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氷華

作者: 言紬 現

氷華は今日も妖しく咲いている。

凍りついた華。

まるでガラス細工。


氷の華に触れたとき。

氷の華が溶けるとき。

世界は変わる。

そんな噂を聞いた。

そんなの迷信。

嘘だってわかっていた。

でも、変わってほしかった。

だから溶かしたの。

触れたの。

触ったの。

私の心の憂鬱が

変わってほしかったから。

私の心の憂鬱が

無くなってほしかったから。

消えたいこの気持ちが

無くなってほしかったから。


でも、この華にそんな力はない。

私の心の憂鬱を晴らしてくれる。

そう思ってた

そう願ってた。

でも、そんなことなかった。

でも、願わずにはいられなかった。


この華は、人を華にする

呪いのような、なにか。

願いを叶えるなんて

そんな力はどこにもない。

華が生きる為の嘘。

華が生き続ける為の嘘。

呪いだ。

触れてはいけない代物だ。

でも華は、確かにそこに存在していて

今も生きている。

なのに、なのに私は

触れてしまったの

触ってしまったの。

溶かしてしまったの。

自分勝手な願いを持って。

願いを叶えてもらう為。

そして、私の世界は

一気に変わる。

誰も私を認識しない。

私はここにいる。

ここにいるのに

誰も気が付かない。

私という名の新たな氷華の誕生だ。

そう。

この華たちは

みんな元は人間だった。

そうして次の人間が触れるまで

ずっとこうして咲き続ける。

触った人間は氷の華として生き続ける。

そんな呪いような、なにか。

もしそんな華を見かけても

決して触れてはだめ。

呪われしまうから。

お読みいただきありがとうございます。

次回作もよろしくお願いします。

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