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図書館の天秤<ライブラ>  作者: 鈴道例文
第1章 図書館、天秤<ライブラ>に成る
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第1章_09 幸せは誰のものか

夜の空気は、まるで刃のように肌を刺した。


ライブラは帳簿を片手に、静かな足取りで陣地内を歩いていた。隣では、アマリアが無言で歩調を合わせている。


仮眠をとっている兵たちの間を抜けるたび、夜営の空気が異様なまでに静まり返っていることに気づかされた。


「……弾薬と矢の在庫は?」


ライブラの問いに、物資担当の兵士は渋い顔で応じる。


「現在の手元にあるのは弾が二百発ちょっと、矢は八十束。今日の戦で予備も全部使い切りました。補充の予定は……まだ未定です」


ライブラは帳簿の数字に一瞥をくれたのち、無言でページをめくる。

そして、そのまま帳簿を閉じて背後に回すと、まっすぐ兵士の目を見据えた。


「ご苦労だった。報告に感謝する。残りの分も、頼むぞ」


丁寧に頭を下げると、兵士は敬礼してその場を後にした。


ライブラとアマリア、二人きりとなった夜の陣営に、短い沈黙が流れる。


「……これが、“勝った戦”の実態なのね」


アマリアがぽつりと呟く。ライブラは表情ひとつ変えず、その言葉を受け止めた。


「弾も矢も尽きれば、白兵戦に頼るしかなくなる」


「兵数なら、もうこちらの方が多いわ。帝国軍は疲弊している。……でも、あなたは、それでも戦が続くと思っているのね?」


ライブラは何も答えなかった。だがその眼差しは、何よりも雄弁に語っていた。


アマリアは小さくため息をつくと、視線をそらした。


「じゃあ……続きは、テントで話しましょうか」


「そうだな。フォン爺さんのところへ行こう」


白い雪を踏みながら、ふたりは並んで歩き出した。小さな足音と共に、夜の帳がふたりを包む。


――残された物資は、わずか。


そして、フォン爺さんのテントはいつも通り、紙と本と写し書きの山に占拠されていた。記録簿、革装丁の書物、そこかしこに貼られた走り書き。もはや“混沌”と呼んでも差し支えない光景。


だが、ライブラはその光景を見て、ほんの少しだけ目を細めた。


「はあ……最高に落ち着く空間だ」


「どこがよ……」


アマリアは眉をひそめながら、呆れ顔で答える。


ライブラは簡素な木製の机に帳簿と戦況図を広げ、指で地図をなぞった。


「ここが補給路。そしてこの尾根の先、南側に帝国軍の補助線が伸びているはず。問題は……次に奴らがどの方角から来るか、だ」


地図の一点を指差すライブラ。その視線を追って、アマリアも戦況図に目を落とす。


「私たちと戦ったことで、もう兵力では勝てないって分かったはず。正面から再突撃なんて、まず考えられない……でも、補給を断たれたら終わりよ」


「……読めねえな。こういう場面の記録は、俺の知識には載ってない」


ライブラはぽつりと呟くと、近くにあった本を一冊取り上げ、ぺらぺらとページをめくりはじめた。


アマリアはそれを睨みつけたのち、軽く足でライブラの椅子を蹴った。


「ちょっと! 今は読書の時間じゃないでしょ!」


そのとき、テントの入口がふわりと揺れた。


「おやおや、夜分までご苦労様ですな、お二人とも」


分厚い毛布を肩に掛けたフォン爺さんが現れた。両手には、湯気の立つティーカップが二つ。


「寒いでしょう。今、お茶を――」


言いかけたその瞬間、フォン爺の目がライブラの手元に向く。そこには――彼の私蔵本。しかも、黒いページのある、あの本だった。


「――って、ちょっと待たんかい、ライブラ様! なぜ勝手に私の本を読んでおるのですか!?」


ライブラは、ぴたりとページを止めながら平然と言った。


「前に“勝手に読まれては困る”って言ってたけど、『勝手に読むな』とは明言してなかっただろ?」


「言わんでも常識というもんがあるでしょうがッ!」


慌てたフォン爺さんはすぐさま本を奪い取り、その表紙をまるで宝物でも抱えるように守った。


あまりにも全力なその姿に、アマリアはつい吹き出す。


「ライブラ、今のはちょっと、子供みたいだったわよ」


「……まだ全部読んでなかったんだけどな」


「だからって、家主の留守中にこっそりとは!」


ぷんすかと文句を言いながらも、フォン爺はどこか楽しそうにティーカップを二人の前へと置いていく。


ライブラは少しだけ不満げにしながらも、お茶の香りに目を細めた。


「“勝手に読むな”――今度はちゃんと言いましたぞ」


「善処する」


「言うと思ったわ」


アマリアがふっと微笑み、ライブラもわずかに口元をほころばせる。


束の間の静けさ。張り詰めた戦場の夜に、温かな気配が灯る。


……けれど、その背後には、確かに――次なる戦が迫っていた。


ライブラは静かにティーカップを持ち上げたまま、戦況図へと視線を戻した。


「……一つ、希望になりそうな材料がある」


「希望?」

アマリアが首を傾げる。まだ緊張の残る瞳で、ライブラを見つめていた。


「俺たちは、敵陣を制圧した際に、かなりの弾薬を奪っている。全量ではないが、補給線を考慮すれば、敵にとっては大打撃だ」


ライブラは地図の上、補給線のルートをなぞるように指を滑らせる。


「矢については奪えなかったが……実戦での感触から言っても、矢束の数そのものが少なかったように思う。矢の雨に怯える必要は、あまりなさそうだ」


「つまり、どういうこと?」


アマリアの問いに、ライブラの声が一段低く、引き締まった。


「――次の戦いは、白兵戦になる可能性が高いということだ」


言葉を飲み込むように、アマリアが黙る。

ライブラはそのまま続けた。


「白兵戦であれば、俺たちに分がある。兵の数はこちらが上だし、今日の戦で“剣で勝った”という経験も得た。これは士気を支えるには十分すぎる」


その瞳が鋭く光る。


「敵を完全に潰すのは難しい。だが、こちらが“敗れる”未来は……限りなく遠のいた」


アマリアはその言葉を噛みしめるように静かにうなずいた。


「……本当に、そこまで読めてるのね」


「帳簿と記録、そして戦場での事実。それをつなげただけだ。別に特別なことじゃない」


ライブラの声には謙遜の響きがあったが、どこか柔らかな余韻も含まれていた。


だが次の瞬間、彼は少しだけ視線を落とし、微かに表情を曇らせた。


アマリアはそれを見逃さなかった。

紅茶を一口啜ったあと、静かな声で呟く。


「だったら……そんな顔、しないで」


ライブラがはっとして顔を上げる。


「あなたが不安そうにしていたら……こっちまで、不安になるじゃない」


その一言に、ライブラはばつの悪そうな顔で肩をすくめた。


「……悪い」


その空気を和ませるように、フォン爺さんがふっと笑い、紅茶を置いた。


「まあまあ。今は戦の最中ではありません。お茶くらい、落ち着いて楽しみましょう」


三人がほぼ同時にティーカップを傾けようとしたそのとき――


「アマリア様、ご報告があります!」


テントの入口に、兵士が慌ただしく現れる。


アマリアとライブラが顔を上げた。


「どうしたの?」

アマリアの声に促され、兵士は少し言い淀みながら報告を始める。


「ローガストを離れて避難していた民間人の集団が……王国軍の敗残兵と思われる一団に襲撃されました。多数の死傷者と、備蓄食料の略奪が発生。現在、彼らは帝国軍に援助を求めています」


アマリアの表情が一気に険しくなった。


「もともとは、ローガストの住民でしょう? 戻って助けを求めることは……?」


兵士はすまなそうに首を横に振る。


「……彼らは街を見捨てて出ていった者たちです。ローガスト側も、“見限った民”として、受け入れを拒否しています」


沈黙が流れたのち、アマリアは静かに立ち上がった。


「わかったわ。私が直接、話を聞きに行く」


その横でライブラも立ち上がる。


「俺も同行する。……帳簿と記録を把握してる人間がいた方がいい」


陣地の外れ、難民たちが身を寄せる一角へ。

アマリアとライブラは、雪の中を踏みしめて進んだ。


その光景は――惨憺たるものだった。


破れた外套、裸足の子ども、呻く負傷者。そして、布にくるまれた遺体が静かに並ぶ。


「お願いします……」


代表らしき中年の男が、深く頭を垂れる。


「どうか、援助を……このままでは、私たちは……」


アマリアは深く息を吸い込み、静かに答えた。


「……少しの援助なら、可能です。ただし、こちらも決して余裕がある状況ではありません」


持参していた食料の一部を示すと、男の顔が翳った。


「……これでは、三日も保たないでしょう」


アマリアの手が無意識に拳を握る。


「私たちだって、補給を絶たれてる状態なの。前線は今、綱渡りなのよ……!」


その時、集団の中から怒りの声が上がった。


「帝国は……俺たちを見捨てるのか!?」

「こんな有様なら、王国の方がまだマシだった……!」


ざわめきが広がる。

ライブラが前に出ようとするのを、アマリアが手で制した。


「……待って」


彼女はひとつ息をつき、群衆の前に進み出た。


「――今できる限りの医薬品と、治療要員を手配します。重症者には衛生兵を。布と消毒薬も運ばせる」


そして、背後の兵に命じた。


「衛生班、直ちに展開して。包帯、薬、そして防寒用の布も。すぐに」


「はっ!」


兵が駆けていく。


アマリアは避難民たちに向き直った。その瞳に宿るのは、同情でも憐憫でもない。責任と、決意。


「今はこれが限界です。それでも、あなたたちがここで生き延びるなら……必ず状況を変えてみせます。」


静寂。

やがて、代表の男が重い口を開いた。


「ローガストは、国境線の街です。これまでも幾度となく、帝国と王国の間を行き来しました」


アマリアとライブラが耳を傾ける。


「そのたびに、“飼い主”が変わる。新しい支配者は決まってこう言うんです――『状況をよくする』と。でも、それが実現したことは一度もない」


男は、ふっと乾いた笑みを浮かべた。


「……“飼い主”は、犬の気持ちなんて知りませんよ」


アマリアの胸に、鈍く冷たい痛みが落ちた。

言葉が、出なかった。


「……援助、感謝します」


男はそう呟き、深々と頭を下げて群衆の中へ戻っていった。


ライブラが隣で低く吐息をついた。


「……彼らも、俺たちも……どっちも辛いな。助けたいけど、これ以上は……」


彼は悔しそうに唇を噛む。


「アマリアは大丈夫か?」


アマリアはしばし黙っていたが、やがて、静かに言った。


「……大丈夫。私は、慣れてるから」


その声は、震えていなかった。

けれどその背中には、深い痛みが滲んでいるように見えた。


「慣れてるって、どういう──」


ライブラが眉をひそめたその瞬間、背後から、静かで柔らかな声がかけられた。


「あなたは……もしかして、ユウに本をくださった方ですか?」


振り向くと、そこにはひとりの女性が立っていた。

顔には深い疲労が刻まれていたが、その瞳には、懐かしさと感謝、そして微かな祈りのようなものが宿っていた。


「……ああ、あなたは……」


ライブラの記憶が瞬時につながる。

――あのとき、焼け焦げた本と、その続きを手書きで渡した少年。

その母親だった。


「本当に、ありがとうございました……あの子……ユウは、あなたの書いてくれた続きを夢中で読んでいたんです。

“挿絵があったらどうなるかな”って、あなたと感想を話したいって……あの子が、本当に……心から、笑っていました」


語る声は、感情をこらえるように微かに震えていた。


「……それは……よかった。ユウくん、ちゃんと読んでくれたんですね。

本って……夢中になると、世界が変わって見えるから……」


「ええ……あれは、あの子にとって、救いでした」


そう語る女性の顔を、ライブラは静かに見つめた。

疲れ果てた表情。深いくま。乾いた唇。そのすべてが、現実の重さを物語っていた。


「少し、休んだ方がいいです」

ライブラはそっと言葉をかける。

「もしよければ、ユウくんの話……私が聞きます。本のことも、彼と話したかったですし」


「えっ……いえ、そんな、ご迷惑を……」


「気にしないでください。きっと、ユウくんも話したかったはずです。面白い本を読んだら……誰かと話したくなるものですから」


女性は少し目を伏せ、迷うような素振りを見せたが、やがて、ほんの少しだけ微笑んでうなずいた。


「……そうですね。少しだけ、お願いしてもいいかしら。ユウのところへ、ご案内します」


そのとき――アマリアが、かすかに眉をひそめ、低い声でライブラにささやいた。


「……ライブラ。覚悟を決めなさい」


「え……?」


その言葉に違和感を覚えつつも、彼女の表情からただならぬ気配を感じ取り、ライブラは言葉を飲み込んだ。


女性の後を、ふたりは静かに歩いていく。


たどり着いたのは、布を何枚も重ねて作られた簡易の安置所だった。

そこには、戦場の余韻を閉じ込めたような、重く沈んだ空気が流れていた。


「……ほら、ユウ。お兄ちゃんが来てくれたわよ。よかったね……ほんとうに、よかったね……」


女性は、小さな布の前に膝をつき、やさしく語りかける。


ライブラの足が、止まった。

胸が、強く締めつけられた。


(まさか……まさか……)


アマリアはそっと目を伏せたまま、布の向こうに眠る小さな存在へ祈るように手を合わせる。


「……どうして……」


ぽつりと、ライブラが呟いた。


その問いに、女性は静かに、だが誇らしげに語り出す。


「……最初に王国兵に気づいたのは、ユウなんです。

用を足しに、ひとりで茂みに行って……そこで、兵たちを見つけたそうです」


「……それで……逃げなかったんですか?」


「ええ。あの子は……黙っていればきっと助かった。けど、ユウは……そうしなかった。

大声で叫んで、みんなに知らせたんです」


声が、かすかに詰まる。


「だから一番、王国兵に近かったユウが……真っ先に……」


ライブラは拳を強く握りしめた。


「……どうして……どうして黙っていなかったんだ……!」


女性は、そっと首を振った。


「……私も、そう聞きました。

“どうしてそんなことを”って。

でも、あの子はこう言ったんです」


その声は震えながらも、しっかりと届いた。


「『だって……僕は、勇者アルディスや、本をくれたお兄ちゃんみたいに……誰かを助ける人になりたいんだ』って……」


静寂が、落ちる。


布が、風にわずかに揺れた。


アマリアはそっと目を閉じ、何も言わなかった。

ライブラはただ、布の向こうに眠る小さな命を見つめ続ける。


「……ありがとうございます」


女性が、深く頭を下げた。


「……あの子は、あなたのおかげで“なりたいもの”になれました。

彼のおかげで多くの人が助かり……あの子は、きっと“勇者”になれた。

……幸せだったと思います」


その言葉に、ライブラは声を震わせた。


「……幸せ……だった、のか……?」


「ええ。

あの子は最後まで笑ってました。

“僕、勇者になれたんだ”って。

あなたに“自慢するんだ”って……」


その瞬間、ライブラの喉奥に熱いものがこみ上げてきた。


「……幸せなはず、ないだろ……!」


怒りと悲しみがないまぜになった声が、喉からこぼれそうになる――だが。


「やめなさい」


アマリアの声が、ぴしゃりと割り込んだ。


「……あなたは賢いわ、ライブラ。

本で知り、記録を学び、知識に溺れてるくらいにはね。

でも……“この子が幸せだったかどうか”なんて、あなたにわかるはずないじゃない」


その瞳には、静かな怒りと深い哀しみがあった。


「だったらせめて……私たちにできることは、“あの子は幸せだった”って……そう信じてあげることじゃないの?」


ライブラは、何も言えなかった。


「……俺は……」


「黙りなさい」


その言葉は冷たくなかった。ただ、あまりにも優しくて、深かった。


しばらくの静寂ののち、アマリアは女性の前に跪き、そっと告げた。


「……この子に、祈りを捧げてもいいかしら?」


母親は小さく驚いたが、やがてゆっくりと、深くうなずいた。


「……ええ。お願いします……」


アマリアはそっと布に手を伸ばし、やさしく撫でるように触れた。


「……本当に、がんばったわね。

あなたはきっと、素敵な夢を見ている。

……だからもう、安心して。やすらかに……おやすみなさい」


風が、静かに吹き抜ける。


ライブラはその場に立ち尽くしながら、胸の奥に沈んだ想いを、ただ、そっと抱きしめていた。


――そして、ふたりは深く頭を下げてから、ゆっくりとその場を後にした。


ライブラは、焚き火の傍らに膝を抱え、ぽつりとつぶやいた。


「……俺のせいだ……全部……俺が、あんな作戦を立てたから……」


その声はかすれていた。まるで雪に吸い込まれて消えてしまいそうなほど、脆く。


「自軍陣地に誘い込む策なんて打たなければ……敗残兵がローガストに流れることもなかった……ユウが……巻き込まれずに済んだんだ……」


彼の肩越しに、アマリアが静かに歩み寄る。焚き火を挟んで、彼の背中をじっと見つめるその瞳は、深い夜の色をしていた。


「……ライブラ。考えすぎよ。それはあなたの責任じゃないわ。もう休みなさい。あとは、私がやる」


けれど、ライブラは頭を垂れたまま、アマリアの声など届かないかのように独白を続ける。


「……あのとき……本なんて渡さなきゃよかった……希望なんて、見せなきゃよかった……」


アマリアの声に、次第に命令の重みがにじみ始める。


「いいから、休んで。これは――命令よ」


しかし、ライブラはふらりと立ち上がり、よろよろと暗い野の方へ歩き出す。


「……いや、違う……もっと前からだ……。あのときから、もう“ユウが死ぬ”流れに入ってたんじゃないのか……?」


アマリアの眉がわずかにひそむ。焚き火の赤が彼の背中から遠のき、影が濃くなる。


「ライブラ……?」


その名を呼んでも、彼は振り返らない。まるで音の届かない場所に、心だけが沈んでいくようだった。


そして、ぽつりと――


「……あの時……俺が死んでれば、ユウは死ななかったんじゃないのか……?」


その言葉に、アマリアの中で何かが爆ぜた。


「――ライブラ!!」


怒気を込めた叫びと共に駆け寄り、彼の肩を掴んで力強く振り返らせる。


「……っ!」


驚いたライブラの瞳を見据えて――アマリアの手が、彼の頬を強く打った。


鋭い音が、静寂を裂く。


「――悪かったわね。私が、あなたの命を助けて……“申し訳なかった”わ」


ライブラは打たれた頬を押さえながら、言葉も出せずにただ立ち尽くす。


アマリアの瞳は怒りと悲しみと、そして強い意志に燃えていた。


「なら……今ここで死ぬ?」


アマリアは剣を抜き、シュッと音を立ててライブラの眼前に突きつけた。


「――ここで終わりにしてあげるわ」


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