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60【後見人への事後報告会と初めての謁見】 

アイスラッガー飛ばす超人の小さくなった回を大昔、再放送で観たんですけど、あれを思い出して仕方がない・・・あ、年代がばれる…って解った人も同じ世代!

「あの、皇太子殿下、報告する前に俺の後見人も同席してもらってもいいですか?」

 お腹が膨れて落ち着いた俺は殿下にお願いする。

 本当は、すごく怖い気もするけど、あとで報告するより、面倒じゃないかもしれないしね。

「ああ、いいぞ」

「ではちょっとだけ待っていてください」

 と言って、黄色ちゃんに聞いてたドミニク卿の居場所へ。王都の冒険者ギルドの会議室の扉からポリゴン町の冒険者ギルドの会議室の扉の前の廊下に出る。そのままギルマスの部屋でノックする。

「なんだシュンスケか」

「あの、またちょっとした事件に巻き込まれていて、一応片付いた後なのですが。これから王都のギルドで報告するので、同席お願いできませんか」

「・・・そうだな、後で聞かされるよりいい」


「ただいま戻りました」

「失礼します。殿下、同席させてください。」

「うむ、空間魔法って良いことに使えばこんなに便利なのにな。

 それにしても久しぶりだなドミニク。うわさに聞いていたが、少し若返っていないか?不自由だった手足がすっかり治って」

「エリクサーのおかげですよ」

 と言いながら、後見人は俺の方をチラ見する。

「あの薬を最初に試飲してくれたのはドミニク卿なんですよ」

 どのくらい聞くかお試しでね。

「そりゃそうするか。良かったな、ドミニク」

「はい、初めは手助けのつもりでこの子とかかわり出したんですけどね、自分の方が助かってるのは確かです」

 おお、ドミニク卿からのべた褒め!我ながら感動するよ。


「そんなことより、シュンスケ、説明しくれるかな」

 後見人の声色が変わった。

「・・・ハイ」


「ここにいる方はご存じでしょう。俺が精霊達とすごく仲が良いことを」


 風の精霊(黄色ちゃん)は音を届けてくれるが、光の精霊(白色くん)は映像を届けてくれるのだ、それであらかじめ密室の様子が分かった俺は、ウリサに報告と計画を話し、カーリンと入れ替わって、計画の内容や証拠を押さえることにしたのだ。


 ーーー


 カーリンが連れていかれたのは、貴族の居住エリアの裏にあるスラムの一角の、地下の空間だった。元は、爵位を失ってつぶれた有力貴族の古い屋敷の地下のワイン貯蔵庫につながる通路で、そのワインを世話をする下働きの家につながっていたのだろう。だが、地下という構造上にさらに出入口のない空間だった。

 密室の上には朽ちた料理屋のダクトが繋がっていた。ダクトのようで地下の通気口だ。

 おれは、スラムを歩くにはちょっと危険だと分かりながらも、帝国学園の制服のまま、スラムのさらに裏路地のダクトの下にたどり着く。

 ここから入り込むには、精霊ちゃんサイズになるしかない。変身の魔法で精霊ちゃんサイズになれるのか。自分の種族名にスピリッツ(精霊)とあるのをこの時ばかりは信じるしかなかった。

 服のサイズ調整付与はどこまで、反映されるのかも心配だった。


 しかし、俺の心配はよそにすんなりと小さくなる事が出来た。

 こ、これは、覗きとかやりたい放題なのでは・・・。まあ、毎日のようにアリサとお風呂入っている俺には不要だがな。


 翅を足してもダクトの穴より小さかった。


「よし、行くぞ。案内して」

 “りょうかい”


 密室と壁の向こうのワイン貯蔵庫だった地下室にも、土木や採石用の爆発の魔道具(要は爆弾だね)が沢山積み込まれていた。宮殿と学園ぐらいは粉みじんになるほどの量だったそうだ。あの、空間魔法使いのテラップが運び込んでいたらしい。あの部屋を密室にしたのもそいつだった。


 普通、こういう危険なものを持ち込むには、厳重な審査や許可証の取得などを経て、国にも持ち込んだということや持ち込み量を登録しなければいけない。しかしまあ、クーデターかテロでも起こすつもりだったのだから、あいつの空間魔法で違法に持ってきて集めていたわけだ。


 会議室には、殿下と、カーリン、戻って来たダンテさんとここのギルマス、ポリゴンのギルマスにして俺の後見人のドミニク卿、そしてウリサ兄さんがいた。

 みんなが俺の次の言葉を待っている。


「そして、知ってる方もいると思いますけど。俺は最近、変身の魔法を五割がた習得しました。それで」

 と言いながら、今度は精霊ちゃんよりさらに小さいサイズになってみる。


「「「「「おおおお」」」」」

 まず俺は、自分のティーカップに腰かけてみた、意外と縁が薄くて座りにくいじゃん。こういうガチャガチャ流行ってたよな。俺、今ならあのカプセルに入れるだろうな。


「と、このサイズになって、ダクトをくぐったわけですね」


「キャー可愛い。さっきも思ったけど!」

「本当に可愛いな」

 皇太子殿下が俺の頭を撫でてくる人差し指の指先が、俺の頭と同じ大きさに見える。

「アリサがいなくてよかった」はウリサ兄さんの声。


 こうやって、みんなにちゃんとカミングアウトをしとけば、俺がこの能力を悪事に使わないって解ってくれるだろうしね。


 そして、パタパタ飛んで、テーブルの上に組んでいるカーリンの手に座った。


「シュンスケ君、このまま私のカバンにぶら下げておきたいわ」

「おれはマスコット人形ですか」


 ふっと、ドミニクを見ると、初めて会った時のように、手で目を覆って上を向いていた。

「お前、物理的な常識がおかしい。物質の量が、というか」

 俺の方を向きながらぶつぶつ言う。


「シュンスケ君、変身の魔法はな普通、そんなにサイズが変わるものではない。しかももっと地味な、少し年齢を変えるとか、色を変える程度で。ギルドのネットワークにも二十人もいない。変身魔法は変装の上位スキル程度だ。」

 言葉を失っているドミニクの代わりに、帝都のギルマスが教えてくれる。

 二十人とは意外と少ない。本が図書室の地下だったものな。やっぱりレアなんだな。

「普通は少年が大人になったり、体形がが変わる程度の体積や質量の変化だ」

「うん?」

 そして、ドミニクが復活して解説を続ける。

「その大きさは、ほぼ質量がないに等しいのではないのか」

「・・・鶏の卵よりは軽いと思います」

「ははは。シュンスケ、今度、私が外交で出かけるときに旅行鞄にぶら下がっていくか?大陸中連れてやるぞ」

「・・・殿下。セイラード殿下がすねますよ」

 あきれたようにダンテさんが殿下を止めるけど、すねるってどういう事?


 俺はカーリンの手からパタパタ飛んで、改めて自分の席で六歳児の姿に戻る。

 精霊姿の時はなにがあっても決して女性の足下にいてはいけないのだ。行儀が悪くてもテーブルの方が良いのだ。


「いつもの姿も十分小さいのに、さらに小さくなるなんて、俺はどう守って行けばいいのか」

 ウリサ兄さんがぶつぶつ言いながら俺を見ている。


 ガタリと席を立ってドミニク卿が殿下に向かう。

「改めて、このシュンスケの能力はこの部屋の中にいる人たちの間で、口止めさせていただきたい。もちろん、このまさに精霊や妖精に変われる能力ならではの依頼がありましたら、俺かこのウリサ経由でお願いします。シュンスケ直接は出来るだけ控えてください。彼は子どもでこの国では平民ですから、断る事が出来ないんです」


「そのことだがなドミニク、父上が此度のことでシュンスケに爵位を用意すると言っているのだ」

「爵位・・・」

「シュンスケ、あの爆発の魔道具を見ただろう?お前は、この帝都の命と、戦争になるかもしれない隣国の者たちの命も救ってくれたのだよ。そんな功労者には、何かしなくてはならないだろう?」

「殿下」

 そんなこと考えてカーリンを助けたわけじゃない。ただ、クラスメイトだったから必死だっただけで。

 爵位・・・。俺の籍は一応ロードランダにあるのだろうか。これは父さんに聞いてみないとややこしいな。

「あの、爵位じゃないもので代用はできないでしょうか」

「うん?お前は平民なんだろう?」

 返事に困っていると、

「殿下、彼は今は申し上げられない事情を抱えている者でして。その件に関してはお時間が必要です。それに、年齢的にまだ叙爵は無理かと」

 ドミニクから助け舟が。ナイスです!本当の保護者に聞かなければいけないですー


「むう、そうだな、まだ六歳か。先日屋敷はマルガン家のを譲渡したんだよな」

「いえ。いまはまだ手続き中でして」

「それには、シュンスケから金をとるのか?」

「はい、その方向でドミニク卿と話しております」

 支払うよって意思は自分で言わなくちゃ。

「あのお屋敷、シュンスケ君の物になるんだ」

 やっぱりまた、私もお世話になりたいな。


「よし、その費用を叙爵の代わりにするには少ないかもしれないが、こちらで負担できないか、皇帝に言ってみよう」

「「ありがとうございます」」

「あの屋敷は古いからな、もちろんリフォーム代も上乗せしよう」

「・・・嬉しいです」

「よかったな、シュンスケ」

 ウリサが頭を撫でてきた。


 えー、払えるのに。

 ーーー

「面を上げよ。その方が、シュンスケ タナカ だな」

「はい」

 帝国の皇帝は、親しくしていただいている第三皇子や皇太子殿下と同じ、赤い髪に少し黒い青い虹彩、若い時に冒険者をしていて、ランクもAだったからか、精悍な美丈夫だ、南国のタイナロンさんの人間族バージョンか。キラキラの皇帝の椅子から立ち上がってこちらにやって来た。と思ったら、片膝をついて跪いている俺を立たす。

 ・・・ちびっ子に目線合わせてくださったのですね。


「此度の我が国の危機を防いでくれたこと、また、ラーズベルト辺境伯の三女を類稀なき魔法にて助けてくれたこと、ガスマニア帝国を代表して礼を申す」


 クーデター未遂事件から数日後、俺はいつも通学するときに見ていた、ガスマニア帝国の〈赤の宮殿〉の謁見の間は、まるで体育館のような広さで、だが子供の俺の謁見なので宮殿で勤務している文官や武官をしている貴族たちと最小限の事件関係者と、当事者がいる。それでも五十人ぐらいいた。

 俺はガスマニア帝国じゃない外国の人です!って強調できる、今自分にできる最大限の日本人スタイルで皇帝陛下との謁見に臨んでいた。


「なるほど、確かに我が国の者ではない、それは民族衣装なのか」

「俺の生まれ故郷で。特別な時にだけ着る晴れ着です」

「少し後ろも見せてみろ」

「え?はい」

「両腕を横に広げて」

「「「「ほう、なんと」」」」

「このような素晴らしい衣装を持っているとは、お主は、どこか高貴な身分の子じゃな」

「私は、母が申すには生まれて一歳になるころに父と生き別れておりまして、顔も覚えておりませぬ。絵姿はいくつかありましたが。

 私の生まれ故郷では、男子が六歳になるとあちらの神のおわす宮に参り、無事に成長できることを願う行事がありまして・・・平民でもこういう衣装を親が用意してくださるのです」


 そんな、大げさなことではなく、分かりやすく外国人です!って見せるために、母さんが「五歳の時のを忘れてたの!」と言われて数え七歳の時に着た七五三の羽織袴セットを出した。

 それはもうキラッキラッした袴と、黄緑色から濃い緑色にグラデーションされた地模様に空を舞う竜を背負った羽織だ。着付けは剣道や過去に居合のデモンストレーションしたときも袴を履いていたし、かっこよく自分で着るために動画も見た。

 そして、お蔵入りだと思っていた、真っ白な日本刀と脇差セットも差す。結局皇帝の部屋に持ち込めなかったけど。

 刀身がちょっと長いけど、抜けるし、バランスが変だと思っているのは俺だけだ。

 黒い髪の毛を今回は長くして、上の方で・・・アリサに結んでもらった。これでお侍ちゃんになって謁見に挑んだわけだ。


「なんと、それは国全体が豊かという事じゃな」

「ま、まあ、子供故、国の事情までは存じませんが・・・

 しかし、父とは最近連絡が取れまして、今度の学園祭の私の劇を見に来てくれることになったのです」


「ならば、その時に改めて、御父上を交えてそなたへの礼について相談してもいいか」

「はい、おねがいします」


「それにしても、美しい。ウリサ、シュンスケの剣を持ってまいれ」

 皇帝陛下が、入り口の扉に向かって叫ぶ。

「はい!」

 謁見の間には武器は持って入れなかったので、ウリサ兄さんに預けて扉の外に控えてもらっていた。陛下は冒険者でもあったのでその関係で、俺たちが帝都に来てからは、時々ウリサを近衛兵を補うように護衛に依頼していたらしい。さすが兄さん、陛下の覚えめでたい冒険者だ。


「珍しい剣を持っているようだが、シュンスケ、剣舞はできるのか」

「・・・まあ一応」

「今少し見せてくれぬか。のうアスランティックにセイラードよ。

 それにカーリン嬢」

 謁見の場には、被害者と事件の時に対応した皇太子殿下と学友である第三皇子殿下もいらっしゃいます。

「「「はい、もちろん」」」


「わかりました。兄さんこれ持って」

 刀を腰に差してから、羽織を預けると、アイテムボックスから長めの紐を出して襷掛けする。日本刀の剣舞には羽織や袖が邪魔。そして、草履も脱ぐ。

「おお、何やら勇ましい格好になりましたな」

「腕が白ーい」

 こら、カーリン台無し。


 スマホに時代劇のテーマ曲をセット。詩吟や日舞の曲よりはこっちの国にはいいだろう。


「では、始めますね」

 軽快なブラスバンドの曲が始まる。

 時代劇のテーマソングって、なんで西部劇風というかブラバン向けの曲が多いんだろう。日本での小さい時まだスマホを持たされてなくて、変な時間にテレビをつけるとやっていた時代劇。まあ、あれを見たから剣道始めたんだけどね。いつものように音量を黄色ちゃんに調節してもらう。


 出来るとは言ったけど、習ったことはない。きちんと剣舞を稽古されている人には失礼だけど、居合の型を組み合わせた即興創作ダンス。二度と同じ振りが出来ない感じで。


「「「「おおーっ」」」」

「かわいい」

 カーリンの語彙がいつもと同じでほっとするぜ。


 最後に懐紙の代わりに入れていた束ねて畳んだコピー用紙を風魔法を使って投げて下段の構えからジャンプして刃に風魔法を乗せて切り上げる。

 露払いのしぐさをして刀を鞘に納めて、俺の即興創作居合ダンスは終わった。


 正座でお辞儀。

 とっ散らかしたコピー用紙は、魔法に見えているかもしれないが、黄色ちゃんが集めてくれている。いい子や。


 謁見の間に喝采が響く。

「お粗末様です」


 みんな喜んでくれたならいいね。頑張って着付けした甲斐があるってもんさ。この袴は糊が効きすぎていて踊りにくかったけどさ。


「皇帝陛下」

「うむ、申して見よ」

「私とは生き別れた父ですが、陛下とはお会いしているはずなんです。ですから、私への褒美については、今週末の学園祭の後に改めてお願いします」


「なるほど、そうだな。お前はまだ六歳だな。お前の父親に会えたら、我々がどれだけ助けられたかを伝えよう」

「はい」


 そうして、アドリアティック二世皇帝陛下とのドキドキの謁見が終わった。


BGMには、暴れん坊なあの人の殺陣のシーン

または 私服忍者の同心のオープニングとか

恨みを晴らしてくれるあれとか

をイメージしております

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