21 秘密基地のその後
札幌の町の秋風がさらにつめたくなっているころでした。
春江は、近頃「ペっパーさん」とか「警部」とかで、また、よばれることがおおくなりました。
「警部 、来たぜ」
「ぺっぱーさんに、みせてあげよう。」
春江さんは、この児童館メダカを立ち上げた人。
彼女が、そうよばれるのは、親子同時参加のカラオケ大会で、この児童館のたちあげメンバーさんにんで、ピンクレディーのぺッパー警部を歌った時からでした。
三人のなかで、まんなかで歌っている春江さんの親指と人差し指でつくるエル字の手の動きがひときわかっこよかったためです。
秘密基地は、どうかというと、合言葉を知らない他の学童の子たちが基地に近づくことがしばしばあり、言い合いが起きました。ある日、すべてが誰かの手によって壊されてしまいました。それでも、上級生たちと凛たちのゾーンBは、再び新たな壁を作り、時には壊れ、また復活することを繰り返しました。
凛たちが考えた「札幌ドーム 道民カラオケ大会」も、遠い夢のようになっていきました。
三度目の秘密基地ができたとき、その場所には他の学校の生徒たちも訪れるようになっていました。スマホの有無で合言葉を聞けるかどうかが問題となり、凛たちが大人に仲介をお願いしたところ、少し嫌な空気が流れました。結果、「スマホは禁止」というルールが新たに加わりました。
こっそりやっている上級生のドローンやスマホ メダカの町は大人たちの目をぬすんで開拓中でした。
ある日、祥也くんが犬を連れてきました。黒い柴犬です。
「犬、だめかな?」 「それはダメよ。」 「じゃあ、秘密基地を外にも作ろう。」
秋風が吹き始める中、SMAPりんチームはめげませんでした。
「ぼっこがあればいいな。」 「そうだね、ぼっこ。」 「おじいちゃんの家にあれば、ぼっこ、いっぱいあると思うよ。」
次の日、祥也くんのおじいちゃんが軽トラにたくさんの棒を載せて持ってきました。
子どもたちは、牛乳パックの底に穴を開けてつなげる作業を始めました。牛乳パックは、冷蔵庫にぴったり収まる1リットルサイズの軽い長方形です。この広い園庭なら、いくつあっても足りません。子どもたちは「道産 牛乳パック募集」チラシを作り、祥也くんの柴犬「くろ」の写真も入れました。
札幌の霧が立ち込めるレンガ道で、こんな会話が交わされました。
「今日、変な問い合わせがあったの?」 「牛乳パック12個集めたんですけど、どこにもっていけばいいんですか?」
児童館の方からも、「牛乳飲もう北海道作戦の一環で、道産の牛乳パック集めているんですか?」という問い合わせがありましたが、よく分からなかったので調べてみました。
「まさか、知事主導で?」 「えっ、そうなの?」 「ちょっと、聞いてみてもらえませんか?」 「えっ、君が知事なんですか?なんて言われたらイヤだわ。」
その時、凛は秘密基地に大切にしていた布が二つに裂けているのを見つけました。どうしようもなくなった凛は、その布を持って家に帰ることにしました。ちょうど、凛の母・未希はお休みの日でした。
「凛、どうしたの?」 「おばちゃんのところに、行きたい。」
「えっ?今日?」未希は驚きました。明日は凛の誕生日。伸子が長旅を終えて帰ってきたときから、凛の誕生日を伸子の家でお祝いすることに決めていたのです。
「明日じゃダメなの?」 「今日がいい。」凛は少し強く言いました。
伸子の家に着くと、伸子は驚きました。「あら、明日だと思っていたわ。でも、うれしいわ。」 「今日は一緒に寝ましょう。」
お休みの話は楽しい話で始まったのに、自然と昔の切ない思い出が話題に上がり、物語はふんわりとした温かさの中で進んでいきました。




