表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑って許す……わけねーだろー 前座のモブ令嬢が卒業パーティの主役をさらってしまった件  作者: チョコころね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

8.モブ令嬢とスペシャルゲスト



 これだけ(マイナス)の視線を集め、嬉しそうに笑っているのは『聖女』ゆえだろうか?

 視線を浴びるのに慣れている筈の王家のご子息の方が、会場中から突き刺される何かを感じたのか若干身を引いている。


 名指しされたクロエ様は、おやおやという風に目を見開き、薄く笑った。

 その余裕のある様子に、『聖女のおねだり(コレ)』は、彼女には想定内の事だったのかと思う。

 クロエ様は胸に手を当て、軽く頭を下げて口を開いた。


「聖女様のご指名とはいえ、残念ですがお受けできかねます」


 この言葉で、会場の雰囲気は半ば和らいだが、王太子殿下がまた元気になってしまわれた。


「聖女を護るのは、臣民の義務だろう! ましてやロクサーヌは我が妃、王家の人間になるのだぞ!」


 そんな義務知らんわ――と言いたいところだが、神殿の説教の中には、有事の際は『聖女』を護り悪と戦う義務が我々にはある、という一節が流れてくる。

 遠い昔、この世には『悪しき存在』があり、聖女はそれを打ち滅ぼせる唯一の存在だった、という神話に基づいた話だ。


(今が有事かどうかはともかく、そこの聖女に悪と戦う力があるとは思えませんがね~)


 ソレは多分どうでもよい感じで、激昂する王太子殿下とは反対に、クロエ様はとても冷静に……爆弾発言を投下した。


「殿下のお言葉に、添う事ができないのは臣民として心苦しい限りです。ですが、そこに立っておられるブルトン侯爵令息のように、私にも誓いを立てた御方がおりますので……」


 え……

 え、

 えぇーーーー!!!

 会場中で黄色い声が湧きに沸いた。


「ま、まさかでしょ!」

「クロエ様が誓いを……!」

「嘘っ……!?」

「お、お相手は……!?」


 この国で『騎士の誓い』といのは、二種類ある。

 一つは、騎士団に入る際に、国と騎士団に忠誠を誓い、常に己を律し弱き者の為に戦うというもので、大抵の騎士は、生涯この誓いだけで終わる。


 もう一つは、先ほどから会場(ココ)で取り沙汰されているヤツで、ただ一人の主人(あるじ)に永遠の忠誠を捧げるという事を、捧げられる本人と見届け人の前で誓うというモノだ。

 ちなみに自分の知る限り、今までこちらの『騎士の誓い』を捧げられた相手は、ほぼ王家の人間のみだった。


(わざわざ調べた事はないので、正確なところは分からないけど……)


 国史の本に出てくるんで、ここにいるような人間は皆知っているハズ。

 だから、これだけの騒ぎになるんだろうけど。


 誓いを取り下げるには、騎士を辞めるしかないとも書いてあったので、色恋沙汰や出来心で誓えるものではないだろう。通常(フツー)は。


 クロエ様の宣言には私も驚いたが、騒ぎの中、ちらりと隣におられる公爵令嬢に視線を向けると、あまり表情を動かさないシルヴェーヌ様だが、目元口元がとても楽しそうに見えた。


(うーん……王太子殿下が、この方の手の上で踊らされているのは間違いないにしても)


 ……この方、何もかも全部知ってそうだよね。まぁ別にかまわないか。


 頃合いを見てクロエ様がすっと、片手を胸の前に挙げると、会場中の悲鳴がピタッと止まった。すげー。


「幼い頃から私には、騎士として王太子妃殿下にお仕えしたいという夢がありました。……ですが王太子殿下は聖女様を妃にするのでは? とのお話を聞かせてくれた御方がいました。聖女様にはブルトン侯爵令息という()()()護衛騎士が既におられますゆえ、私には入り込む余地(など)ございません……」


 クロエ様の表情が、憂いと自嘲を帯びたものになる。

 会場内ではうっとりとしている淑女たちの空気を感じるが、私は『芸が細かいな!』と感心するなどしていた。


「……悲嘆に暮れる私に、その御方は、ならば自分の騎士になってはくれないか? とおっしゃってくださったのです」


 それってシルヴェーヌ様じゃないのぉ?――と、私や、他にも視線を寄せている方々がいるようだが、ご本人の涼しい表情を見るとどうやら違うらしい。


「だ、誰だ! そんな不届きな情報を……そうか! シルヴェーヌ! お前か!?」

「違います」


 シルヴェーヌ様は王太子殿下の矛先を簡単に折った。


「私も父も、王太子殿下の日頃の行動を鑑み、婚約が無くなる事は間違いないと思っておりましたが、一応本日までは猶予がありました。王家に関わる事柄です。不確定な話は、おろそかに口外などできません」


 己がディスられていること等、全く気付かず王太子殿下は元気に言葉を返す。


「では誰だ!」

「それは……」


 クロエ様の言葉を遮るように、ゴ、ゴゴゴゴゴ……と重低音が響き、会場の出入り口が厳かに開いた。


 大きな両開きの扉を開いたのは、近衛騎士団の制服に身を包んだ、逞しい騎士たちだった。

 白に金色のアクセントを付けた制服に身を包み、精悍で逞しい騎士たちは、扉を開くと道を作るようにずらりと並んだ。


(騎士団の制服って3割増しにカッコよく見えるよね!)


 マッチョを崇める(ヘキ)は私にはないが、体格制服行動その他、キリっと揃った騎士団の動きに思わずうっとりする。


 皆が見守る中、陽の光を背に受け、彼らの作った道を入って来た……いや、コツ、コツと杖をつきおもむろに入っていらしたのは……


「私だ、マクシミリアン」

「お……」


 来訪者(スペシャルゲスト)の姿を目に映した王太子殿下のご尊顔は、『まだこんなにまぬけな顔ができたのか!』と、むしろ感心する位に崩れていた。


「お祖母(ばあ)様っ……?」

「そうだ。お前の祖母だよ」


 現れたのは、そこにいる王子の祖母、現国王の母の王太后殿下だった。

 王太后殿下は、灰色の髪をアップに結って大振りの紅い華を付け、同色のドレスに黒いアクセントを付けたものを纏っていた。


(うわー、()()()()みたいだ!)


 思わず前世の記憶が蘇る。

 親世代に愛された、昭和の歌謡界の女王様。

 彼女の最後のコンサートは伝説となり、TVで何度か流されたので、私も見る事ができた。

 病に侵されているとは全く見えない堂々とした歌と姿に、私も感動して歌を覚えてしまった。


(カラオケで歌うと上司受けが良かったっけ……)


 そのおかげで、昼の仕事だけでなくあちこちの接待に引っ張り出され、ストレスがマシマシになって髪が……まぁそんな過ぎ去った闇はいいとして。


 いきなり会場に現れた王太后殿下も、カリスマ性全開だった。

 王家の人間だから当たり前……でくくると、王太子殿下が『いと哀れww』なんで、これは彼女自身の特性もあるんだろう。

 皆がざっと身を引いて出来た道を、殿下は余裕を持って進んだ。


 自分は引退した身だからと、公式の場に出て来なかったので、私が初めて見た王太后殿下の印象は、小柄なのに『とてつもなく強そう』だった。




…『ひばり様』という自分の世代のヲタにはもう一人思い出す方がいたりする。

(あの方もドレスだったなぁ…)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
歌謡曲の女王様かな?
ストップ ヒバリ君?
不死鳥の女王様……っ!それはカリスマありますねぇ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ