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ツンとバレンタインっ!!

作者: 守月 淼

ノリ全開で書きました(笑)

「――ってば、――う、紅!!、ねえ、起きなさいってば!!!!」


そう朝早くから頭上から朝早に相応しくない大きな声が響いた。


「ん、んん」


俺は顔をしかめてぼんやりと目を開けた。


すると、そこにはやや紫がかった髪の毛をツインテールにし、やや釣り目がちではあるものの、整った顔立ちにふっくらとした桜色の唇の美少女がそこにいた。


「もう、やっと起きたわね!!、もう8時よ、あと30分しかないじゃない!!」


「わかったから朝からその大きな声で騒がないでくれ鮮花あざか。脳に響くから・・・・」


「大きな声とはなによ!!、毎度起こしているコッチの身にもなりなさいよね、大変なんだから」


「いや、別に頼んじゃいないんだけど・・・・」


「別にとはなによ!!、私は幼馴染のよしみで起こしてあげてるんだから感謝ぐらいしなさいよね!!」


「あ~、はいはいサンキュー」


「じゃあ私は下で待っているから、二度ねなんかしたらぶん殴るからね!!」


そう言って鮮花は下に降りていった。


とまあ今のが俺、長瀬紅ながせこうのいつもの朝の風景だった。


ちなみに朝から大きな声を上げたり、物騒なことをのたまっていたのは凛上鮮花りんじょうあざかで、腐れ縁で、幼稚園からの幼馴染。


最初はやさしい奴だったのに、いつからかツンとした態度がデフォルメになってしまった鮮花は何かあれば殴ってくるし、大きな声を上げて追いかけてくるから困ったもんだ。


まあ根はやさしい奴だからなんだかんだ言って好きなんだけどな。


とまあ説明はこのくらいにして、鮮花を待たせるといけないから、俺は手早く学ランに身を包み、鮮花に貰った赤いマフラーを首に巻くと、鞄を掴んで下に降りて、洗面所に行き、顔を洗ったり歯を磨いた後、台所に行ってパンとかを適当に胃に牛乳で流し込むと急いで玄関を出た。


「遅いじゃないの!!、五分も待ったわ!!」


「ゴメン、ゴメン」


「む・・・、わかればいいのよ、わかれば・・・・・」


そう言って不機嫌な顔から一転してバツの悪そうな顔になった。


コイツはすぐ怒るが、ちゃんとすぐに謝ればちゃんと許してくれる。

まあそれに気づくまで言い訳とかしてたらよけい殴られたりして大変だったんだけどな・・・。


そうして俺達は学校に向けてゆっくりと歩きだした。


今日は二月にも関わらず、気温がかなり下がっていて、白い息が出るほどだった。


「いや~、今日は寒いな~。マフラー巻いてきて正解だったな」


「そうね、確かに寒いわ・・・。私も持ってくればよかったかしら」


「貸そうか?、俺のマフラー?」


「い、いらないわ!!、紅のなんて・・・」


そう言って強がっているものの、鮮花は手が霜焼けしていたし、はぁはぁと白い息をはいていたから、かなり寒がっているのは俺にはお見通しだった。


「ほら」


「あっ・・・///」


俺は寒がっている女の子を放っておくほど気が利かない奴じゃあないから鮮花の首に自分のマフラーを巻いてやった。


「暖かいだろ??」


「う、うん、あっ、ありがとう・・・・・/////」


そう言って鮮花は少し赤く染まった頬を隠すようにマフラーの中に顔をうずめた。


「そ、そういえば紅。アンタ今日が何の日か知ってる??」


「今日??、さあ、なんかあったかな??」


「し、知らないならいいわ・・・。で、あ、あのさ、今日どうせアンタ暇でしょ??」


「まあな、あ、でも委員会あるかも」


「じゃ、じゃあそれが終わった後でいいわ。私校門の前で待ってるから来てよね!!」


「あ、ああ、いいけど、ほんと遅くなったら先に帰っていいから」


「い、いいから!!、私待ってるから!!」


そう言って鮮花は顔を俯かせた。


俺は鮮花の態度が気になったけどいつもの買い物に付き合って欲しいとかだろうと思って特に気にしなかった。








◇◆◇◆◇◆◇









そうして俺は大したことのない会話を交わして学校に着いた、そして学校用のシューズを取り出そうとすると、


「ぅお!!」


俺は思わず騒いでしまった。


というのも俺の靴箱にはすでに5,6個くらいのそれぞれ可愛らしい包みの箱が置いてあったからだ。


そこでやっと俺は思い出した。


―2月14日、バレンタインデー


好きな人へチョコレートをあげる、そんな特別な日が今日だったと。


俺れが驚いていると鮮花が俺の靴箱を覗き込んできた。


「どうしたのって・・・・、うわぁ相変わらずモテるわね・・・・」


「み、見るな!!」


そう言って俺は恥ずかしさとその他もろもろの事情で鞄に急いでそれらを突っ込むとバタンと勢いよく靴箱をしめた。


「な、何よ見るくらいいいじゃない・・・・・」


「嫌だ。恥ずかしいだろうが」


「ケチ・・・・・」


「またこの日が来たのか、はぁ、机の中とかもあるんだろうな・・・・・」


「いいじゃないの、たくさんの人からもらえて・・・・、はぁ・・・、これじゃあ私のなんて・・・・・」


「ん?、どうかしたか??」


「な、なんでもないわよ!!///、それよりマフラー、返すわ」


「あ、ああ」


「それじゃあ私先に教室いってるからっ!!」


「おい、ちょっと待ってて」


鮮花は俺の制止も聞かずにそのまま頬を赤く染めて脱兎の勢いで駆けていった。


「ったく、なんだよ鮮花」


俺ははぁと溜息を一つすると、ゆっくりと教室まで歩いていった。









◇◆◇◆◇◆◇









昼休み、俺は精神的に疲れて机で突っ伏していた。


そんな俺にニヤニヤとした顔で、


「なぁ、なぁ紅、今年はいくつだった!?、いくつだった!?」


そう言って目の前の少し長めの髪の眼鏡をかけた藤原雄作ふじわらゆうさくが机の上で精神的に疲れてぐた~としている俺に声を掛けてきた。


「12だよ、はぁ、まだ直接渡すやつもいるからもっと増えるだろうな・・・・・」


「さっすが紅!!、いや~爽やかイケメンはちがいますな~、俺なんて1個だぜ」


「いいじゃないか、彼女のだろ??」


「まあな、でもさやっぱ憧れるじゃん、溢れんばかりのチョコ」


「実際貰う身になってみろ、マジで精神的にくるぞ・・・・」


「はぁ、これだからイケメンは・・・・」


「あ、あの、長瀬くん」


と雄作と話していると、サイドポニーの美少女が話し掛けてきた。


「ん?、どうした??、遠山さん」


「ちょっといいかな・・・」


「ほらほら、紅さんお呼びだぜ」


「はいはい・・・・」


そう言って遠山に呼ばれるがままに教室を出た、途中鮮花が不安そうな、寂しそうな顔で見てきているのが気にかかったが、呼ばれているから後ろ髪引かれる思いで、教室の外に出た。


「んで、俺に何か用か遠山さん」


「あ、ああの・・・・」


そう言って遠山さんは顔を赤くしたまま俯かせて、しばらくすると決心がついたのか俺の顔を見つめると、


「あ、あの!!、私のチョコ受け取ってください!!」


と言ってきた。


実にこれで直接言われるのは5回目なのだが俺の答えは決まっていた。


「ごめん・・・、気持ちはうれしいけど、受け取れない」


「えっ・・・」


「本当にゴメンな。んじゃ、そういうわけで」


そう言って、唖然としている遠山さんに申し訳ないものの急いで教室に戻ってきた。


「おっ、お帰りって・・・・・、また貰わず帰ってきたのかよ!?」


「ああ」


「ったく、あれだけの美少女にもらって何が不満なのかねこのクソイケメンは!!」


「あいつは・・・」


そう言って俺は鮮花のほうに目を向けるとしょんぼりとした顔で飯を食っていた。


「それじゃあ、また全部返すのか?」


「ああ、そうだ・・・」


「何でそんなことするのかねぇ、俺には理解できないよ」


「うるせ・・・、なんでもいいだろ・・・」


「はぁ・・・、まあお前のことだからお返しが面倒臭いとかその辺りだろうけど、あんま女の子泣かすなよ、そのうち刺されるぞ」


「わかってるよ・・・」


そうしてその後も何人か声を掛けてきたもののおれはすべてNOと返事を返した。


どうして俺がこんな風に毎年貰っているチョコを全部返すのか、理由は単純明快、―つまりは“あいつ”が好きだからだ。


確かに貰ったら嬉しいし、実際中二まではちゃんと貰うものは貰っていたし、お返しもしていた。


けど、そんなことをしているうちに何処か『こんな気持ちで他の人から貰ってもいいのか』と思えてきて、なにより“あいつへの気持ちを裏切ってるんじゃないか”という気がして、それ以来俺は貰ったチョコを全て返すようにしている。


もっともあいつから貰うチョコはいつも“義理”なんだけどな。









◇◆◇◆◇◆◇








そうして放課後になった俺は貰ったチョコを一つ一つ本人に返し、半分も返せていなかったが時間が押し迫ってきていたから委員会へ行くことにした。


そして委員会が終了する頃にはもう六時で辺りは薄暗くなっていた。


俺は残りのチョコを返すべくして、はぁと溜息を吐きつつも、返していった。


そうして、やっとのことで返す頃には、もう外は完全に真っ暗で、時刻7時半を差していた。


「はぁ・・・、やっと全部返せた・・・」


そうして俺は下駄箱まで行って靴を履いて外に出ると、夜になって結構冷えてきて「寒っ」といいつつ、マフラーに顔を埋めて、早く暖かい家に帰るべくして足を進めたのだが、校門を見てその足はピタっと止まってしまった。


「な、なんで・・・・」


俺の目の前、つまりは校門の所には何時から待っていたのか鼻と手を霜焼けで赤くし、『はぁ、はぁ』と手を合わせて白い息を吐いている鮮花がいた。


「っつ、あの、馬鹿・・・」と俺は舌打ちをしながら、急いで鮮花の元へと走っていった。


そして俺が近くに来ると、気が付いたのかこっちに目を向けると、一瞬安心した顔をしたあと、顔を少しばかり染めて上目遣いで睨んできた。


「お、遅いじゃないの!!」


「ご、ごめん・・・・・」


「1時間半も待ったわ!!、寒いし、知らない男子から声かけられたし、お腹も減ったし、それにそれに・・・・・」


そう言って言いたいことを巻くし立てた後、いきなり押し黙って、鮮花は顔を俯かせた。


そうしてしばらくした後、俺は無言で自分のマフラーを鮮花に回してやって、制服の上着を脱ぐと着せてやり、すっかり冷えてしまった手を握ってやった。


「これでどうだ・・・・??、寒くないだろ??」


「男子に絡まれたのは・・・・??」


「それは・・・、まあ、ごめん。次からちゃんと早く来るし、余計な男が寄り付かないように一緒にいてやるから」


「まっ、まだお腹がすいてるもん・・・・」


「じゃあ、おごってやるから」


そう言うと、鮮花は再び押し黙ってしまった。


俺はこのままでいるのもあれだから、鮮花の手を握ったまま歩くことにした。


そうして、しばらくむず痒いような沈黙が続いた後、急に鮮花が


「ね、ねえ、今日何個チョコ貰ったの・・・・??」


と聞いてきた。


俺はしばらく考えた後、


「ん~、“0個”だよ」


と答えた。


すると鮮花が


「嘘つき!!、だって今日下駄箱にも入ってたし、何人にも呼ばれていたじゃない・・・・」


と怒ったように言った。


俺は鞄を開けて教科書や筆記用具しか入ってない中身を見せて、肩をすくめると、


「ああ、あれか。あれはだな、下駄箱のは右隣の奴のだったんだよ、んで呼ばれたのは俺こう見えても顔広いからさ、『だれだれ君にあげて来てくれない?』って頼まれたんだよ。つまり俺は一つも貰ってないんだよ。あ~あ、また今年もだよ、俺って何でこうもモテないかな・・・」


と少々行き過ぎかなと思いつつもワザとらしく答えた。


すると鮮花は驚いた顔をしたあと、顔を俯かせて何か考えるような顔をした後、ゆっくりと顔を上げて、俺の顔を見つめて、


「ほ、本当に・・・??」


「ああ、本当。しょせんお母さんと祖母ちゃんに貰う程度だよ・・・・」


と答えた。


そして鮮花は頬を染めながら鞄から可愛い包装の包みを取り出すと、


「じゃ、じゃあ、しょ、しょうがないわね・・・、かわいそうな紅にあげるわこのチョコ////」


と言って手をプルプルさせながら渡してきた。


「あ、ありがとう、鮮花。マジでうれしいよ」


と俺が満面の笑みで答えると、


「ぎ、義理なんだからね!!、勘違いしないでよね!!/////」


と顔を真っ赤にさせながら言ってきた。


俺は鮮花の不器用さに苦笑しつつも、


「義理でもうれしいよ、なあこの包み開けていいか??」


と尋ねた。


「ええっ!!、いいけど・・・・、上手くできてないかも・・・、それに、ごにょごにょ・・・」


「お、じゃあ開けるな」


と言って鮮花が何か言い終わるうちに丁寧に包みを解いて、箱の蓋を開けるとボール型のチョコレートが中には入っていた。


俺はその一つを手に取ると


「ああっ、でもそれ私の手作りだから美味しくないかも・・・・」


という言葉を受け流しつつ、口に運んだ。


すると口のなかでとろけ、甘さが控えてあったが、十分に美味しかった。


「おおっ!!、美味いぞ鮮花!!」


そういうと鮮花は不安そうな顔から一転して嬉しそうな顔をして、


「ほ、・・・本当!?、よ、よかったぁ・・・・・/////」


と顔を赤くしたまま答えた。


そうして、歩きながら鮮花のチョコを全て完食すると、箱を鞄に入れると、赤い顔をしたままの鮮花に話しかけた。


「はぁ、美味しかった・・・。なあ鮮花・・・」


「な、なによ・・・・///」


「来年も俺が誰からも貰えなかったらくれないか??」


俺がそう言うと鮮花は頬は染まったままだけど、いつもの自信溢れる顔になり、


「し、仕方ないわね・・・、紅は幼馴染だから作ってあげるわ!!////」


と言った、俺はその返事に鮮花らしいなと思いつつも、心の中で苦笑した。


そして、鮮花の手を強く握り直すと笑顔を向けて、


「ん、じゃあ約束な」


と言った。


鮮花は顔を真っ赤にして俯かせると、


「う、うん、わかったわ・・・/////」


と言って俺の手を同じように強く握り返してくれた。


そして俺達は寒い中、二人手を繋いで約束通りファミレスまでゆっくりとお互いに歩調を合わせるように歩いていくのだった―――――。


いかがだったでしょうか??

完全にノリと勢いだけで書いてみました。

この小説を書くきっかけとなったのは知り合いとバレンタインの話になり、知り合いの友達がチョコレートをもらったときに「義理なんだからねっ!!」と言われたらしいというのを聞いて、何処かびびっと来てしまって、思わず書いてしまった次第です。

ちなみにこれは読みきりみたいな物なので、連載する可能性もなかったり・・・、あったり・・・。

でも、短編のリクエストなら受けてもいいかと思ったりもしています。

言い忘れていましたが、作者はツンデレかなり好きです。

最後にこの拙い小説を読んでくれた皆様有難うございます。

では、またの機会まで!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] うぅ……最高傑作です。ツンデレな彼女が可愛い~っ! 是非是非連載を!! [一言] コイツはすぐ怒るが、ちゃんとすぐに誤ればちゃんと許してくれる……「誤れば」は「謝れば」ではないですか?
2010/09/03 00:05 第五航空艦隊
[一言] はじめまして、 “ツン”に吸い寄せられた読者です。 あとがきから突っ込みますが、こちらの友人にも同じようなことがありまして。……いや、あのセリフを冗談なしにマジで言われると結構くるそうで…
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