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偶然の

お久しぶりです(笑)

久しぶりすぎてつたないかも…その時はすみません。

薬品のにおいが染み込む廊下に、

キョロキョロとあたりを見回す影がある。

「せっちゃん、どこや~?」

廊下の先から、くすくす。と小さな笑い声が聞こえてきた。

そちらに顔を向けながら、人影がへとへとの声を出す。

「もう俺、見つけんのムリ。せっちゃん、かくれんのうまいなぁ?」

しかし足取りや姿勢に、言うほどの疲れはみられない。

どうやら。探している相手に油断させ、驚かせるつもりのようだ。

事実、誰にも聞こえない声量で

「…ぼちぼち見つけてもええかな。きっと書庫やろ。」

と呟いている。



そうして、あたりをつけた書庫へ来た時だった。


―ドサドサドサっ


明らかに、重いものが落ちた音がする。そして、音のした方向は。

「…!せっちゃん!」

彼が急いで駆けつけてみると、髪の長い人が小さい女の子をかばっている。

まわりには本が散乱していた。

赤巴せきはちゃん。こんにちは。」

薄暗くてよく見えないが、声と髪の長さから女性だとわかる。

その人は女の子を抱き上げ、のんきにあいさつしている。

せきは、と呼ばれた女の子を認めた彼は、ホッとして近寄る。

「すみまへん!ほら、せっちゃんもありがとうとごめんなさい、は?」

助けてくれた人に、せきはが顔を近づけ内緒話をするようなしぐさをする。

暗さに慣れてきた目で見ていると、

せきはに応じて耳を近づけた人は、せきはの話を聞いて破顔する。

「うん、いいよ。無事でよかった。」

せきはの頭をポンポン叩きながら

「でも、ここはあぶないから。かくれんぼに使っちゃだめだよ。」

と地面に下ろす。すると、女の子が小さくつぶやいた。

それが彼女には聞こえたのだろう。

「おおきくなったら、ね。」

と女の子を抱きしめ、嬉しそうに、頭をぐりぐりとなでる。



「で、えーと」

今更だが、見ない顔だと彼は気づく。

ナース服も、事務の制服も着ていない。

怪訝な声にハッとして、立ちあがりながら

「あ、ここで司書をやっている垣内葛かきうちかずらです。

よろしくお願いします。」

と自己紹介をする。

そこで彼は、少し前に看護士さんが言っていたことを思い出す。

確か、患者用の図書室を創設するため、新しく雇われた人だ。

『きれいな人だし、気さくだから患者さんに人気なのよ~』

その時の話を思い出しながら、彼も自分の名前を言う。

「ここに入院している、狭山啓人さやまけいと言います。

あと俺、学生です。年う…同じくらいやし、タメ口でええですよ。

~~てか、俺もしゃべりかたこっちでええやろか?」

はじめは、訛りが入った標準を話していたのに

最後はいつもの話し方へと、崩れていく昭人。

「ふふ。どうぞ。」

そのことと、年上、と言おうとして直したことがおかしかったのだろう。

葛は了承しながら、肩をゆらしている。


ひとしきり笑うと、何かに気づき手首の時計を見る葛。

「―――と、せきはちゃん。そろそろ点滴の時間じゃない?」

啓人とせきはに、腕時計を見せて時刻を教える。

「おお、せや。せっちゃん、いこか?」

おびえたように、首を振る少女。

点滴の針が怖いのだろう。

その様子を見た葛は、先程の散らばった本の中から絵本を持ち

表紙を見せると、口を開く。

「せきはちゃん。がんばったら、また本をもって行くからね。」

その言葉に反応したせきは。

しぶしぶといった様子で、書庫を出るのだった。



「せっちゃん。あの人、きれいやね。」

病室に戻る廊下を辿たどっている時、啓人が言った。

長い髪が艶やかで、その隙間から見えた顔はすっきりとしていた。

きれいで、あたたかな笑顔をする女性ひとだった。

(ま、俺の好みとちゃうけど。)

ひとりごちていると、せきはが勢いよく顔を上げた。

「―――っっ!」

「ん?なに?」

聞き取れなかったので、しゃがんで聞き返す。

『かずらさんを、とっちゃダメ。』

「…。」


ほんま、


かわえぇなぁ。


「わかった。でも、おともだちにはなりたいなぁ。ええかな?」

小さくうなずく、せきは。啓人がその頭をなで

「本、たのしみやね?」

と言う。ちいさな女の子は、今度は首を大きく、縦に動かした。




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