわかります。
世界が誕生するよりずっと前、始祖精霊アイリンは世界を創造するに当たってまず自らと同じ存在を創りだした。
それが六大精霊である。
土の精霊アウスは生命の基盤となる大地を、水の精霊エリアはあらゆる生物の源である海を、風の精霊シルフィードは大気の循環を、火の精霊テスタロスは生命の炎を、光の精霊イシュザークと闇の精霊ブロンは昼と夜、光明と暗闇を生み出した。
そして六大精霊達は世界を効率よく運営するため、始祖精霊と同じくそれぞれ自分と同じ性質を持つ下位精霊を数多く生み出した。
世界は下位精霊とそれを束ねる六大精霊のは働きによって生命は溢れ、繁栄の時代を極めた。
青天の霹靂。
だがそんな平和な時代も長くは続かなかった。
突如として現れ精霊の力を狙うもの達が現れる。ありとあらゆるものを食らい尽くす異界の化け物、魔物であった。その勢いはとどまることを知らず、たくさんの精霊は犠牲になりやつらはますます力をつけていった。
始祖精霊アイリンはそれに対抗すべく新たな創造を行った。それは人の創造だった。人の知力と繁殖力はすさまじく、魔物への対抗馬となった。人は精霊と契約することによってより新たな精霊の力を得た。
じわりじわりと魔物を押し返していく人間と精霊たち。
人の創造により魔物との戦いはうまくいってると思ったが魔物達の王、魔王の出現により再び形勢は逆転する。その力はすさまじく六大精霊達にとっても強大すぎるものだった。
たび重なる創造で力の弱った始祖精霊アイリンは己の命を犠牲にし最後の創造を行った。愛するわが子同然のこの世界とそこに住むあらゆる生命を守るをために。それは世界樹であった。世界樹は精霊達の力を強め、そして新たな精霊をたくさん生みだした。
力を増した六大精霊たちと下位精霊、人間達の手により魔王を打倒し魔物をはるか遠くまで追いやることに成功する。
それから数千年後、人はいまだ残る魔物から身を守るため国家を築いていった。
中央には巨大な湖、エデッサ湖がありそこには世界樹のある精霊島が浮かび、それを中心として東にはランゴヴァルト王国、西にはアルバニア共和国、南にはハザリア帝国、北にはスバルの地があり、その周りには魔物の住む森が広がっていた。
「……以上、これがこの世界に関する成り立ちと歴史です」
僕は今、自分の部屋でリフィアさんに勉強を教えてもらっているところである。あれから一カ月たったが、実は貴族としてのかつ淑女としての礼儀・作法のを身につけるのに必死で勉強のはあまり進んでいなかったりする。
貴族とか無縁でなおかつ男だった僕にこの一カ月は地獄のような日々だった。リフィアさんは厳しく少しでも男っぽいことすると注意されるし、かわいい女の子の服着せられたり、なぜかリフィアさん
がはぁはぁ興奮してたり、あれは恥ずかしすぎて悶え死にそうだった……。
でもそのおかげでだいぶ女の子らしくなったと思う。まだときどき一人称が僕になってしまうが……。心の中でもわたしにすべきなのかもしれないが、唯一残っている男の子らしいところでもあるので、あえてそのままにしている。
「何か質問はありますか?シーナお嬢様」
「精霊と契約するとどうなるんでしょうか?」
「通常の魔法とは別の精霊魔法が使えたり、精霊の加護を受けたりできます」
「それってわたしにもできますか?」
「今はまだできません。無契約の精霊は精霊島に行かないといませんので……、中には例外もいますが」
精霊島とは世界樹があり、新しい精霊が生まれ、たくさんの精霊がいることからそう呼ばれるようになったらしい。
「そうなの……?残念……です。精霊と仲良くなりたかったなあ……。……しょぼーん」
小さい時から精霊とか妖精そういうのに憧れていて、精霊が会えるかもしれないと期待を膨らませていた僕は落ち込む。
「そんなに落ち込まなくても……三年後には精霊島にいけますから……。」
「三年……か……。…………はぁーー」
「……会うだけならシルヴィア様の契約精霊なら……」
「…………ほんと?」
顔を上げリフィアさんを見つめる。
僕は単にリフィアさんの方を見ただけだったのだが、リフィアさんから見れば子供の期待に満ちたきらきらしたような目で見つめられてるのであった。
「うっ……でっでも、精霊は気にいった相手にしか姿を見せないから必ず会えるとは限りませんよ……」
「うん、わかったよ」
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「私の精霊と会いたい……?」
「はい、お母様」
きらきらきらきら。
「うっ…………。でも……私の精霊は私以外に姿をあまり見せたがらないわよ」
「でも……、お願い。精霊さんに頼んでみて」
きらきらきらきらきらきらきら。
「わっわかったわ……。……シェリス?ちょっと出てきてくれる……?」
《……シルヴィア?どうかしたのか?》
そこには誰もいないのに頭に響くどこか心地よい女性の声。
「ちょっと娘に会ってほしいの」
《私はあまり人前に出るのがいやなんだ。お前だって知ってるだろう?》
またしてもどこからか聞こえる謎の声。
「そんなに恥ずかしがらなくても……。ねえ……お願い」
《いくらお前の娘でも……》
「精霊さん……お願い」
「《!?》」
「シーナちゃん……まさかシェリスの声が聞こえるの?」
《なぜこの子どもに私の声が……?》
「えっ?だってさっきから……」
「あのねシーナちゃん……、姿を現せてない状態で声を聞くことができるのは契約者かほかの精霊だけなのよ」
「でもわたしにも聞こえたよ?それになんだかうっすらだけど青い人の形した光みたいなのが見えるような……。もしかしてこれが精霊さんなのかな……?」
「《!?》」
《そんなはずは……ならば……》
すると先ほどの青い光が急に強くなり目の前を覆い、思わず目を閉じる。
目を開くとそこにいたのは……、青く光る透明な人のようなもの。背中には六枚の光の羽が生えている。
「精霊さん……?」
目の前にはさっきよりもはっきり見える人の形をした青い透明の光があった。
それはとても美しく神秘的で、そのあまりの美しさに思わず目を奪われてしまう。
〈この感じ……まさか!? ……いや考えすぎかな……それにあの方は……〉
「シェリス?」
〈……いや、なんでもない……。……ちょっと知りあいに似ていると思っただけよ……〉
「お母様、この人が精霊さん?」
「ええそうよ。私の精霊のシェリス。属性は水の上級精霊よ」
「すごいっ!きれい……」
〈きっきれい?私が……?〉
「そうよ、シェリスは十分きれいでかわいいわよ。いつも言ってるじゃない?。だから恥ずかしがることはないわよ」
「わたしもそう思うよ。だってこんなに神秘的できれいで……」
〈くっぅぅ…………そ、そんなことないっ……、……からかわないでくれ〉
また一瞬光るとシェリスさんは消えてしまう。
「からかってなんかないのに……。シェリスは恥ずかしがり屋さんねえ……」
「わたしも早くシェリスさんみたいなきれいな精霊と契約したいな……」
「シーナちゃんならきっと必ずできるわよ」
〈しかし……あの魔力の波動はやはり……。いや……でも……気になるわね……〉
これからは少しペースを落として質を上げていきたいと思います。更新は二日に一度くらいかな……?。