召喚《ガチャ》!!
【……………】
【ああ…貴方こそ、勇者様なのですね】
目を覚ますと…自分の足元に魔法陣の様な物が描かれており。恐る恐る目線を徐々にあげて辺りを見渡すと…。
自分を取り囲う騎士と魔導士そして綺麗なロング髪のTheお姫様が目の前に立
っていた。
【驚くのも無理ないでしょう…ここは貴方様の世界とは…】
戸惑う自分にお姫様の方から語りかけてきた。
そして姫の口から語られる自分が召喚された訳を……。
【オレは…どうやらこの世界に召喚されたらし…】
(スキップ)
【いちいち読むの面倒っ!スキップ!スキップ!まだかよ終わんねぇッスキップ!うっぜぇ!スキップッ!】
【私ッ、はっ、オル、リスア…です!】
開始早々…スキップしてしまった。
【長いんだよ導入!早くガチャ引かせてくれよォ゙!!クッソ!始まるまでが長過ぎ!!】
もうお気づきだろうが、これはゲームの中での話だ。
それでゲームストーリー導入シーンでキレているのは社会人2年目の社畜の男…清水行敏だ。
彼は通勤する電車の中でスマホを開いていた時…このゲームの広告が表示されて、ありがちな謳い文句に釣られこのゲームを始めたのだった。
【初心者キャンペーンですぐガチャ30連回せるって言うから始めたのに…ガチャ解放までが長過ぎなんだよ!】
毎年の用に新作ソシャゲは色々な広告を出すのだが、全てにおいて初動の伸びが肝心のため新規参入を狙って売り出すのが…。
【スタートダッシュ&XXXガチャPU】
ログインボーナス…DLキャンペーン…そしてガチャ石配布等など…ソシャゲを遊んだ事がある人間なら分かる"撒き餌"だ。
しかし単に石をばら撒くだけではすぐ離れていく…。
だからプレイヤーに長く遊んで貰うため…時に最強キャラをPUする。
【"あのキャラ"さえ当たればこのゲームは楽勝だぜ】
確率は極端に低いが引くことが出来ればゲームを簡単にスイスイとクリア出来る性能を持ったキャラが排出される。
そのためセリフをすべてスキップして、お目当てのキャラを入手した後…ゆっくりとゲームを参照する人もいる、清水もその一人だ。
【俺は全部クリアしたあとでゆっくりストーリーを読みたいタイプなんだよ!】
【勇者様これが召喚石です、手に持って念じて下さい。さすれば…貴方様の下に異界より舞い降りた従者が馳せ参じるでし】
【……………ポチ】 (スキップ)
長いゲームロードに耐え…やっと始まったと思ったら長い姫様の解説。そして待っていたのはウザいチュートリアルだった。
【これだからソシャゲは!!】
序盤に強いキャラを引くために何度もやり直す事になるのをリセマラと言い、何故リセマラをするのかと言うと…。ソシャゲは基本無料を謳っているが…唯一課金を促す要素があるそれは…。
【初期の報酬30個の石で勝負だァッッ!出ろよ!最強キャラ!!】
〈ガチャ〉である…。特定のキャラを入手する為に避けては通れない道…。キャラの排出確率は星が多いキャラになればなるほど下がっていく。そのためプレイヤーは大量に課金をする事になる。
【まずは石10個!…10連行くぞ!!……くそォ゙!爆死したァァァ!】
【広告に騙されたァ!何が無課金に優しいゲームだぁ?10連に1回は星3以上確定だぁ!?骨の騎士しか出ねぇじゃねぇかァァァ!!】
どんなソシャゲにも言える事だか、簡単にキャラを引けるなら苦労はしない…もしそんな事をしたら運営は絶対に儲からないだろう…。
【我が主に会えた事を光栄に思う…この身朽ち果てようとも、粉骨砕身で戦う事を誓う!!】
そんなガチャの爆死の嘆きを他所に従者となった骨の騎士はその場でひざまずき主《自分》に忠誠を誓うのだった。
【ガイコツのクセに無駄にいいキャラなのなんだよ!しかもvc有名声優だし!!】
【まあ、粉骨砕身と言ったが…私はもう骨だから笑えんな!ワッハハハ!!】
【うっせ!黙れ!】
狙いのキャラが引けず焦りが募る、既に20連を引いてしまいあと1回のチャンスしかない。
【頼むッ!頼むッ!………ッ】
ガチャの女神が微笑んだのか…その願いに応えるように段々ガチャ演出が豪華になっていくのだった。
【白っ!…金ッ!?】
星4以上が確定する演出が次々と発生する!一つでも出れば胸熱な展開が待っている、しかし狙いの最高レアキャラの星5の排出確率はたったの2%…しかも狙い撃ちとなれば排出率は0.2まで低下する。普通なら不可能な確率だが…奇跡が起こった!!
【ウソだろ…、虹になりやがった!?】
手に握りしめていた召喚石が虹色に輝き…召喚陣を起点に辺りを靄が覆い隠すように吹き出る。そしてうっすらと召喚陣の中に佇む従者の姿が映し出される。ただならぬ雰囲気だ、細身な身体に大きな斧を片手に真っ黒の鎧を身に纏い、鎖が全身に巻き付いているシルエット。
【マジかよ…コイツは】
召喚陣から吹き出た靄が少しずつ消えていく…そして自分が呼び出した人物を映しだすのだった。
【…私を呼び出したのは"貴様"か?非常に不本意だが、契約に則り従者となろう…感謝するのだな】
【黒の戦士〈アニカ〉】
なんと狙いのキャラを引くことが出来たのだった!!
【キサマは私を…使いこなせるか?呪われたこのッ】
(スキップ)
歓喜!そしてガッツポーズ!なんてことだ最後の10連で狙いのキャラを引くことが出来た。0.2%の壁を越えた瞬間であった。
【コイツが居ればこのゲームは勝った様なもんだな】
頭の中でドーパミンが分泌され興奮は最高値に達したソシャゲをやっている者にとって最高な瞬間であった。
【じゃあ…チャチャとこの世界救ってやりますか】
こうして手に入れた最強キャラを編成し、仕事の合間を縫ってストーリーを攻略し始めた。そしてキャラ性能をフル活用して中ボスを楽々と倒して回った…。勿論スキップしながら、そして物語は遂にラスボス戦へ。
【愚か者達よ…この魔の大地に足を踏み入れた事を後悔するがいい!我はッ】
(スキップ)
【勇者様とここまで辿りつけて俺ぁッ】
(スキップ)
【傷ついたら任せて!私聖女だから!】
(スキップ)
【うん、魔法は任せて最高火力見せてあげる】
(スキップ)
各地で仲間に加え苦楽を共にした「全ての会話をスキップしたので思い出はない」仲間達を引き連れて、遂に最終戦へと突入した。
【ここまで来れたのは皆のお陰だッ!さあ奴を倒して世界を救うぞ!!】
「「「おう!はい!うん!」」」
勇者《主人公》の掛け声と共にバトルに突入する、流石はラスボスと言った所だ身体に瘴気を身に纏っており生半可な攻撃では刃が立たないだろうが…。
【よし瘴気の攻撃半減だけか…なんと言うか最後にしては肩透かしだな】
普通なら旅の道中に手に入れた勇者だけが使える限定武器を使いなんとか魔王を討伐する所だろうが。これはソシャゲのゲームだ…すぐにキャラの"インフレ"がくるものだ。
ラスボス相手にそう言い切れるのはコイツがいたからだ…。黒き衣を纏いその細身に似合わない大きな斧…そのプレッシャーは計り知れない見た目だけで判断するなら魔王より魔王らしい風貌であったその者の名は【黒の戦士アニカ】ガチャで引いたキャラであった。
【私の敵は奴か…】
そう言うと不敵な笑みを浮かべ片手に斧を握り空に掲げ勇者の従者は無慈悲な攻撃を魔王に放つ。
【私の前に立ったことを後悔するが良い…闇の超新星!!】
(演出スキップ)
放たれた一撃は魔王に直撃して跡形もなく一発で木っ端にしてしまった、そうして他の仲間達の活躍もなく勇者の従者の攻撃よりゲームは終了するのだった。
【ふーやっぱ強えな黒の戦士は他の仲間の出番全くなかったぜ】
こうしてラスボスを倒しストーリーも全て終わらせたもうやる事は何もない…だから。
【すべて終わったし…やっとストーリー見返せるぜ】
ようやくストーリーを見れる準備が整った、メインメニューを開き過去のストーリーを観ようとした時…気が付いた。
【あっ!しまったラスボス戦に夢中で気づかなかったけどもう11時だ!明日4時から会社だった早く寝ないと】
ゲームに夢中で時間を忘れていた…プロローグから読みたい気持ちは凄くあるのだが…しょうがないので次の会社休みにストーリーをいっぺんに読む事を決め眠りにつくのだった…。
ここまで朗読ありがとう御座います‼️まだまだ続きます




