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天狩りの天使  作者: 回忌
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誇り高き赤色

「貴様ァァっ…!」

「……」


とある森、その奥深く

その場所で2人の人物が睨み合っていた


片方は既に根元から折れた羽をよわよわしく動かし、倒れながらも目の前の人物を殺せそうな眼光を飛ばす女

元は立派だったと思われる翼は荒れに荒れ、元の神聖さなどどこにも無い


そしてその目の前に立っている1人の少女

赤色のコートに胸ベルト、頭に特徴的な真っ赤なベレー帽を被っている

身長は大体166無い程だろうか

その顔は整っていて美しいが、しかし能面のように動かない

手には背丈に合わない1つの黒い大剣を持っている


刃は血に濡れてテラテラと輝いていた


「クソが…!いつもお前が邪魔してくる…!」

「……」


自分の気持ちを吐き出すかのように天使は彼女に向けて怒号を放つ

その怒りようは辺りの木々が揺れるほどの気迫を持っている


しかし、それを目の前にする少女は全く動じない

揺れ動くことすら…瞬きすらすることは無い

まるで感情の無い機械のように彼女は動じなかった


「だがお前もいつか…!いつしかあの方がきっと─────」


嘲るように、馬鹿な者を見て言うかのように彼女が言おうとしたその時には既に胸にその大剣が突き刺さっていた


自分の死が有り得ないように、死にたくないかのように天使は大剣を抜こうとする

しかし深く刺さったそれは抜けることは無い


やがて天使が項垂れる


天使はそれ以上喋る事は無く、灰のように消えていった

彼女から散った僅かな羽が生きていたことだけを伝えている







少女はその服や大剣に付いた血を払って呟いた







「また1人、消えた」







古い時代、長く遠い古い時代


いつしか存在していた時代




その世界では魔法や卓越した剣技が存在することは当たり前である

空に竜が舞い、魔族など当たり前のように存在している


そのような世の中で人々は国を、村を築いて暮らしている

魔族等の危険な存在が居るこの世界では協力しなければあるのは死のみである




しかし、それであろうと世界を脅かす物がある


それは【厄災】と呼ばれる危険印象であり、この世のものならざる化け物達である


その中でも特に危険とされる三大因子

他の厄災が可愛く思えるような早急な排除が求められる存在



まず、【深淵】

地の底の底より這い出るおぞましいヘドロ達

かつてとある1人の魔女によってこの世に呼び出された災厄

触れただけでも精神どころか魂を汚染する恐ろしき物

【深淵狩り】と呼ばれる組織が逐一監視し、予兆さえあれば国すら滅ぼしてしまう


放置しておけば深淵は菌糸のように増殖しやがて世界を覆い尽くすのだ

それに比べれば、一国が滅びるなど安いものである




次に【竜】


空を舞いし天空の王者達

いつしか人々を焼き付くしその空を支配せんとする伝説共

その火炎の一吐きすら村を焼き付くし、人々を焼き殺す


国すら一夜で焼き尽くす厄災の申し子


【竜狩り】という組織達が常に見張り、必要が無くともその首を、その体を地に堕とすだろう




そして、【天使】

天界と呼ばれる遙か空の彼方にある場所より現れる翼の生えた人型の化け物

見た目こそ端麗で美しい者どもであるが、その心は穢れた人より大地を奪い返すという意思に染まっている


それを統べる神も居るとされているが、姿を見せることは無い


天使を狩る部隊、【レッドベレー隊】によって逐一駆逐され、殺されたり殺したりしている

他の組織にも言えることであるが厄災に対する嫌悪は人一倍所の話では無い






今日も必要以上に民が怯えずに暮らしているのは彼ら彼女らのおかげである

しかし組織の大半は厄災に苦しめられる人々のためではなく、私怨で戦っている




村を焼かれた者、家族を奪われた者、厄災により天涯孤独になった者




組織に参入する者達の同期は様々であり、しかし厄災を打ち倒すという目的は皆同じである




それが生きてしまった自分ができる唯一の償いであり、贖罪であるからだ




今も尚厄災を打ち倒す者の1人として、皆果敢に生きている




「見張り面倒だなぁ…あー、眠い」


レッドベレー隊本部、門前

大斧と大盾を持った赤いベレー帽を被った女性は欠伸をしながら言う


門番としてそこに居るようだが、お世辞にも態度は良いとは言えない

その瞳も少しトロンとしていて今にも寝そうである


それも仕方ないことだろう、レッドベレー隊の本拠地たるこの場所は厳重に秘匿された場所であり

少なくとも天使なぞ確実に現れる訳が無いので、暇になることが多いのだ




やることは敵の来ない基地での監視、それと────






「…あ、帰ってきた」


帰還した隊員達の確認である

天使が化けている可能性も無きにしも非ずである為、門番が確認を取る

…1人だけ、確認をする必要が無い人物が居るのだが


「1人殺った、それだけだ」

「それ以外は?」

「誰も、確認された通りの奴しか居なかった」


目の前の小柄な人物は素知らぬ顔で言う

体にはひとつの血も無い、しかし門番である彼女はその言葉が真実であると分かっている


「そうですか、ではどーぞ」


彼女は気ダルげに入門を許可した

小柄な少女は少し頷いて門に進む


小柄な少女にはあまりにも大きな門がギリギリと音を立てて開いていく

彼女はいつも通りその中に入っていき…そして姿を消した


「はい入ったよー、クローズザゲィィィイ〜ト」


彼女のきダルげな声が響き渡るとまたしても大きな音を出して閉じていく門

門番は盾を地面に突き刺し、支えにしながらため息をつく




「あー、昔に戻りたいなー……聞かれたら殴られる気がするな」




大斧の刃に写る自身の顔を見ながら呟く

あの頃は前線に駆り出されて何もかも叩き潰せた物だ

…今があまりにも暇すぎるからと言ってあの頃に戻して等言ったら、仲間に殴られるどころじゃすまないだろう






あぁ、しかし……暇だな






彼女はまたしても、そう思ったのであった












この物語は、【厄災】に抵抗する者達の物語

三つの人を滅ぼさんとする【厄災】を打倒する者達の物語





これは、その内の1つ────【天使】を堕とす者達の物語である

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