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8【初めての朝。異世界の】

 今朝は、枕元に置いていたウエストポーチのアラームが鳴って、焦った!

 昨日のことは夢落ちか?と思いながらスマホを出そうとして辺りを見回したら、異世界のままだったのに、ちょっとショックだった。

 そういえば昨夜、寝るときに首から下げてた身分証と勾玉を外して寝ようとしたら、エルフの耳が邪魔で、横向きに寝返られないことに気が付いた。それで、またひもを首から下げなおして寝た。

 エルフ用の枕ってないかね。


 で、朝、アラームを止めながらスマホを見ると、なんと四月になっていて、時計もちゃんと朝の六時になっていた。世界時計の機能がここにも反映されたのか?昨日は寝るまでクリスマスイブだったのに。

 ただ、西暦みたいなところが三桁しかなくて、314ってなってた。西暦にしたら日本じゃ古墳時代?

 元号にしたら、何歳の人がどこを統治してんだ。ってスマホにツッコミを心の中で入れた。

 あ、世界時計のところを開いたら、勝手にガスマニアってなってて、下に東京も並んでた。東京に切り替えると、やっぱり今はクリスマスなんだな、日付の西暦も安心の四桁だ。

 でも、ややこしいからガスマニアに戻す。そういえば、このスマホは母さんに持たされたやつなんだよね。所有者は俺のままだけど、友達が持っているリンゴマークのとそっくりだけど、違うらしいし、ロボットのやつとも違うんだよね。

 確かに母さんは工業デザイナーやってるけど、スマホまでは作れないよね?いくら何でも。


 そんな俺の焦りとは関係なく、アリサはまだ寝ていた。


 太陽がが高めになって、ようやく起きたアリサと、手をつなぎながら朝市を見て回り、朝ごはん向きな屋台のものを買ってもらった。

 穀物の入った、汁の多いリゾットみたいなおかゆみたいなスープ。それを木のカップに入れてもらい、木の匙で掬いながら、歩きながら、食べる。暖かくて旨かった。それに結構多くて、腹持ちがいいらしい。木のカップは後日返せばちょっとお金が返ってくる仕組み。それで、テラスハウスのキッチンにこのカップがいくつかあったんだ。返してないんだな。


 そうそう、鑑定のスキルがオンオフできるようになった。昨日はドミニクさんとかアリサとか椅子とかテーブルとか、触れられた人や触れた物の横にだけ画面出てたのが、朝になって部屋の中で、あらゆるものに画面が重なって飛び出てて、歩くこともできなかったんだ。

 で、何とか見たいものだけ鑑定したい!って意識すれば、ほかの画面が出てこなくなった。うん、朝から頑張ったね。アリサが起きるのが遅くてよかったぜ。


 ギルドの裏手に教会とその横に三階建ての木造のギルドよりは小さい建物と、付属の幼稚園みたいな可愛い建物があった。

 孤児院らしい。地域の託児所なども兼ねているそうで。

 そのほかに教会は怪我した冒険者などの施療院も兼ねている。人口が少ないから、一つのところで掛け持ちでもやって行けるらしいけど、器は足りても、職員は大変なのでは?

 この世界は掛け持ちが多いな。


 そうして昼を過ぎたので冒険者ギルドに来たのだ。

 昨夜とは違って、冒険者は少なく、カウンターでは依頼者の受付をしているらしい。


 昨日食事したテーブルで先に来ていたウリサさんが手招きをしたので、近寄った。隣には昨日ギルドマスターの横にいた秘書さんが立っていた。よく見たら秘書さんはウリサさんよりちょっと年上には見える。

「シュンスケ悪い。Dランクの冒険者に召集がかかってて、俺たちは出なければいけないんだ。ゴダが先に出ているんだが、すぐに俺たちも出なきゃいけないんだ。」

「どうしたの兄貴?」

 アリサも様子が分かってなさそうで、ウリサさんに聞く。

「昨日のフォレストボアが集団で発生したんだと。隣の村に向かってるらしい。」

「やばいじゃん、あっちの村は柵とか弱っちいから破られたらお終いじゃん。」

「それで、今日はこの人にお願いした。」

 そういって秘書さんを示すとウリサさんが俺の両脇をつかんで椅子にあげる。

 また・・・座らせてもらってしまった。うう。

「秘書兼副ギルドマスターのセレよ。」

「セレさん。駿介です。よろしくお願いします。」

「じゃあ、セレさんお願いします。シュンスケごめんね。」

「アリサさん。大丈夫です。お二人とも気をつけて行ってきてください。」

「「行ってくる。帰ったら肉祭りだ。」」

 二人ぴったりに話す。さすが兄妹。

「あ、忘れてた。」

 ウリサさんが振り向いて引き返す。

「これ、渡すの忘れてた。」

 そういって、俺の手に丸い黒っぽい銀色のコインを渡す。

「これは?」

「昨日のギョンを売ったお金だ。仕留めたのはお前だからな。」

 いくらなんだろ。色々知らなければならないことが多すぎるな。

「ありがとうごさいます。」

「使うときは気を付けて。貯めることも大事だからな。」

「はい!」

 ほんと、面倒見のいいお兄ちゃんだな。

 ひとりっ子はああいう人にあこがれる。

 そうして兄妹が出ていくと、ギルド内が静かになる。


 改めてセレが口を開く

「では、シュンスケ。ギルドマスターからの伝言です。お母さんが迎えに来るまで、またはあなたが自立できそうだとギルドマスターか私が判断するまで、教会の孤児院で過ごしてもらいます。」

 そうだよな。あの三人にはお荷物だよな。

「わかりました。」

「でも、すぐに自立できそうですね。」

 セレの口元がほころんで微笑む。この人も美人さんだ。

「そうですか?」

「受け答えが五歳にしては大人びてますし、さっきの私の言葉の内容も理解しているようですね。」

 そっか。五歳じゃ(自立)の意味わかんないか。

「自分はまず、読み書きと、数字と、地理と、歴史を知りたいです。」

 開き直って思っていることを言う。

「ふーむ。子供用の学習では物足りないかもしれないわね。

 このギルドでは、冒険者になりたい人のスキルアップのための勉強会があります。そこに参加しなさい。この国には大人になってから読み書きを学ぶ人もいます。そのための勉強は子供のものよりもペースが速いのです。」

 それは願ってもない!

「では、それでお願いしたいです。」

「でもね一つ問題が。無料じゃないのよ。」

 ガーン!いま俺はさっきの黒いコインしか持ってない。

「このお金じゃ足りないですよね。」

「その鉄貨ではあの果実が五個ぐらいしか買えません。」

 そういってレストランのカウンターに並べられている食材から立派なおそらくリンゴを指さす。

 このコインは五〇〇円ぐらいかな。鉄でできてるんだ。

 何かウエストポーチに入ってないか。

 今朝、起きた時に色々していて、リストの画面を小さく出すことができるようになっていた。

 これはどうだろう。

 母と三重県の伊勢に旅行に行ったときに買った真珠が1個ぶら下がったペンダントがケースごと出てきた。買ったのは母だが、俺が選ばされた。花を縁取ったプラチナの台座に7ミリぐらいの真珠がはまっているデザインだ。プラチナはメッキなのか、諭吉三枚の値段だった。

 目を凝らすと鑑定画面がでた。

 〈養殖パールのネックレス 白金メッキ 小金貨五枚〉

 ケースをパカッと開ける。いまいちお金の単位がまだわかってない。

「あの、これはどうですか?祖母の形見の一つなんですけど。」

「・・・これなら、一年勉強会に参加して、武術訓練もつくわね。」

 まじか。

「なら、それでお願いします。」

「いいの?おばあさんの形見なんでしょう?」

 おばあさんには会ったことないし、嘘つきでごめんなさい。

「いいんです。俺の役に立つなら、喜んでくれるはずです。」

「なるほど、確かにそうですね。では、改めて鑑定してきましょう。」

「お願いします。」

「まずは先に孤児院ですね。」

 このでかい椅子から滑り降りるのは簡単だ。

 秘書さんが片手を出す。

「?」

「手をつなぎましょう。子供はあぶないから。」

 ここは子供の扱いが徹底しているんだな。それだけ危ないのか。気を付けなければ。

「お願いします。」

 セレさんの手は、アリサよりちょっとかさついていた。



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