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天狩りの天使  作者: 回忌
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01

基地への帰還

見慣れた光景だ、新兵の訓練や指南など色々しているのが見える

今回はそれなりに新しい兵士達が参入してきたようだ


これもいつも通りの光景である

空を魔法で滑るように飛んでいる教官とそれに追従する兵士

多分あれは魔法戦士だろう、魔法と近接戦闘をこなす器用な奴らだ

とはいえどっちかに特化している訳ではないので割と器用貧乏である


その他にも東の国にある神社とかいう物や、教会…色んな物が見える

代わり映えの無い光景だと心の中で呟く


「あ、"シーカー"ちゃん!」

「…"ツヴァイ"か、どうかしたか」


そう辺りの光景を見ながら本部に歩いて行っていると、自分を呼ぶ声が聞こえた

その声で呼ぶ者は1人しか知らず、見てみれば笑顔の女の子が居た


「どうかって、任務が終わったから会いに来たの!

あーしの迎えがありゃシーカーちゃんも嬉しいでしょ?」

「…そうか」


レッドベレー隊、副リーダー"ツヴァイ"

元気な性格で私とは全くの正反対だと言えるだろう

個人的にあまり得意な奴では無いが、しかし個人的な面々を纏めるには丁度いい


私はあまり、そういうのは得意ではないのでありがたいものだ


「もう皆居るのか」

「うん、皆任務が終わって帰投してるよ

シーカーちゃんはちょっと任務場所が遠かったから仕方無いけどねぇ」


彼女はステップのような楽しそうな動きで先導する

私はそれに追従する、行先は知っているし…というか同じだから変な行動をする必要が無い


にしても既に他の奴らは任務が終わっているのか、今回は早いな

逃げられたのかどうなのか知ったことでは無いが、死んでいないならそれでいい

死んだらそれ相応の戦力を確保する事が面倒だ


「死者は居ないのか」

「心配性だねぇ、追随兵が死んじゃった位で他は無事

……ほら、いつも通りでしょ?」

「だな」


目立った死亡は無いらしい

追随した兵士達も死を覚悟している筈だ、でなければこんな所に居ない

家族も、自分の存在意義も奪われた者達が集う場所なのだ、此処は


「さぁさ、本部へとうちゃーくぅ」

「早く終わらせてしまおう」


適当な会話をしていると本部に到着する

レンガ造りの立派な建物だ、荘厳な雰囲気がある

最初期は移動式のテントが1つだったがいつの間にか進化したものである


…さて、ここでやることは単純、ただの報告だ

何を倒したのか、逃げられたのか…死亡したのか

ただやることはそれだけなのだから早く終わるだろう

相当面倒な相手が出てこない限り…そう、【ホルス】だとかが来ない限り複雑にはならない


アレが出るのは本当に稀なので気にするまでも無いだろうが


ガチャリとドアを開けて中に入る

本部内は赤いベレー帽を被った兵士達が警備をしている

非戦闘員達が書類を運んでいたり処理したりしている


いつも通りの光景だ、兵士たちが私たちを見て敬礼する

それを横目に私達は中心部に向かっていく


報告場所、それは本部の中心たる円卓だ

【厄災】に対抗する組織には必ずある物体だ

どうしようとも壊れないそれは、そこらにある木材と変わらない筈だ

魔法などでも調べてみたが結果は普通の木材というだけ

何かの加護がある訳でも無い…ただの木材だ


いつしかこれは重要な会議やらに使われることが多くなった

最初は粗末な木の小屋であったが、いつの間にかこんなに大きくなったものだ

全て私のやったことでは無いからこそ、感慨深い


そして、その中心部に行くには東西南北にある大扉を抜ける必要がある

そして今現在その1つの大扉、目の前に来ている訳だ


見張りの兵士が敬礼をする


「お疲れ様隊長、全員揃っております」

「わかった、開けてくれ」

「了解です!」


兵士がそう言うと、「大扉を開けろ」と叫ぶ

すると大扉に幾何学模様が走り、重々しい音と共に開いていく

大門とはまた違った開き方だ、違うのは魔法となる【鍵】を知る者が居ないと開かない点だろうか


そう思いながら2人は中に入る

兵士は隊長と副隊長が入ったことを確認して、大扉を閉じたのであった



「遅れてすまない」

「何も問題無いですよ」

「今回の任務も遅かったのう」


彼女が入って最初に遅れたことに対して謝罪をする

それに声を返したのが数人、返さなかったのが数人である


「いつも通り、任務場所が遠いせいか?」

「…そうだな」


曲剣を持った1人の戦士がそう言った

彼女はそうだと答える


彼女、レッドベレー隊の隊長たる"シーカー"は基本的に危険な任務に赴く事が多い

他の隊員が使徒や下級の天使を相手取るとして、彼女は中級から上級の天使ばかりだ

基本的に塵芥残さずに滅殺するが、基本的に場所が遠い為帰るのが遅い


今回もソレだ、奴が何度も逃げようとしたというのもある


「じゃ、いつも通り報告会を始めるよーん☆

先行はあーしから始めちゃうね!」


無口な彼女の横から"ツヴァイ"が元気よく言う

リーダーたる"シーカー"の報告がかっ飛ばされているのはどうせ彼女が任務を達成しているからである

逃がすなんてことは絶対にしないという信頼が、それだけがある


「あーしは依頼通り、外れの村に襲い来る使徒共を蹴散らして来たよ!

天使の姿は無かったけど…まぁ、使徒に仕事をやらせただけだろうね!」

「………」


彼女はそう言って1人の隊員に魔法にて映像を投影する

そこには歪な羽の生えた化け物が二振りの特大剣を持つ"ツヴァイ"に蹴散らされている姿がある

その映像には天使の姿は無い、醜い使徒共だけだ


「ふむ、では次は私とさせて頂こうかのう」

「どうぞ、アヤさん」


ツヴァイの報告が終わると、今度は白い和服に身を包んだサムライが手を上げる


彼女の名前は"アヤ"

東の国から来たサムライの一族の子であるらしい

反った刀身が特徴的な刀を武器としていて、その刃は紅い

この基地では基本的に指南役として新人たちを鍛えているらしい


和風な服装に赤いベレー帽という珍妙な格好をしているが、この隊のルール上仕方無い物だ


「私の方では天使が一人じゃ、それ以外は何にも居なかった」

「下級か?」

「ふむ…あれは中級だったと思うが」


接敵した映像には使徒の姿はどこにも存在しない

天使の姿が1つあるだけであった

しかしそれは普通の天使と違い、僅かに緑がかっている


ああいうのは、何かの"部下"だ


「少なくとも【ヨルム】の部下じゃろう、直属かもしれんな」

「風の天使ヨルムか…そろそろ動くのか?」

「分からない、警戒が必要だな」


"名前付き"の天使というのは基本的に面倒な存在だ

簡単に言えば幹部級で強さとかそういう次元が違うのである

存在するだけで災害であり、生きていてはいけない存在


それが名前付き、六翼の天使

我々【天使狩り】が最も警戒しなければならない化け物である


「各国に密偵を派遣した方がいいでしょう、時に彼らは天使を庇いますから」

「愚かなものじゃな、本質を知らぬから…いや、"知りたくないからこそ"か」


天使は恐るべき【厄災】であり、脅威である

それは基本的に知られていることだが彼女らの気まぐれによって起きる恵みは、人を混乱させる


特に困窮している者達は天使を厄災ではなく救いだと信じることもある

それによって殺すべき対象を隠されることもあるのだがら、とてもタチが悪いのだ


匿われた天使を殺すのに手間がかかるし、その下手人も処理しなければならない

しかしまぁ…状況の噛み合いを見れば仕方無い事だろうか






一応古い伝承では神の使いであるのだ



本来ならば、敬愛するべき存在なのだろう











いつからなのだろうか、奴らが人を根絶させると決めたのは











少なくとも、それは私が村娘であった頃より前のことだろう

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