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67【バジャー子爵領】

 門を潜る手前でうたた寝から目覚めた俺と、カーリンとミアの三人はしばらく夢見心地でぼーっとしていた。

「なんか、夢を見ていたみたいだね」

「ええ。ねえ、シュンスケ君」

「うん?」

「女神さまたちとお会いしたなんて夢ですよね」

「ははは、ステータスを見てごらん」

 カーリンが自分の冒険者の身分証を確認する。

「!」

 また夢の世界に戻りそうな彼女に声を掛ける。

「カーリン!門が見えてきたよ!」


 俺が完璧な金色に塗り足した麦畑を通りすぎると、遺跡のように朽ちた城壁に囲まれた街の門をくぐる。

 門は、大門と、小門が組み合わさっていて、普段は大門は開かれていない。貴族と言えど、小門を通るらしい。

 しかし、今日は大門が開いていて、ウリサが馭する2台の馬車は一旦停止の後、真ん中を

 堂々と入り、そのまま進んでいく。

 二台の馬車と二頭の馬が通り過ぎると瞬く間に、大門は閉じられていく。


「今、大門からお通りになられた立派な馬車には、どのような方が乗られているのでしょうか」

「おや、パン屋のおかみさん。隣国の王子殿下らしいですよ」

「まあ、この街をお通りになられたなら、すこしでも良いことがないでしょうか」

「馬鹿言っちゃいけないよ、位の高い人が通るだけでいい事なんて起きないさ」

「そうだぜ、前の領主だって爵位だけは高かったからな」

「ぎゃははは」


 俺が通ることが先ぶれされているのか、ありえないぐらいにすんなりと通っていく。

 新しい街に入ったというのに、俺は窓に張り付いて外を見ることが許されていない。

 本当は、靴を脱いで、シートに膝立ちになって、外を眺めたいのにさ。


 でも、ちょっとだけ外を覗く。あ、おばちゃんと、よく似た娘さんがこっちを見て両手で口をふさいだ。親子かな?

 俺はにっこり笑って手を振ってみる。

「「か、可愛い~」」

 うん、その形容詞にも慣れてきたね。でも俺今、頭から目ぐらいまでしか窓から出せてないよ?


 歩道の人がうっかり、馬車の前を横切らないように、子爵家の私兵が、大通りの両端で目を光らせている。

 でも領民が上を悪く言う言葉を咎める感じではないみたいだ。


 門を入ってすぐのところに、冒険者ギルドがある。

 大通りの両側には店が立ち並び、始めは露天に近かったものが、立派な商会へと街並みが変わっていく。店の奥にある家々もだんだん、集合住宅や高級そうな戸建てになっていく。

 でも、通りの裏手や住宅の密集したところでは、空き家や今にも崩れそうな朽ちた建物もある。


 そんな様子がなぜわかるかと言うと、光の精霊の白色くんの視野を借りているわけである。またの名を覗きのスキルともいう。俺だけが使う名詞だけどな。誰にも言わないけどな。

 民衆は、王都の人たちに比べると、全体的に痩せた人が多く、洋服も薄汚れている。

 規模は大きいのにポリゴン町に比べると全体的に灰色っぽい。

 ああ、裏通りで喧嘩しているぜ。

 こっちはボロボロの子供達が固まって座り込んでいる。お家は何処だろう。

 あの楽しくてみんなの笑顔が眩しい、ポリゴン町のような孤児院は無いのだろうか。


 そして、大きな家や集合住宅も、新しかったりリフォームされた様子はなく、かなりの寂れ具合だ。城壁にぐるりと囲まれた街の一番突き当りに、かつて砦として使われていた、武骨な岩づくりの城があった。そこがバジャー子爵の領主館だった。


 子爵領の少し手前に、教会があり、その周りには立派な三階建ての石造りの建物があって、一階ごとの天井も高いから、この世界ではもうビルと言ってしまってもいいような貫禄がある。


 対して、領主の館の方はハッキリ言ってボロい。七十年前の建国以前は小国の城で、その後は侯爵家だったから、大きくて、かつては凄かったんだろうなとは想像がつく。だが子爵の力ではこの大きな砦のような城を維持することは難しいのだろう。使っているところがどこかが分かるぐらいに、手入れの行き届いてないほとんどの部分がボロボロになっていた。


 まあ、あのエゴンってのは女の子を食料とか言ってたから。長い期間ろくでもない統治だったんだろう。人間族至上主義とか言いながら、領民をないがしろにしていたという、皇帝陛下の話だった。首を撫でられたのを思い出して鳥肌が出る。思わず二の腕を自分でさする。

 エゴンは、前回は普通の人間の処刑方法だったが、今回は吸血鬼用の絶対復活出来ない方法で、葬ったらしい。もう一人ヤーコブの方も絞首刑が終了した。ヤーコブは独身で子供とかはいなかったのか救いだな。

 カーリンが捕まってた、地下のワイン貯蔵庫は、なんとヤーコブが軟禁されていた。ラーズベルト王都屋敷の地下につながっていた。今後、地下ごと解体して立て直すらしい。


 二台直列して走っている馬車のうち、後ろのフィストアタッカーの馬車は、冒険者ギルドで一旦停車。

「麦畑がきれいですねー、そろそろ刈り入れ時ですよね?」

 って畑が良くなったことを伝えてもらうことと、ギルドの中で生の民衆の声を拾ってもらうのが目的だ。これは、皇太子から直々に指名依頼を受けた、彼らの仕事だったりする。


「ねえ、奉仕活動とかしていいかな」

 カーリンに相談する。

「どうしたの?」

「なんかね、裏通りにガリガリの孤児とかいるんだよね」

「まあ、そうね、かなりここは生活が厳しそうね。子爵に言って堂々と実行するか、冒険者の格好でコッソリするかってところね」

「あそこに、教会があるんだけど、孤児院とか無いのかな。ここは戦争からの復興が遅れてそうだよね。大きい街だから余計大変なのかな。」

「そうね。そこは、私に任せて?こう見えてもこの国の辺境伯家の娘ですもの」

 そう言って、ミアの方を見る。

「すぐに着れる軽装のドレスあるかしら」

「大丈夫ですよ。私が一着このマジックバッグにお持ちしています」

 俺は馬車にアナザーワールドの扉を付ける。今はコンクリの打ちっぱなしではなく、ベッドやソファセットのある洋室を開ける。

「ミア、お願いね」

「畏まりました」


 おれは、馭者のウリサ兄さんに声を掛ける。

「兄さん、カーリンを辺境伯家の娘として、今支度してもらってるからゆっくり進んで。城に着いたらそのつもりで」

「わかりました」


 夏の帰省の途中で立ち寄ったという体のカーリンは、上品なライトグリーンのサマードレスに一瞬で着替えて出てきた。ミアの侍女スキルが凄いのか二人ともが凄いのか。


 待ってる間に、俺は予備に持ってたカンカン帽に、三つぐらいのミニひまわりをワイヤーでくっつける。


「はい、これ。日焼け防止に」

「まあ、シュンスケ君。素敵!ありがとう。今ちょっと被っていい?」

 シュンスケ呼びに戻ってる。良かった。

「どうぞ。はい、鏡」

 と言って百円ショップにあるようなB5サイズの鏡を出して二枚鏡に広げて持とうとすると、横からミアに取られる。

「お似合いですわ、ほらお嬢様」

「ありがとうシュンスケ君」

 カンカン帽には広めの長ーいリボンも二つ取り付け済み。

 鏡をミアが持ってるんだから、結んであげるのは俺だよね。

 カーリンのほっそりした顎の下にリボン結びを作って垂らす。

「ふふふ、完璧だぜ。な、ミア」

「坊ちゃまのセンスには、いつもながら脱帽しますわ」

 イイネ頂きました!そりゃあ一応、東京ボーイ・・・表現が昭和っぽいけど、だったんだからね!


「殿下、到着しましたよ」

 アリサが俺のことを〈殿下〉呼びで馬車の扉を開ける。

 俺が先に降りて、

「カーリン様可愛いです」コソッ

「ありがとうアリサさん」クスッ


「ではカーリン嬢」

 身長的に頼りなくてご免ね、って感じで手を差し伸べる。

「はい、シュバイツ殿下」

 ひざ下のスカートだからね。足元見えにくいからさ。どんなに上等な馬車でもステップが小さいのは、こうやって男性がエスコートをするためなのかも知れないよ。この世界は職人もたいがい男だろうしね。


「初めまして、バジャー子爵殿」

「ようこそお越しくださいました、シュバイツ フォン ロードランダ殿下と カーリン フォン ラーズベルト嬢」

「久しぶりです。バジャー子爵、世話になります」


 俺の付け焼刃なごっご貴族と違って、本物の令嬢は違うよなあ。と感心して見ていた。

 バジャー子爵は戦後に貴族になったばかりで、赴任してから五年しかたっていない。

 年齢だけは四十を超えて、ドミニク卿ぐらいだけど、おどおどしているし、戦後を立て直すならもっとグイグイ行く人でないとダメだよな。いっそドミニク卿と入れ変えてしまった方がマシな気がするけど俺はよそ者だし、ポリゴン町のみんなのためには絶対言えない。でも、第一印象からガキでも分かってしまう頼りなさ。


「ではこちらへ」

「カーリン嬢、行きましょう」

「ええ、殿下」

 一応、俺がカーリンをエスコートしている体で、腕を組みたかったけど、身長差的に不可能なので、お姉ちゃんと弟みたいな歩き方。

 俺の背中をカーリンが押すという組み合わせだ。うん、いつもそのポジションはアリサだったりして。だって俺の身長はカーリンの肩にも届いていない。同級生なのに。変身(ずる)しちゃだめですか?


 通された応接室で、ウェルカム的な紅茶をいただきながら、俺は手土産のカット済みパウンドケーキをウリサからこちらの侍従に渡してお皿に入れてワゴンで持ってきてもらう。


「ここに来る道すがら、領地を見させてもらって、お聞きしたいことがあるのですが」

 子爵に話を進めるのは、カーリンの方だ。なんせガスマニア帝国の国内の話だからな。俺は一応ただの協力者だ。

「はい、何でしょうか」

 扇子で口元を隠しながら上品に問い詰める。

「教会には、治療のできる聖職者はいらっしゃいますか?」

「私が、こちらに赴任してからは、まだおりませぬ。すべてポーション頼みの医療行為となっております」

「それは、難儀しておられますね。

 それともう一つ、通りに孤児が目立っておりましたが、では孤児院も機能していないのでしょうか」

「はい、恥ずかしながら、そうです」

「では、領民のために、皇帝陛下に相談をされましたか?」

「私も初めての領地経営でして、しかも侯爵領後のこの広大な領地で、書類に目を通して、サインをするだけで一日が終わっていて、対策などは何もしていないです」

「・・・それは困りましたね。何も解決しそうにないですね」

 俺はあくまでも部外者という体で黙っているが、カーリンに耳打ちをする。

「なるほど、シュバイツ殿下、ありがとうございます。この国の貴族としてお礼申し上げますわ。

 バジャー子爵」

「はい、何でしょうか」

「シュバイツ殿下は素晴らしい聖属性魔法の使い手ですのよ。今日もこの町の入り口までの麦畑をあっという間に実らせながら来られたんですよ。ねえ?ウリサ」

 後ろで立ってくれている、ウリサ兄さんにも話を振るカーリン。

「はい、牧草も青々としていて、牛も喜んでいるようでした」

 子爵は本気で驚いた顔をしている。

「なんと。素晴らしい。ありがとうございます」


「それでね、明日、教会で音楽と歌を披露してくださるそうです。町中の怪我人と病人をお集めになって」

「そ、それは大変ありがたいことですが。私どもではそれに報いる報酬はご用意できません」

 健康保険のないこの国では、医療行為を受けることはお金がかかる。しかし、教会では普通、お布施で運営しているので、治療費がかかったとしてもわずかになるのだ。民への救済措置なんだけど、ここの教会は機能していないのか。

「あの、バジャー子爵殿」

「はい、シュバイツ殿下」

「ここの教会を今から見学させていただけませんか?ちょうどお祈りもしたかったですし。

 ああ、ぼくの音楽にはお金は要りませんよ。気持ちだけで十分です」

「そうですか、教会は日中でしたらいつでも開けておりますのでどうぞ」

「では、失礼します。今夜はこちらで一泊させていただくと聞いていますので、また、夜に戻ってきます。ああ、食事の用意はいらないですよ。ねえ、カーリン嬢」

「はい、そのように通達しておりましてよ」

 それはそれはと言いながら、子爵は少し表情を緩める。

「この通り疲弊した領地なので、大変助かります」


「じゃあ、行きましょうか」

「はい」


 応接から出て、カーリンとこそこそ話をする。

「どう思う?なんか不自然だよね」

「ええ、戦後の復興に国からかなりお金を出しているはずなんですけどね。実家もそれで助かっていましたし」

「本人が着服している感じではなかったよね」

「ええ。普段着としても子爵ならもう少し・・・」

「領主じゃなくて、他のスタッフがまだエゴン時代の人間だったりしてね」

「まさか・・・でも否定できないかもしれないわね。とりあえず今日の現状をレポートにして内務省に提出しておきましょう」

「そうだね。それと、復興資金の使い道も書き出すようさせた方がいいのでは?」

「そうね、お従兄様にも言ってみましょう」


 俺たちはここも敷地が広すぎるので、城の外門から教会がすぐ近くにあっても馬車が必要だ。これって、結局めんどくさいよね。馬ってさ、所かまわず時々あれを落とすんだもん。

 排気ガスをだすのか、あれを落とすのか、どっちが環境に良いのだ?

 ま、ここの庭園は手入れが出来てなくてボロボロだから、ま、いいか・・・?いやいかんいかん。


 教会について、俺たちはびっくりする。

 外観は、かなり美しい、建て替えたのか塗りなおしたのか。

 しかし一歩大聖堂に入ると、そこは全体にくすんでいて、埃っぽかった。

 “黄色ちゃん、ここの司祭様を探して。白色くん職員の部屋を見てきて”

 “わかったー” “まかせて”

「カーリン、この教会は」

「ええ、風の女神ローダ神の像があるわ。他は台座だけね」

「本当だ、この間カーリンが着ていたのとそっくりの衣装だね」

 形とか裾の長さとか。あしらわれているレースの位置とか模様とか。

「でしょう?」

 初めて見る、風の女神様の真っ白なはずの像。っていうか、海の神様以外の石像を初めて見た。

 でも悲しいかな、埃が積もっている。他の台座も上にも。


 “だれもいなーい” “でも、こっちのへやはすごくきれい”

 精霊ちゃん達の報告が入ってきた。

 “ほんと、こうていへいかの おへやみたい ごうかだぜ”

 “ぜんぜんちがうわ、しゅみがわるいって いうのよ”

 おおう、お前たち、皇帝陛下の部屋も見たことあるんだね。そりゃそうか。

 白色くんの中継で見たのは緑色ちゃんの言う通り、とても聖職者の居室とは思えない。ヌードの絵画がいっぱい掛けられてあって、他の絵もあってヌードもあるならそれは芸術作品が好きなんだなーってなるけどさ、ヌードばっかりって・・・。趣味の悪いピンク色のベッドがドーンとある。落ち着かねー。まあ、男性の居室としてはある意味夢が詰まっている?うん。俺には理解できないがな。

 でも、この部屋には埃はありません。

 ちなみにポリゴンの司祭様の部屋は、超質素でした。お掃除当番で入ったことあり。


 自分の夢の寝室だけきれいにして、女神様(かあさん)たちを掃除もしないなんて。ひどいな。

「ウリサ兄さん」

 ちっ、

「なんでしょう殿下」

 舌打ちされても、俺は今はそれどころじゃねぇ。

「もう耐えられないー。掃除だ!」

 俺はバッと脱いだジャケットを突っ込んだアイテムボックスから、入れ替えるように箒と塵取り、数個のバケツと雑巾数枚を出し、スプレーの家庭用洗剤を出す。そして、バケツに水をためる。もう一つのバケツにはカーリンが水を入れてくれる。ドレスにエプロンをかけてスカーフで三角巾にしている。・・・それもいい。


「黄色ちゃん、窓を全部開けて、風を入れて」

 “おっけー”

 バタンバタンと窓が開いていく音がする。


「ウリサ、冒険者ギルドに依頼を出して、教会の掃除」

「了解!」

 馬車から外された馬が軽快な蹄の音とともにかけていく。


「じゃあ、始めようかな」

「ええ」

「おれは、女神様(かあさん)と天井をやるね」


 まったくもう、人の母親をなんだと思ってんだ。地球じゃ、工業デザイナーとか、今はそこの社長さんとかそういう地位があったり、俺の連れからは、田中のお母さんとか、近所のガキは田中のおばちゃんとか言う扱いだったけどさ。

 だけど、ここでは神様じゃないの?

 俺は日本では信じる宗教はなかったけど、ここは身近に神様がいるんですよ~。ちゃんとしないと罰があたりますよ~。


 なんて、心の中でぶつぶつ言いながら、風の神様の石像の埃を掃って拭く。

 昔通っていた小学校でとっくに亡くなられた尋常小学校時代の初代校長先生の銅像を拭いたことはあるけどさ(超適当に)、現実に日本にいてさ、日本人やってる人の、石像の埃を落として磨くって、ちょっと変な感じ。昔流行った芸人のショップに立ってるやつ?いやいや、神様なんだってば。

 でも、真っ白だし、こんな顔だっけ。俺の知ってる身長の三倍ある?(海の神様が立つともっと大きくなるからポリゴン町や帝都では座ったポーズだったんだ。)

 コッソリ携帯をみて見比べてみる。高校の入学式で、水の女神さまが撮ってくれた俺とのツーショット写真。

 他にはその何年も前の、この石像と同じ例のワンピースとショールで、小学低学年の俺と国内旅行した時の写真もデータがある。これは、風の神様の親子ショット。よく見たら、レンズに油でもついてた?って感じで、俺たちのまわりがぼんやり光っている。でもまあ、顔は、うん、全然違う。どっちが美人とかじゃなくってさ、彫刻家が頑張って空想で想像して描いたんだろうな。

 アティママ神だって、実際にお会いしたらカーリンが思ってたのと違う服装だったんだもん。石像を作る人が、俺達みたいに本物に会えるとは限らない。むしろ会ったら恐れ多くて像には出来ないんじゃない?本人に「妾はこんな顔じゃないぞえ」とか言われたら、ショックだろうな。しらんけど。

 ただ、風の神様のこの服が俺の持っていたワンピースと同じので認識されている・・・。母さんあのワンピースはいつどこで手に入れたのでしょうか。


「よし、こんなもんだろう。綺麗になったんじゃない?母さん」

「女神様をお母様と言えるのが凄いわね」

「まあね、どうやらそうらしいから。ほら、写真」

 そう言ってカーリンにもスマホを見せる。

「ふわぁ素敵。あら、シュンスケ君お母さんに似てるわね」

「そう?よく言われてたかも」

 拭き上げた母さんの石像の上にふわりと大きな風呂敷をかけて、荷造り紐で緩く抑える。

「んじゃ、天井(ステンドグラス)行ってくるわ」


「気を付けてね」

「はーい」

 翅を出してパタパタ。

 こういうところって、蝋燭を使うから、煤が付着するんだよね。うわ、真っ黒。

 雑巾でザーッと水拭きしてから、もう一度バケツに戻る。

「すごいね。煤」

「ほんとだ。この水をいったん入れ替えましょう」

「そうだね」


 今度は仕上げの水拭きからの乾拭きを。

 自己満足して、大聖堂の床に降りる。

 母さんの風呂敷を外す。


 大聖堂に何人か冒険者が来た。

 危険な仕事じゃないので、最低ランクが多いのか、女性や子供がいる。

 子供たちは八歳以上で、俺より二歳以上大きいけどな。


「こんにちはみんな、俺の声掛けに集まってくれてありがとう」

「あら、シュンスケちゃんじゃないですか」

「はい。そうです」

「わあ、俺達、帝都であなたの演奏と歌を聞きましたよ。人魚姫と歌ってた時の」

「ほんと?嬉しいな」

「今日はいつもと印象が違うけど」

「そうね、可愛らしいのは同じだけど、すごくきれいなエルフね。翅が素敵」

 そういえば精霊のままだったな。でもみんな俺って認識してくれるんだ。


「皆さんこちらに住まれているんですか?」

「いや、普段は帝都を中心に仕事をしていて、麦の収穫の時には里帰りをしているんだ」

「そうなんですね」

「この教会に入ってきたのは何年ぶりだろう、本当にひどいわね」

「ああ、王都のほうのでお参りしていたから全然来てなかったけど、自分たちの街の教会だもんな、うん、俺は報酬は無くてもいいぜ」

「今年は豊作みたいだから、麦の収穫もあるからね」

 嬉しそうなみんなに、余計なお世話もやってよかったと思っちゃうね。


「あ、そうだ、チェンバロの調子を見なくちゃ」

「もしかして、ここで弾き語りをしてくれるんですか?」

「ええ、明日朝、聴きに来てくださいね。あ、ご病気とかお怪我の人が居たら連れてきてほしいのですけど、動けなかったら、俺が乗って来た馬車を回しますよ」

「そんな、馬車なんてもったいない。荷車で大丈夫ですって。わかりました周りに声を掛けますわ」

「うん、俺のおやじも屋根の修理で落ちて足を骨折したままなんだ。そういうのでも大丈夫か?」

「ええ、頑張りますよ!」

「「やった」」

「「まあ」」

「そのかわり、効果的に演奏が出来るように、ここをきれいにしたいんです」

「そうだな、おい、みんな頑張ろうぜ!」

「「「「「おー」」」」」


 この街の人でもある冒険者さんなら、ちゃんとしてくれるだろう。


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