もうきみも冷たいね
あーあ 遭難しちゃったね
ぼくは暑がり
だから、これは君が使ってね。
大丈夫だよ。だって、ぼくは暑がりだもん。
こんなに手が冷たくてもへいき。
こんな寒さだってへっちゃらだよ。
ほら、君のお手々はあったかくなるよ。
息を吹きかけて、手をこすれば。きっと、大丈夫。
こんな寒くても二人ならへいきだね。
外の真っ白な雪景色を二人で静かに眺めようよ。
「寒いね。」
コートを上げた後に君がうわ言のように言ってたね。
大丈夫だよ。君が寒いなら、マフラーも手袋も帽子も全部君にあげる。
君はとても色とりどりな格好になっちゃったね。ごめんね。君はこんなの嫌いだよね。
ぼくには優しく笑いかけることしかできないよ。それでも、君は悲しそうな顔だね。
「きみが使ってよ。」
大丈夫だよ。
だってぼくは暑がりだもん。
ほら、こうすれば君は嬉しそうに笑ってくれるもんね。
「ありがとう」
って。それだけで、いいんだ。
でも、そんな声がもうかすれて聞こえるね。
どうしてだろう。もっとはっきり言ってほしいな。
ぼくは暑がりだから。
こんな寒さ平気なのに、どうしてだろう。
お手々が震えちゃうね。もう腕が白っぽくなってきちゃった。
足も取れちゃったみたい。おかしいな。ついてるはずなのに。
目もよく見えなくなってきちゃった。うーん。
なんか、眠くなってきちゃった。
ごめんね。君を一人にしちゃって。ごめんね。
全部上げたかったのに。
それでも、君は満たされなかったのかな。
君はほんとうに欲張りだったね。
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キミは本当に馬鹿だったね。
小さな洞窟の中、私は静かに動かなくなったキミを眺めていた。
さっきまで元気だったのが嘘みたい。
私に全部渡すなんて馬鹿だね。
お外の景色みたく、真っ白になった死体を見ながら鼻で笑った。
あんな事を全部聞くなんて、本当に馬鹿だね。
私を包み込むように力尽きた死体をなんど見直しても、さっきまでの笑顔はなくただ白い死体しかなかった。
本当に馬鹿だね。
私を生かして、キミは寝ちゃって。
本当にひどいね。
私は死体の手をぎゅっと握ってあげた。
手袋越しから伝わったさっきまでの温もりは全部なくなってしまっていた。
キミからのマフラーも手袋も帽子もコートも全部全部冷たいよ。本当に馬鹿だね。置いていくなら、ちゃんと温めておいてよね。
そんな独り言を言ったって、何一つ変わらないのは知ってるけどさ。
あーあ。だれか、助けに来てくれないかな。
白い息はどこにも行かずに小さな洞窟を彷徨っていく。
キミがいなくなった洞窟では、ただただ静寂しか残らなかった。
もし、キミが少しでも私のことを頼ってくれたらさ。
もし、私が少しでも我慢できたらさ。
この洞窟も、もう少しうるさかったかな。
どんなに確認しなおしても、もうきみも冷たいね。
心ごと凍ってしまったのね。私みたいだね。
私は本当に寒がりだったね。
それでね お別れしちゃったんだ
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