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72【ハニーバナナオレ】

 バジャー子爵領に戻るとき俺は、クリス フォン リーニング を一緒に連れてきた。

 クリスの種族は正確にはハーフエルフミックス。妹もそうだけどね。今、彼が首にかけている身分証に、俺が預かっていた人間族に変身する石を念のために使ってもらっている。先日エルフってだけで攫われた一人だから。もともと、褐色の肌で濃い緑色の髪、明るい茶色い瞳なので、耳が丸くなっただけで人間族だ。俺と同じで人間族になれば六歳の表示になって今は背が一緒。そのうちクリスの方が成長が少し早いので、差がついていくだろう。でも、俺も大人になれば追いつくので、大したことはない、と思っている。

 まあ、見た目が十八歳になるのが中身が五十代になってからだけどね。

 「クリスは、来年ガスマニアの帝都の学園に入学すればいいのでは?」

 カーリン嬢と俺とミアが乗ってる馬車に、クリスが加わった。

 「で、でも、学費ってすごくかかるんでしょう?」

 「学費のことは心配しないでいいから、俺が去年使った過去問集とかあるから、時々勉強しようよ。来月の入試には間に合わなくても、来年でもいいしね」

 実際、帝国国立学園の学費は例のエリクサーの一本も必要ない。おかげで俺は卒業するまでの分を支払い済み!父さんからのお金に手を付けることなく、ドミニク卿に借りた入学金も返却済みさ。

 うん、色々配ったけどね、エリクサーってめっちゃ高価だったんだ。そりゃ、神様から下賜されたものだしね。途中で、これ以上配るなと言われちゃった。他の薬屋さんが泣くからだって。しょうがないよね。

 途中の宿で、一度過去問をさせてみたら全然合格しそうなんだよね。

 ナティエさんはちゃんとクリスに勉強させていたんだ。

 鑑定すると魔法の属性も沢山ありそうなんだよね。


 まあ、ハーフとは言えエルフだからあわてる必要はないか。うん。

 でも出来たら、リーニング伯爵ってのにも会いたいなあ。


 それでも、馬車に乗りながら、風魔法や水魔法を使ってちょこちょこ遊んだりしていた。

 クリスは簡単な魔法はもともと身についていて、応用もすぐに覚えてしまっていた。

 今日の馬車は三人だけだ。ミアはアリサと後ろの馬車にいて、馬に乗っているのはフィストアタッカーの一人だ。カーリンの従者さんが言うには、二人きりじゃないからいいんだって。で、馬から俺たちの様子を見てるらしい。


 「無詠唱ってすごいですね!今まで魔法は詠唱するものだとばかり」

 「そうよねぇ。私も前はそう思ってたわ」

 学園に入った時の導入の教科書にも詠唱がいっぱい書いてたんだけど、一番初めに書いてた文章が〈何より大切なのは発動する魔法のイメージを明確にすること〉だったんだもんな。

 「いや、長い呪文を唱えているうちに、何出すんだっけってなったり、攻撃する対象がもう結構移動してたりしたら困るからさ。それにそろそろカーリンは精霊にお願いできるんじゃない?」

 「精霊魔法ですか?」

 「あー、そういう言い方があるんだね」

 「ちょっと、試してみようかしら」

 「うん」

 カーリンがマジックバッグからコップを出して。

 「青色ちゃん、美味しいお水ちょうだい」

 “おいしいおみず、どうぞー”

 「わわっ、氷も入れてくれてる♪ ありがとう!」

 「「すごい」」

 「出来ちゃった」

 「今のはカーリンさんが魔法を使ったのじゃないんですね」

 「そう!うれしい!」

 ちなみにまだクリスには精霊ちゃんの姿は見えていません。時々ちらちら光ってるのが見えているぐらい。

 「俺はカーリンの頼み方が凄いとおもった」

 「え?」

 「あんなに可愛く頼まれちゃ、頑張っちゃうよね」

 “がんばっちゃうわ。そのおみず、せかいじゅの ふもとのわきみずよ。のんでのんで”

 「ほんと?」

 こくこくこく

 「ほんとにおいしい。お水ってこんなにおいしいのがあるのね」

 「へーすごいね」

 魔法で出す水は純水のH2O。ミネラルとか無いからあんまりおいしくないもんね。

 おれもコップを出してお願いする。

 「青色ちゃん、俺にも美味しいお水ちょうだい」

 “おうじも?しょうがないなー、はい、かーりんのとおなじみず”

 「やった。世界樹の美味しいお水!久しぶりのミネラルウォーター。それに軟水じゃん。

 うん美味しい。ほら、クリスも飲んでみて」

 一口飲んでコップを回す。

 「はい、、、ふわぁすごくおいしいです」

 ふと気が付くと、あれ?かーりん?

 「私が精霊魔法を・・・」って少し放心状態だった。

 「カーリン、次は赤色くんに頼んでみよう」

 真夏の馬車の中で、頼むことはひとつ。

 「赤色くん、この部屋を少し涼しくしてくれない?」

 “おっけー、そとのひかげより、ななどぐらいひくく、でいいかな”

 「まあ、涼しくなってきたわ」

 「じゃあ、今度は、心の中で黄色ちゃんに話しかけてみよう」

 “なんでもいって!”

 俺の肩で黄色ちゃんがカーリンに声を掛ける。

 「じゃ、じゃあ」

 “お母様に、声を伝えて”

 「あした到着します」

 “・・・・つたえたよ・・・・あ、おへんじ”

 カーリンのこめかみの辺りの髪が少しなびく。

 「お母様の声が聞こえたわ。待ってるって」

 そうなんだよな。黄色ちゃんを使いこなすと電話みたいにできるんだよね。最初の発信はこっちからの一方通行になるけど、

 「花とかアイテムを渡しておくと向こうからも伝えてもらえるんだよね」

 「それで、年末に私に赤いバラを?」

 「そう、赤色ちゃんはもともとカーリンがお気に入りだったしね」

 “そう!いまはなにもなくても、かーりんと、いっしょだぜ。もうぜったいにまもる” 

 ふんすと張り切っている。

 前回、目の前で攫われてからは、特に気にしている。うん、責任感の強い男の子だ。

 「頼もしいでしょ」

 「ええ」

 カーリンはたった今明らかになった新しい能力にすごい良い笑顔になっている。

 「今の一連のやり取り、全然魔力が要らなかったわ。それに私は風属性がないのに、風魔法が使えちゃったわ」

 「すごいですね。ぼくもいつか精霊さんたちに会いたいです」

 “おうじと、もうちょっとなかよくなれたらね”

 “おうじとなかよくしたら、おれたちもなかよくするぜ”

 「クリス、シュンスケ君ともっと仲良くなればいいみたい」

 カーリンのアドバイスに目をキラキラさせて

 「がんばります!」


 「とりあえず、これをクリスがあげてみようか」

 アイテムボックスからまず大きなグラスで出来たジョッキを出す

 そして、南の島で買ってきたとっておきのバナナを一房。

 「なんですか?これ」

 「バナナだよ、知らない?」

 「セイレンヌアイランドの果物ね」

 「うん、すごくおいしいんだ。一本ずつどうぞ」

 一つずつ渡して剥き方を教える。

 「うわぁ、甘いわ。前に私が食べた時はもう少し青い香りだったけど」

 「これはね、この黒いぶつぶつがこのぐらいあると美味しんだ、そのタイミングでアイテムボックスに入れておいたんだ、クリスも食べてみて」

 「はい、うわぁ、本当に甘いですね。こういうの初めてです」

 初めて食べるバナナの美味しさに夢中なクリスが可愛いぜ。

 ぺろりとたべて。

 「わかりました、小さく切ったらいいんですね」

 「そう。バナナをむきながら、このカトラリーのナイフで一センチぐらいずつ切ってグラスに入れる」

 「はい」

 馬車の中でクッキング。揺れないようにこの馬車だけ車体は浮かせておりますので!馬が引っ張ってるだけ。


 「そうしたら、これを」

 と言いながら山羊の乳を少し入れる。

 そしてジョッキの上に氷で出来た蓋をする。

 「さて、風魔法で、このバナナを細かくドロドロにしようか」

 「「えー」」

 「ほら」

 「わ、分かりました」

 ミキサーの魔法っていいよね。コードが要らないし。あの面倒な洗い物もないし。

 クリスには、火と風と水の属性があって、精霊魔法のスキルも少し顔を出している、まだ使えてはいない。

 「シュンスケ君、私こんなことに魔法使ったことない」

 「そう?料理に使うとすごく便利だよ」

 「今度教えてね」

 「うん、世の中に魔法料理のレシピってないのかな」

 「魔法道具で料理するのはあるけど」

 「そっか」


 「シュンスケさんできました」

 「じゃあここへ、蜂蜜を一掬い入れて」

 と言って、氷のふたを空間魔法で消して、シュバイツ印の蜂蜜を柄の長いスプーンで掬ってもらう。

 「そのスプーンはグラスに入れといて、ちょっとロックアイスを入れて山羊の乳を上の方まで足して、よし、スプーンで混ぜて」

 カラカラカラ

 「良い音ね」

 「夏の音だよ」

 「バナナオレのでき上がり―」

 そこへ麦わらストローを沢山挿す。

 「ちょっと飲んでみて」

 「は、はい・・・・めちゃくちゃおいしいです」

 「カーリンも飲む?」

 「もちろん。なんて美味しいの!バナナにミルクって合うのね」

 「でしょ。

 よし、じゃあ、クリスから呼びかけてみて」

 「はい、妖精さんたち、バナナオレですよ」

 “わーい、ばなな”

 “ばななと はちみつと みるく”

 “おいしい!”

 「おお、ストローで飲んでる。ストローの先から無くなっていくのが分かります」

 「ほんとに可愛いわね」

 妖精にはストローが大きくて頬張ってる感じだもんな。


 赤色くんは、カーリンが持ってる齧りかけのバナナの続きを齧っている。

 “おれは、ちょこばなながすき”

 “それは今度な”

 喜ぶのがうれしくて、調子に乗って贅沢を覚えさせてるかもしれないね。ま、色々出すよ。

 “くりす、おいしいわ!またつくってね”

 「緑色ちゃんが、また作ってですって」

 カーリンの通訳でクリスの顔がさらにぱあっと笑顔になる。

 「また、ご馳走します」

 「よし、よく言った!俺も始めはかき氷だったしね」

 “おうじの、はじめてのあーんは わたしなの”

 “そうだったな”

 黄色ちゃんと俺のやり取りをカーリンが両手を口に開けて驚いたようにしている。

 「なあに?」

 「黄色ちゃんとシュンスケ君との、はじめてのあーん見たかった」

 「なんで、カーリンだってこの間、赤色くんに、あーんしてあげてたじゃん。ほら」

 そういってスマホを見せる。

 「わわわ、すごくかわいいですね」

 スマホに映った精霊は見れるんだ。これはそう、遠くないうちに直接見れるだろうな。

 「いつのまに・・・」

 おれは、スマホのカーリンと赤色くんのツーショットを、はがきサイズの厚手のプリント用紙に転写する。

 「はい、どうぞ」

 「ふわわ、これは家宝になるのでは。精霊ちゃんの絵姿なんて!」

 「本物かどうかわかるのは、見たことある人だけだろうね。お人形さんと思われたりして。」


お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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