出会い:葛視点
あとでなおします。
9月17日、この男の子のモデルにした人が誕生日でした。
教えてないから絶対見ないであろう…ふふ。
けーくんおめでとう。
「かずらさん~」
名前を呼ばれて顔をあげる。
視線の先に、先日知り合ったばかりの啓人、という青年がいた。
彼は…一言でいえば、憎めない奴。
外見は、亜麻色の髪に色が白く、中世的だ。
年よりも落ち着いているように見えて、甘え上手。
そして、たまに見せる色男のような言動。
色めきたつ若いナースの気がわからないでもない。
「啓人くん。今日はどうしたの。」
思考がおかしな方向に行く前に頭を振り、彼に質問する。
「病室いてもヒマ。遊びに来た」
入院しているんだよね、この人。
と葛は思うが、あえて他の言葉を啓人にかける。
「て言っても、来週まで何もないのに。」
患者向けの図書室は、次の月曜からの公開だ。
この病院は、以前は本のある部屋と言えば、
子ども病棟に遊具と絵本のある部屋と、医療専門書が並ぶ図書室のみ。
大人の患者向けには、提携した図書館から職員が来て、貸出していた。
その実態を見た本好きな院長が
「1年の大半を病院で過ごす患者さんも多いのに、
本と言う娯楽がないのはおかしい!」
と言いだし、患者用の図書室が設けられることになる。
そして、この不況の中に運よく司書として雇われたのが、葛である。
「お昼なに食べたん?」
「いや、まだ…。」
明日からの準備をしていたら、時計を見ることを失念していたらしい。
啓人にうながされて時計を見る。昼はとうに過ぎていた。
「やと思った。
食堂のおばちゃんが、時間内に来らんかったゆうて、心配しとったで。」
「あ~」
食堂は、この病院の人たちにとって憩いの場だ。
ちなみに食べ物の持ちこみは可。
職場はほとんど一人のため、
食事や休憩時は、人の集まる場所に行き、話しをするのが日課になっていた。
いい大人が、さびしがり屋もたいがいにしないとなぁ、
葛は足の屈伸をしながら考える。
「かずらさん、お弁当?」
「うん。」
今日は早起きできたので、自分で作って来ている。
「ほんなら、中庭で食べや。あったかいで。」
啓人の親指の先、窓から外を見る。
春の陽ざしが、中庭の全体を照らしている。確かに暖かそうだ。
「そうしようかな。」
その陽気にふれたい衝動にかられ、今日は中庭にて食べることにした。
「ほい。」
「?」
紙パックの飲み物を渡される。
「購買のおばちゃんから。ちゃんと飲むのやで?」
「…はい。」
なんか、子ども扱いされた気がしないでもないが。
渡されたものを素直に頂くことにする。
このままで引き下がるのもなんなので、後で仕返しをしようと、決意して。