第七話「守るための力Ⅱ」
少し改稿しました。
「まさかこの歳で……これほどの魔力を持っているとは……」
あの後駆けつけた父さんに書斎までつれてかれ、何があったのか説明をした。
ちなみに防御結界は母さんがすぐに直してくれた。
「ごめんなさい……。……広場がめちゃくちゃになってしまいました……」
…………しゅん。
「怪我はないか?」
「えっ……はい……」
「ならいい。魔力をちゃんと制御できるようになるまで魔法の使用を禁ずる」
「で、でも……」
「エリスを守るのだろう?たしかにお前はそれに足りうる力がある。だが、その使い方を誤れば逆に相手を傷つけてしまう、自分自身もだ。力とはそういうものだ。わかったな」
「……はい、わかりました……」
「わかったのならそれでいい。もう行ってよいぞ」
バタン。
僕は父の書斎を出る。
書斎に残された父ともう一人。
「アル……ほんとに親ばかねえ……」
「おっ、……いたのかシルヴィ」
「ほんとに娘には優しいのね。きつく言ってるようで娘の心配ばかりして」
「そっそんなことはないぞ。それに……そういうならお前だってそうじゃないのか?シーナが帰ってきたとき号泣してたじゃないか」
「うっ……。そりゃ……愛する娘ですもの。……お互い親ばかね」
「そうだな……」
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僕が甘かった。
自分にも資質があるとわかって浮かれて、そしてこのざまだ。
こんなんではエリスやみんなを守るどころじゃない。もっとしっかりしないと。
力があってもそれだけじゃだめだ。正しく力を使うためにもこれからは魔法だけじゃなく勉強も疎かにしはできない。
「はあ……」
「シーナお嬢様」
「リフィアさん……」
「ほら、落ち込まないの。もうすぐお昼ごはんよ。ごはん食べて元気だして、午後から勉強がんばりましょう」
「子供扱いしないでよ。僕は食べ物なんかに釣られたりしないよ」
「あなたの大好きなハンバーグだってありますよ」
「うぐっ……。そっそんなことない……」
「目が泳いでますよ」
「う~~~~、わかったよ。どうせ僕は食いしん坊ですよ……」
「なら、早く行きましょう、お嬢様」
そういえば……たしか夢であったあの子もハンバーグ好きだって言ってたな……。
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「エリス…………」
「なあにお姉ちゃん?」
昼食をとった後、僕は今エリスの部屋にいた。
そこにあるのは……、ピンク、ピンク、ピンク、ピンク、ピンク、ピンク、ピンク、ピンク。
カーテンやらベッドやらタンス、あらゆるものがピンクである。
あと部屋中を埋め尽くすたくさんのぬいぐるみ……。なぜタンスやクローゼットの中までぬいぐるみで詰め込まれているのだろう。女の子の部屋といってもこれはさすがに……。
ここに来るのはすでに10回目以上だが、いまだにこれにはなれない。
ちなみに僕の部屋は意外と普通だった。ぬいぐるみや女の子らしい小物など置いてあるものの普通の女の子の部屋って感じだった。いや……実際女の子の部屋を見たことはないのだが……。
実際、最初僕は普通の部屋で良かったと思っていた。机の引き出しを開くまでは……。
出てきたのはまず日記。ここまでは女の子の部屋なんだし普通だと言える。
…………がっその中身に問題があった。開いた瞬間、僕は絶句した。
毎日、毎日、今日エリスはこんなことしてかわいかったとか、思わず抱きしめてそのまま自分の部屋にお持ち帰りしたとか、頭なでなでしたときの笑顔がたまらないとか、ひたすらエリスのかわいさや容姿を褒める詩や文章が書かれているのはなぜだろう。しかも一日まるまる見開き一ページびっしり使って。ほかにもエリスの成長記録とか大量の写真とか諸々。
僕はリフィアさんに目覚めた場所や状況などを話して相談した。
あの謎の女の襲撃者とラクタムとかいう男。この二人についても聞いてみたが、どうやら昔、ソフィネット家はあまり良くないことをしていたようだ。水、光魔法の優れた者の多いソフィネット家は代々回復薬、治療薬などを売って、今の名門と呼ばれるほどの地位についたらしい。
そして10年ほど前この地方で感染症が広まった際に、その感染症の治療薬を高額で売りつけたらしい。
それは貧しい農村の人達にはとても買えるものではなかった。自分の領地のいくつかの貧しい農村では感染者が溢れ、挙句の果てに感染症の蔓延を防ぐためといってその農村の人達を皆殺しにしたらしい。
当主が現在のアルバート・ウィンドル・ソフィネットに変わってからは、回復薬、治療薬などは可能な限り価格を下げ、貧しい農村にも行き渡るようになった。しかし、いまだにソフィネット家を恨んでいる人の数多くおり、襲撃者はその一人の可能性があるとのこと。また3年前の賊の襲撃もその者達によるものかもしれない。
ラクタムという男の方はリフィアさんもわからないらしく、何者なのかどうして僕を助けたかはわからないままである。
これはソフィネット家つまり、エリスや家族のみんなの安全にも関わることなので、今後警戒していかねばならないだろう。
あと僕とシーナことについても聞いてみた。仮説ではあるが一度僕、シーナは死んで(ただし身体は保存されて)三谷海斗として生まれ変わり、そしてまた死んだ僕の魂が元のシーナの身体に戻ったのはではないだろうかと言っていた。それならブレスレットが反応するのも、エリスの名前を覚えていたのも全て辻褄が合う。
エリスの名前を覚えていたはもしかしてこの異常なまでなエリスへの愛故か……。僕が三谷海斗としての記憶を持っていたのは死んですぐだったからではないかということ。
そうすると僕は本当にシーナ・ウィンドル・ソフィネット自身であり、しかも僕は前世の自分に恋していたことになる。叶わない恋という点ではもしかしてこれは失恋となるのだろうか……?
………………………………。
それにしても前世のエリスへの感情や名前を覚えていたなんて、それに引き出しの中のカオスな中身といい、以前の僕はどれだけシスコンだったんだ……と思った。いや、でもエリスの方もかなり懐いてるからいいのか……?
「お姉ちゃん、どうかしたの……?」
どうやら僕は長い間、考えるのに集中してしまっていたようだ。
「え……あーー、ごめんちょっとぼっとしてた。なんでもないよ」
「そう……?本当に……?」
僕を心配してか、顔を上へ向け僕を見つめる。そのまん丸とした目をうるうるしながら。
う~~かわいいっ!抱きしめて頭なでなでしたいっ!
その手をエリスへ伸ばそうとする。
「はっ!ぼっ……わたしは何を……?」
しゅん……。
エリスは残念そうにその可憐な顔をゆがませ、そのつぶらな瞳を曇らせ。
やめてくれ……それは反則だ……。
あぁ~~~~。耐えるんだっ僕っ、負けるなっ…………。耐えるんだっっ……。
だきっ……。
ぎゅうぅ……。
なでなで……。
耐えられませんでした…………。
結局、身体の奥底から溢れるこの激しい衝動には耐えれませんでした。
エリスはこれ以上の幸せはないといった笑顔をし、僕の胸に頬をすりすりしてくる。
しょうが……ないよね……。こんな顔されたら誰でもふつう…………。
結局、僕たちはリフィアさんに午後の勉強の時間になり、呼ばれるまでずっとこのままでいた。
PV一万突破っ!
たぶん……特にすごくないです。
めざせっPV十万突破っ! やっぱり夢はでっかく……。
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