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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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だってわたし、一人暮らしだよ

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/07/28

蒸し暑い夏の日、当たり前にあるはずの「日常」が静かに崩れ去っていく――。一人暮らしの部屋で巻き起こる、背筋も凍る真夏の怪異を描いた怪談ショートストーリーです。

「だって私、1人暮らしだよ」

扇風機の首振りがカタカタと不規則な音を刻む、蒸し暑い夏の夜だった。

窓を少しだけ開けていると、遠くでシャーシャーと鳴く蝉の声に混ざって、ミーン、ミーンと妙に途切れ途切れな別の声が聞こえてくる。夜の蝉にしては、やたらと距離が近い。

(……気のせいよね)

冷たい麦茶を飲み干し、スマホに目を戻す。だが、音は消えない。それどころか、少しずつ大きくなっている。

ペタ……ペタ……

濡れた足音が、廊下のフローリングから響いた。蝉の声はもう聞こえない。代わりに聞こえるのは、荒い息遣いと、重い足音だ。

「……ねえ、エアコン壊れてるの?」

ぬるい風とともに、見知らぬ女の声が耳元でささやいた。驚いて跳ね起き、暗闇の廊下を見つめる。

「だって私、1人暮らしだよ……?」

声に出して自分に言い聞かせた瞬間、パチンと音がして、扇風機が勝手に止まった。静寂の中、今度はクローゼットの中から、コンコンと乾いたノック音が鳴り響いた。


     【了】

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

どこにでもある一人暮らしの部屋と、夏の必需品であるエアコン。そんな日常の象徴が少しずつ歪んでいく恐怖を描いてみました。

蒸し暑い夜、ふと部屋の隅が冷え込んでいると感じたら……どうかエアコンのせいだけにしないでくださいね。

皆様の夏の夜に、ささやかな涼をお届けできていれば幸いです。

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