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【旧稿】台所シリーズ 第1部 台所で世界をかえる (ただいま編)  作者: 朧月


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30 地下歩の柱に映る、五時の針

札幌地下歩道での、伸子と響香の新年会は、結局、札幌地下歩道の金庫前の歩道で終わった。

チカホの柱が、5時の時計を映し出し、響香に時を知らせる。

「五時のシンデレラ」は、今も変わらず、響香の心に響いている。

どうして自分がそうしてしまったのかはわからないけれど、それは馬車を待つ私たちが、シンデレラの運命を選んだのだと自覚している。

それは他人が言ったことではなく、自分たちが選んだ道だということを、しっかりと感じながら。

駅へ向かう途中、チカホの柱には、アイヌの女性たちが縫い上げたアイヌ模様が並ぶ。

長い時間をかけて生まれたその文様は、ヨーロッパの宮殿に輝くステンドグラスよりも、響香にとっては、もっと神聖で、本物の美しさを感じさせた。この美しい縫い目をうみだした明かりは、いろりの炎か月のひかりか。

大事な炎を消さぬ使命は、明日の天気をしる使命は、家をまもるものを神にしたのではないかと思う。

伸子とともに足を止め、2年前と同じように、「やっぱり、すごいね。」と目を合わせる。

駅に、むかえにくる 哲郎は、まるで かぼちゃ馬車、 小さな家を宮殿にかえるのも、私。そんな気持ちで、残りの数分、伸子と響香は、無言で、歩幅だけをあわせた。

改札の上の岩見沢行きと、千歳行きの発車時刻をみて、急いで「またね。」と、階段をかけあがる。

かけあがったホームには、もう岩見沢行の列車は、ついていた。ボタンを押して、列車の扉を、あける。北海道のJRにこのボタンを考えたのは、誰だったのだろう。

おかげで、扉から吹き込む寒風に当たることなく、みんな暖かな車内で発車を待てる。

札幌の改札口での「あっさりした別れ」と、ホームで受けた冷たい冬の空気が混ざり合い気持ちのどこかで、ざわつく。寝室にある本棚のミハイル、エンデの「モモ」の時間泥棒が時間をかえしてくれるなら、まよわず、伸子と飲み会をするのにと。長いつきあいなのに、一度も、したことのない伸子との飲み会をかなわぬ初恋のように切なく思った。

ボタンを押しながら、響香は意識して、温かな気持ちで家路へ向かおうとする。


そして、札幌駅の改札をくぐるとき、ふと、小学4年生の自分がよみがえる.



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