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87【アナザーワールドを改造計画】

 週末、俺は、王都の森にウリアゴメンバーと討伐依頼を受けて、冒険活動に繰り出した。

 その冒険活動の傍ら、アナザーワールドに移植できそうな木の枝を採取しながら、魔物を狩る。

 いつも漁に出ているゴダ以外のウリアゴは平日は他の仕事をしているので、土日に依頼を受けることになっていた。もちろん今日はゴダも一緒だ。魚も美味しいけど、肉も必要だ。自分で狩った獲物はギルドに持ち込まなければ自分のものになるからね。そしてみんな平日にローテーションで休日をとっている。


 「こらーシュンスケ、ちゃんとしてー」

 俺はしゃがんで松ぼっくりを拾っている。その中には風に飛ばされずに残っている種もちゃんと入っていた。

 その松ぼっくりを落としたやつが木の上にいる。またあのハリガネヒヒだ。体の毛がマツに似てるからって、全然隠れてないけどな。


 俺は松ぼっくりを拾いながらどんどん針金ヒヒを討伐していた。おもに遠隔からの雷撃で。狙いを決めるのは白色くんの視界だ。

 

 ドサーッ

 「キャー、シュンスケ!」

 やべ、アリサねえちゃんの前に落としちゃった。

 「あ、ごめん~」

 「きょうのシュンスケはなんか動きがちびっ子だな」

 「しゃがんでは物を拾うとかさ」

 「あのシュバイツ殿下が、本当はこんなかわいいなんてな」

 俺の頭を撫でているのはゴダ君でした。


 ははは。子供って足元の物が良く見えるんです。目線が近いから。

 

 針金ヒヒに素材なんてないと思ってたんだが、その針のような毛は先や鋭くとがっていて、抜けたら根元に穴が開いているのだ。まあつまり縫い針に活用できるらしい。俺はヤマアラシの毛みたいなものかと思っている。とは言え、ステンレスではなくてあくまでもタンパク質の一種で人間の爪のようなものなので折れたり縫いづらくなったりして、消耗が速いというわけだ。そのためときどき討伐依頼があるそうだ。獰猛で人に向けて飛ばしてくるから危険だしな。それで、去年末も良い小遣いになったんだな。


 「あ、松茸発見!ここにも!」

 先日のダンジョンでゲットしてから、屋敷では松茸フィーバーが続いていた。まあ主に俺が。


 今日も松茸のステーキだな!でも一緒に食べるお肉も欲しい!

 「お肉はないか」

 “ぎゃはは、おうじ、なにのにくさ”

 赤色くんに受けちゃった。

 “もちろん、みのただよね”

 黄色ちゃんは分かってる~

 「そう!」


 “おうじ!だんじょんのまえに じゅうぐらいいる”

 「やばい、それは多いぜ」


 「ウリサ兄さん、ダンジョン前にミノタウロスの集団だそうです。先行きます」

 「おー気をつけろよ!」


 今日は他にも週末冒険者がダンジョンに挑んでいたはず。

 先日の遠足で行ったから、ダンジョン前に瞬間移動できるようになっていた。


 シュン


 集団のミノタウロス(数えると十二頭いた)は六人組のパーティーを取り囲んでいる。そのうちのリーダーはおれと同じAランク冒険者だったからもしかして、横から手だししてはいけないのかもしれない。


 俺はミノタウロスの後頭部で浮遊しながら、リーダーさんに黄色ちゃんを使って声を掛ける。


 「お手伝いした方が良いですか?」

 彼は少し頷いた。


 「では」俺は手をピストルみたいな形にして風魔法と水魔法を織り交ぜた森にやさしいビームを放つ。

 いち、にー、さん、しー、ご・・・・


 一頭残して全部。


 やられた奴は、時が止まったように、動きを止めていく。


 そして、再び風魔法でメッセージを。


 「そいつ以外は討伐完了です」

 リーダーさんは口パクで


 サンキュ


 って言った後、目の前のミノタウロスにとびかかって行った。


 ド、ドオオン、バーン、ドスーン


 そうして轟音をたてて、一部は周りの木をなぎ倒しながら十二頭のミノタウロスは同時に倒れていった。


 「大丈夫ですか?ディックさん」

 「助かったシュバイツ殿下。さすがですな」


 この人はディックさん、普段はボルドー第二皇子の護衛をやっていてラスのお兄さんでもある。学園は卒業されているけど、カーリンと同じ十五歳にしてAランク。その上六人パーティーのリーダーなんだからすごいな。


 パーティーの他のメンバーもほとんどBからCランクで、騎士学部の卒業生。みんな武闘派だ。いつもは宮殿で護衛などをやっているのだが、護衛って普段はじっとするのが任務だったりする?だからこうやって時々冒険者活動をして体を動かしているらしい。だから、生活のための討伐ではないことは知っていた。


 ディックさんの他のパーティーのなかには軽症の人が居たけど、俺が指示する前にキュアちゃんがパタパタやってた。うちの子は良い子やほんと(お父さん目線)


 「おーいシュンスケー、あ、これはディック様」

 「ウリサ、ウリアゴみんなか、ああ、ハリガネヒヒか」

 「はい、今日の俺たちのメインはこっちで」

 ゴダが、ハリガネの生えていない足をもってぶら下げながら合流する。

 他はマジックバックに入れていたようだ。


 「そのミノタウロスどうする?シュバイツ殿下が討伐したのは九頭もあるけど」

 「とりあえずギルドに持っていきます」

 「じゃあ、申し訳ないけど、私が倒したこれも持って行ってくれないだろうか、手持ちのマジックバックがみんな満タンになってしまったのだ」


 「いいですよ」

 ミノタウロスは二本脚で立つウシ型の魔物だ。一体が三から五メートルあってかさばるのだ。ウシ型なので肉はうまいから、常に買い取ってもらえるんだけどね。これは松茸と一緒にステーキだな。まあ解体に出して必要な部位だけでいいけどね。想像してたら口の中が唾液だらけになってきた。


 シュシュン 大量の魔物を一瞬で収納する。


 「うわ、すげ」

 「相変わらずすごい容量ね」

 「殿下のアイテムボックスは素晴らしいですね」

 普段護衛の皆さんは俺を殿下扱いしてくる。

 「ありがとう。でも疲れましたね。休憩しませんか?こちらにどうぞ」

 といって扉を開く。

 基本、皇族と護衛にはオープンになっている俺のスキルがいくつかある。

 

 アナザーワールドもそうだ。


 空間魔法の中でも長距離の瞬間移動に並ぶレアスキルらしいけど、お招きするたびに説明するのがめんどくさいから。


 加護に気が付く前に取得したアナザーワールドだが、そもそも空間魔法のなかでも、創造神ゼポロ神の加護がないとアナザーワールドは使えないそうだ。

 ようは、俺が創造する小さな世界のようなものだな。動物をゼロから創造することはできないが、山や平地、川、そして海などを配置して、建物を建てておいたりできる。リアル箱庭ともいう。俺だけが。

 ステータスのアナザーワールドスキルの横に〈ヘルプ〉マークがついていてそこに書いてあった。ただし自分の魔力量などに応じて維持出来る大きさが変わるそうだ。


 アナザーワールドに設置していた家は、パソコンのソフトで起こした平面図から力業で建てたもの。以前に精霊ちゃんの小さい家を作った時の等身大サイズってことだ。

 魔物の角で作ったプラスチックに、クロスやカーペットを張り付けて、中古で仕入れた家具を置いただけのもの。だから、張りぼてだし、水回りもちゃんとしていなかった。


 そこで俺は、グローブ先生の工房に通い、大工仕事をきっちり学び、家を一軒拵えることを課題にした。その中に洗浄機能付き温水便座トイレとかオートバスやキッチンなどの魔道具を自分で考えて取り付けることで単位をもぎ取ることができた。

 だから、グローブ先生の工房にアナザーワールドにつながる扉をその都度繋いで、教えを請い、まあ先生がやけにやる気なのでほぼ造ってもらったのだが。


 さて、建物を置いて生活するとなると、ライフラインとして電気の代わりに俺の魔力、風属性の魔力で新鮮な空気を、そして水。

 排水の処理水の方をどうしようかなと思っていたら、排泄物や生ごみの処理に特化したアメーバーのようなスライムが存在していて、その子を幾つか放しておくと増殖して浄化に一役買ってくれるそうだ。ファンタジー!


 そうやって、アナザーワールドには二階建て4LDKのお家と、ハロルド用のお家、そしてスフィンクス専用の2LDKの平屋が建っていて、いま彼は畑も管理中。秋植えの馬鈴薯と大根の世話にいそしんでいる。それ用の作業着も買ってきてあげたら滅茶苦茶喜んでいた。結局のんびり生活なんじゃんと思ってたけど、じっとしているより良いよね。


 そのそばには、バラ園があって、そこにも蜜蜂の巣箱を置いている。

 クインビーは巣箱と巣箱の間を転移できるんだ。すごいね。


 『というわけで、採蜜が終わったのがこのローズハニーですわ』

 「おお!流石クインビー!」

 『私はこのバラとクインビーの蜂蜜をつかったジャムを』

 「すごいよスフィンクス」


 これを使ったパウンドケーキとか紅茶はいつか女の子を落とすときのアイテムにしよう!

 

 一年かけてするつもりの課題だったが、俺自身が乗ってしまって、一カ月で建物造りが終わってしまったが。


 「てわけで、とりあえずみんなで試食を」


 給仕は新しく得たスフィンクスくんにお願いしている。


 「それにしても、ラスに聞いたダンジョンボスの金のライオンがその人なんて、中々強そうですな」

 ラスに似た笑顔でディックさんが言う。

 確かにガタイが良いのだ。

 『いえいえ、私はライオン状態になればそれなりなんですが、あくまでも農作業や家事が専門です』

 スフィンクスは第一印象とは違ってかなり謙虚だ。

 なぜあんなところにいたのかと言うと、大昔に火の神様のキッチンに忍び込んで、どうしても見たかった火鍋のレシピを覗きに行ったら捕まってダンジョンの最下層に入れられたそうだ。


 火の神様って、厳しいのか?

 “そんなことはないよ~”

 赤色くんは言うけど。


 もし、お会いすることがあれば、気を付けよう。


 でも、あまりにもアナザーワールドを作りこんじゃうと、俺がそこに引きこもってしまいそうなので、ほどほどを心掛けている。そうでなくても、ポリゴンの拠点も何とかしなければいけないし、帝都の屋敷と、南国の島と、王城と、四つも拠点があって、最低限の管理は精霊ちゃんにしてもらってるんだけどね。


 アナザーワールドは基本クインビー用のお花畑が維持出来たらよい。


 あとは、世界樹のようなものが欲しい。

 大陸の東側の魔力の元になる魔素というものが世界樹から生成されていて、さらにシュバイツ湖でも生成されるそうだ。後はどこから来ているんだろう。


 と言うことは、アナザーワールドに世界樹があれば、維持するための魔力の消費を節約できるってことだ。

 とりあえず葡萄棚は作っている。

 スフィンクスがせっせと収穫して、ワインの生産も始めているが、俺はまだまだ飲めないんだぜ。後五十年ぐらいは。あ、自分用ね。了解。


 世界樹は葡萄だけじゃなく百を超える種類の樹木が絡まってあの富士山型になっているのだ。大浴場でも見かけた檜なども世界樹の要素だったりする。

 一つの木として育てるよりは、森を作った方が良いかもしれないな。


 松ぼっくりをスフィンクスに預け、アナザーワールドから出た俺たちはギルドに向かった。


お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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