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天狩りの天使  作者: 回忌
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02

その後も報告は続いた

犠牲になった兵士の数、村、国…その規模まで様々だ


今回は犠牲になった兵士も少なく、国や村が滅びる前に天使や使徒を殲滅出来ている

良い事だ、犠牲は少なければ少ないほど良い


それと任務の途中に"深淵の狩人"達や"竜狩り"、部外者の接触があったことなども細かく報告された



我々【レッドベレー隊】は秘匿された部隊

天使について知らず、抵抗出来ない民達の代わりに天使を狩る隊

奴らも人に化けることが出来る、部外者の中に天使が混ざっているかもしれない

報告しなかったせいで全滅した前哨基地もあるのだ、厳しくやらなければならない



"深淵狩り"や"竜狩り"もそうだ

【厄災】を相手取る組織としても、信用ならない

深淵に染まっているかもしれないし竜の友となっている存在がいるかもしれない


遠い昔に、愚かな行いによって追放された竜狩りが居るように…信用ならないのだ




「───私からは以上だ、他に報告はないか」




最後の報告…審判官"スカーレッド"は自身の報告の後、そう言った

他に手を挙げるものは居らず、つまるところ任務についての報告の終わりを示していた


十秒ほど確認して誰も手を上げていない事を見て彼女は言った


「ならば終わりだ、今回は新入りも居ないからな

…全滅とは思わなかったが…まぁ気にする程でもない」


彼女がそう言って立ち上がる







そして、手に持つ十字槍の石突を地面に打ち付けた



カァン、と鋭い音が辺りに響く

すると閉じられていた大扉が大きな音を立てながら開く


「ぐっぐぐ……!」


そこから現れたのは、1人の男

その両脇に顔を目以外を布の被り物で隠した兵士が居る

例の部屋に突っ込まれた彼をここまで連れてきたのだろう

彼はボロボロな服を着ており、相当"歓迎"されたのが分かる


彼は円卓の目の前まで連行され、矯正的に膝立ちにされた

背中に回された腕には魔法の手錠と縄がされている




…それと、ちぎれた翼の根元が背中に見えるな




「この者は天使の誘惑に負けて天使に堕ちた者だ、今年で3人目だな」

「く、クソったれ…!」


スカーレッドは彼に対して十字槍の刃を向けながら言った

彼は今まさにこの場にいるもの全員…いや、1人を除いて殺意を向けられている


かつて仲間だったとしても、天使に堕ちれば…仲間では無い




「この愚か者に対する罰を、宣告する」










彼女はそう言って、刃を彼の首元に向けた
















「判決、死刑」

「ま、ま─────」


うっすらと感じられる怒り

それを彼が感じる頃には、既に死んでいた


その十字槍の刃はキッチリと、彼の喉仏を貫いている

ビクビクと、手足、そして背中のちぎれた翼が震えている


彼女はそれをじろりと見ながら槍を上に切り上げた




ばしゃり、と血が飛び散る



返り血がべったりとスカーレッドに張り付いた

また彼を連行していた兵士にも…床にも、びちゃりと飛び散る


それを見てアヤがハッと笑う


「お主のせいで血が私の服に散ったでは無いか、汚らわしい血が私についてしまった」

「何の問題があるというのだ、既に塗れている癖に」

「ほーう、隻腕の癖によく言うでは無いか…」


スカーレッドの言葉にアヤは笑顔でゆっくりと紅刀を引き抜いた

それを見て彼女はニィッと笑う


「やはりケモノでは無いか、血を啜り糧にするだけはある」

「かかって来い、隻腕からただの木偶の坊にしてくれよう」


その光景を見て他の隊員はため息をついた

毎度毎度の報告会で起きる2人の争いだ

何故か分からないが2人の中は凄まじく良くない


顔を合わせれば皮肉が飛び合い、結果的にこうなる

最初こそ兵士達がなだめていたが途中から意味がなくなった




「……またか」



一触即発

今どちらかが動けばこの場で戦闘が始まるだろう

その光景を声で想像できたのかずっと目を瞑っていたシーカーがため息をつく


「カタリナ」

「…………はい」


彼女がそう言うと1人の女性が現れる

赤いベレー帽を被り、目元が影で全く見えない

腰には刃の長いレイピアを納刀している


カタリナはシーカーの声を聞き、動いた















「む」「ふん」


瞬きした瞬間、彼女達の武器はその手から無くなっていた

誰が取り上げたのか…それは2人にとって丸分かりだった


「貴様何度も邪魔しおって、面倒な」

「…………」「ここで争うのが悪い、これで何回目だ」


アヤとスカーレッドはカタリナを睨む

彼女は無反応であり、淑やかにそこに立っている

カタリナの言いたいことを代弁するようにシーカーが言った


「…ちっ」「……はぁ」


先に舌打ちをしたのはスカーレッド、ため息をついたのはアヤだ

2人は仕方なくという様子で背を向けた


「…武器は鍛錬場に刺しておく、自分で取りに来い」


シーカーはカタリナから武器を受け取ってそう言った

スカーレッドはまたしても舌打ちをし、アヤは気だるげそうに手を振って瓢箪に入った酒を飲み始めた


2人の態度にシーカーは目を細めながら、円卓を離れる







ようやく濃厚な殺気が収まった事に、兵士達はホッとため息をついた


「それじゃ、掃除を始めるぞー」

「あぁー面倒な…毎回血を散らしてさぁ…」


この光景に慣れてしまった古参兵達は、文句をぶつくさ言いながら散った血と灰の掃除を始めたのであった



「……」


報告は終わった

後のやることは特に無い、前哨基地から天使が現れた事の報告がない限りは…特に


あの場所に行って瞑想するのも手だが…今はそんな気分では無い

かと言って時折感じる"勘"を信じるままに天使を殺しに行く気分でも無い


今回は…そうだ、今回は本部を回りたい

本部に居ることは少ない、天使を狩り尽くす為に外部にいることが多いから。


今回は…天使が現れるまで、期間がある気がする

久しぶりに本部を見て体を休ませても良いだろう

報告して出撃を繰り返していたものだから、本部の進化など見ていない

新しい仲間や建物、娯楽などが追加されていたりする





いつの間にか魔法部隊なんてものも居るし、発明班なんてものもいる


…私は、魔法や意味のわからない発明品より剣でねじ伏せる方が単純で良い…

一々呪文を唱えたり何かをトリガーとする前に剣で叩き潰すことが1番良いのだ








そう思いながら、本部の観察を始めたのであった


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