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【旧稿】台所シリーズ 第1部 台所で世界をかえる (ただいま編)  作者: 朧月


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22 にんぎょひめ

にんぎょひめ


「お話して、お話、お話」

「人魚姫は声を失い、王子のそばで生きることを選びました。」

伸子は、人差し指を唇にあてて、そっと凛のほうをみると、凛は人形姫になったかのように、しゃべるのをやめました。伸子は、話をづづけました。

「人魚姫は、次第に、言葉ではなく心で伝える方法を学びます。その彼女の優しさ、笑顔、そして深い想いは、王子の心を徐々に動かしていきました。王子は、自分が本当に大切にしたいのは、この声なき愛を捧げる人魚姫だと気づいたのね。しかし、王子は国を守らなければならない立場です。

彼は人魚姫と生きることが国の運命を変える決断になると理解して、ふたりのことは、ふたりだけのことにしようときめました。」

凛は、何か言いたかったが、人魚姫になりきって、何も言わず、伸子の方に体をよせていきました。

「でも、それを知った国の数人は、彼らを責めるでしょう。この二人を守ろうとした人も責められるでしょう。

げんじつてきにに考えると、そんな状況は避けられないかった。ひみつが、明るみに出たとき、二人に石をなげる人、彼らを守ろうとした人たちもまた、たくさんのひとからの、きびしい目にさらされることになるでしょう。それがにんげん社会のむずかしさね。」凛は、さらに、伸子に近づいて、顔をうずめた。

「でも、そういった、たくさんの難しいこの中で、人魚姫と王子を守ろうとする人たちが物語に希望をあたえてくれるとおもうのね。石をなげられることをわかって二人をまもる――それは、王子と人魚姫、お城への愛や信念がいかにすごいかととなえる人もいるのね。そして、それがたとえ少数派でも、「理解しようとする心」がたしかにそこにあることが、物語のハートなの。」

凛が伸子の手を握った。

「このお話をまもるには、ふじのすそのにでもうめましょう。とだれかがいったのね。富士山のすそのという場所は、自然の中でもとても神様がすんでいる美しい場所。そこに「人魚姫」のお話を埋めるというのは、まるでその物語を日本の地にずっとずっと、誰かの心の中で生きつつけてね。ってことなの。

富士山のすそのに物語を埋めることで、切なくも美しい「人魚姫」の物語が、大地にとけこんで、そこから新しい芽がでるの。その芽は、新しい希望やハートの形をあらわすの。

だけれども、この芽は、そうたやすくは、でないのね。

話をうめても、まだ、かれらに石をなげる人はいるのね。

お話を、ハッピーエンドにするには、たくさんの困難があるの。

そもそも、石を投げる人だって、それを、正しいとか、自分の大切な人をももろうとか、そういう多くの正しいをみかたにして、ヒーローになりたいのですから。

だから、人魚姫は、せっかく覚えたことばも、うしなってしまうことになるのね。

王子もそれを支えた人も、もう、今までの汗も涙もすっかり、なげだしているのに、

この話のうみ 海をだせというから、 とうとう、この富士も海にしずんでいくのでした。

こんな悲しいおはなしは、そもそも、石を投げている人は、このおはなしの人魚姫と王子の出会い、きたないものだとおもっているから、石をなげるの。

王子は、ふつうの恋をしないと、きっとそう思っていたのね。

 切ない人魚姫のお話だとしったら、こんなかなしいてんかいにならないの。

さて、どんなうたがながれてきたら、気づくでしょう。


【人魚姫のうた】


『どうしてどうして、また、会いたいなんていってしまったのだろう?

あえれればいいとおもっていたのに、

どうしてどうして、ノックなんてしてしまっただろう?

いいおとなだってことはしっていのに。


しっていて、私はノックしているんだから、

あなたは、ノックがあったといえばいいのに、

どうしてどうして、なんでいわないの?


あなたのそんなやさしさが

こんなことになることは

みんなしっていたのに。


どうしてどうして、父でもないあなたが、

ちゃんちゃらおかしいと、石をうけるの?

この国のコンプライアンスっていうのが、

わたしは、わからない。


うみのおとにしかきこえない

だけど、あなたのこえはきこえるのよ

ほんとなのよ ざわざわざわ、さらさらさらら、

いつかには、きっとくるの。ざわざわざわ、さらさらさら。』


そんな、人魚姫のうたも海の音にしかきこえないのです。

あーもうどうしたって、人魚姫も富士山もすくえないとおもっていたら、

あそこのラジオから、同じうたがながれだしました。。

さて、人魚姫のお話の芽はでてくるとおもう?


伸子「おしまい」

凛「めでたし、めでたしの お話がよかったなのに」

伸子「このお話、これからめでたし、めでたし、になるのよ」

伸子「一応だけどね」

凛「きかせて。だってねむれないもの。可哀想で。こんなんじゃ、凛、むかしのせかいにいっても、王子さまもみつけれない。今も、お友達の家にノックもできない。」

伸子「あっつ。そこまで、かんがえなかった。ごめんね。」

人魚姫の続きのお話

「それがね。人魚姫いたのよ。王子の国の、王子の近くにずっと前から。その人魚姫、お城でいつも働いていてね。だから、王子の近くで、働いていた人は、彼女のことをよくしっていたのよ。だけど、このお姫さま、じゃないか、この王子のラブになりそうなひと、大変なことになるでしょ?

すくなくても、いまは。だから、この城の元国王が、そのこと言ったら、みんな追放だぞ。みたいなこといっちゃたのよ。

あとから、なんで、そんなこといちゃったか頭かかえるんだけどね。まあ、、、

でも、王子やら、元国王やら、城の中のみんなが、ありったけの知恵をつかって城をまもるの。もう城は、外国からも、いっぱい石なげられて、王子は、仲間たちとカラオケボックスで、かくれたり、あのて、このてで、ひっちゃかめっちゃかなんとかぎりぎり富士山と人魚姫のお話まもるの。」

あれ、凛、寝ちゃった?」

「このえちゃんち、ノックして、人魚姫のお話おしえてあげるよ」

「おやすみ 凛」

凛の寝顔がとてもまぶしかった。伸子は、凛の手と自分の手を重ねた。

凛の寝顔のかわいさに、このまま、朝まで、おきて をみようとまで、思ったが、

静かに闇の中に伸子の魂も人魚姫の話の中に消えていくように、眠りについた。


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