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55【寝ても覚めても精霊ちゃん】

寒いから、暖かいところで読書をどうぞ

 クラスメイトに、変身魔法だとか言いながら、エルフや精霊の姿を見せていた俺。

 「シュンスケ、お主はこれも読んどきなさい。まったく、これを先に習得するべきじゃろ?」

 って珍しくあきれ顔の教授に渡されたのは、魔法の本で〈お猿でもわかる付与魔法〉だった。

 付与魔法は、ポーション瓶を作るときや、冬の討伐の時に、必要なところだけをピックアップして、まあ、魔法陣だけを取り出して使用したのだが、そういえば基本を勉強してなかったな。

 その〈お猿〉シリーズの本には付箋が貼ってあって、開けてみると、

 〈布・衣類に出来るエンチャント〉〈布・衣類に出来るエンチャント強力〉←こっちじゃ!

 うん、温度調節はわかるけど、あ、これか。〈強力〉の方に教授の付箋がもう一つ。

 〈サイズ調整〉これね、変身の練習の前に見るべきだったね。単純に付与しとくっていうのを忘れていたわ。

 よし、制服一式にサイズ調整と空調のエンチャントをしました。これで、卒業まで買いなおさなくてもいいぜ。付与は洗っても大丈夫だそうです。すごいね。


 家に帰って、制服のままもう一度、十八歳の田中駿介になってみた。おお、ローブ着たままだったから、高校の時というより、某魔法学校のコスプレを思い出す。制服も大きくなりましたね。眼鏡はないままです。よかった、目が悪かったのも戻ったらちょっと嫌だったもんね。伊達眼鏡ぐらいは用意してもいいか。あ、俺の制服のボトムはハーフパンツなんです。冬とか三年生以上は長いストレートパンツの方がよくない?大きい友達はみんなそうだもん。長いのを用意しなくちゃ。なんでハーフパンツだったんだろう。

 ウエストポーチから、日本ではいていた高校のパンツをはきなおす。うん。

 部屋にもともと置いてある姿見で前髪をちょいちょい触る。


 コンコンコンガチャ

 「シュンスケ、あ、ごめんなさい、お友達?学校の先輩さんですか?」

 ははは、うろたえてやんの

 「アリサねえちゃん、俺だよ。駿介だよ」

 「え?シュンスケ?」

 「うん、魔法でえーっと十八歳に変身中」

 「おーいシュンスケ、飯に・・・って、え?」

 「ウリサ兄さん、このイケメン君がシュンスケだって」

 「魔法の練習でね」

 「おお、すごいじゃないか。声も少し変わってるし」

 「今度、この格好がどのぐらい長く続くか計ってみたいんだけど」

 って話しながら、六歳サイズに戻って、制服を脱いで、部屋着に着替える。

 小さくなってからじゃ、アリサのまえでも平気だしね。制服以外はサイズ調整付与してないし。

 「うん!これよこれ。

 大人のシュンスケ、かっこよくてドキドキしたけど、やっぱこの可愛いままでいてほしい!」

 って抱きしめてきて、頬ずりしてくる。

 アリサさん、俺さっき大人だったんですけど?


 食事をとりながら皆で話す。

 「へー今は道具なしでその黒目黒髪にしているんだ」

 すっかり赤茶色ヘアのイケメン、ゴダ君も一緒にご飯。

 「うん、ほら、ドミニク卿にもらった石も外しているし、ピアスも取ってるでしょ?」

 「ほんとだ、ずっと魔法を発動していて、怠いとかない?魔力のある人って、減ったらそうなるんでしょ?」

 「あのピアスも、ずっと俺から魔力をすこし取って動いていたみたい。いまもそんな感じ」

 「へえ、ずっと魔力をね。シュンスケじゃなかったら出来ない事だったんだな」

 ウリサ兄さんは魔力はあるけど、使えるほど量がないらしいから、発動し続けることが出来るのが規格外だというのを分かっている。

 「だからね?セバスチャン、黒くない俺を見ても驚かないでね」

 「大丈夫ですよ、逆に楽しみにしていますよ。ほら、ホールに南の島でチェンバロを弾かれているエルフ姿の坊ちゃまの絵がありますから、どんなお姿かは存じております」

 「あ、そっか、そうだね」

 「私も楽しみです」

 侍女のミアも言う


 「でも。ドミニクのオッサンのGOが出るまでは、外で話さないでくださいね」

 ウリサが釘を刺す。

 「「わかりました」」


 次の朝、週の休みだからと、アラームをセットせずに眠っていた俺は、カーテンや窓を開けてくれるセバスチャンの足音を聞きながらまだ微睡んでいた。


 「おや、今日はエルフでいらっしゃいますね」

 「あ、セバスチャン、もう朝なんだ」

 「はい、今日はどうされます?おや、目が開きましたね。なるほど、本当に美しいですね」

 「あ、そうか今日ピアス外したままだった」

 天蓋付きのベットに寝た俺は、忘れていたんだ。完全に眠っていたら、魔法を意識できないことを。まあ、セバスチャンには昨日言ったし良いよね。

 「ふわあ」

 ベッドに座って上半身だけ伸びをする。

 「しゅ、シュンスケ坊ちゃま?その背中の」

 「あ、出てる?翅」

 「ええ、六枚ありますよ」

 「あー六枚かー」

 またロングヘアになってしまった髪や背中から少し離れるように翅が出ている。

 「あれ?俺今あおむけで寝てたよね」

 「はい」

 もう一度仰向けに寝転ぶ。

 「ああ!翅が下敷きに」

 いや、全然何ともない。ついでにセバスチャンにゴロンと背を向けて横になってみる。

 横になるとやっぱり枕と耳が干渉するじゃん。昨日はあおむけで寝て寝返らなかったのかな。でも翅は平気。

 「どう?また翅出てる?」

 「はい、ちゃんとつぶれずにありますよ」

 「あーそれにしてもだめだったなー」

 座りながらつぶやく。

 「何がですか?」

 今日着る服を用意してくれながら、セバスチャンが聞く。

 「自力の魔法は、熟睡すると忘れちゃうね」


 それに、色々変身を試しているうちに、本当の姿がこの翅付きがデフォルトになっちゃったみたい。我ながら変な刺激をするんじゃなかったぜ。やっぱり精霊(スピリッツ)ゴッド・・・ゴッドの方が分かんない。こっちは怖いから突っ込みたくないしな―。


 「しょうがありませんね、やはり普段は魔道具を身に着けておいてくださいませ。この国では特に。普通のエルフでさえ珍しいですし、そのような翅をもったエルフは聞いたことがありません。今の坊ちゃまは殊の外お美しいですから、男子でも構わずさらわれますよ」

 おおう。そうだ。ニッポンみたいに治安がいいわけじゃないから、最近は油断していたけど、ポリゴン町でも初めのころはウリアゴ達がずうっと手を繋いで俺を守ってくれていたよな。

 こんななりじゃさらに危ないよな。


 姿身を見ながら、着替えをし、ピアスを装着して、変身用の石を付けた身分証の紐もぶら下げる。


 「よし」

 「そちらのお姿の方が落ち着きますね」

 「でしょう!俺もですよ」

 「美しすぎて、消えてしまうかと思ってしまいました。薄ら光ってましたし」

 「やっぱり、変ですよね。おれね、エルフなじゃいみたいですよ。さいきんスピリッツって名前の入った種族になっちゃってました。それで翅が。しかも服の上に出るので魔法を使わないと隠せないみたいです」

 「なるほど、そうなんですね。ではますます希少価値のある坊ちゃんなのですから、くれぐれも気を付けて過ごしてくださいね。今日はポリゴン町に行かれるのでしょう?」

 そうだな、セバスチャンには隠しちゃうより、ちゃんと言っといた方が、俺の最善を考えて教えてくれるかもしれないな。

 「セバスチャン、これは、ウリアゴの連中は多分ウリサ兄さん以外は知らないんだけどね、セバスチャンは俺の父さんが誰か知ってるでしょ?」

 「はい」

 「それでね、父さんのことだけでも大変なんだけどね、母さんもね、父さんより大物だったんだよね」

 と言ってステータスを見せる。

 「ここ、これ、この加護をくれている人なんだよ。俺の実の母親。それはね、ドミニク卿も知らないんだ」

 「坊ちゃん、いやシュンスケ様」

 そう言って俺の前で跪く。

 「やだな、教授みたいなことしないでよ。それは無しで」

 「このお屋敷が、正式に俺の名義になって、これから俺がドミニク卿から変わってセバスチャンたちの雇い主になるでしょう?」

 「はい、坊ちゃまにお仕えできることは改めて誇りに思いますよ」

 「そうじゃなくって、まずは、この屋敷とそれにかかわる人たち、セバスチャンたちを守るぐらいはしなくちゃねって。主ってそういうものでしょう?親に恥じないようにちゃんとしていかなくちゃね」


 学校では情けなくべそをかいたけど、俺の境遇が良いか悪いかは俺の気持ち一つだよね。

 なにより、豊かな暮らしをさせてもらっているのは確かだしね。

 

 「じゃあ。今日は昼から久しぶりに教会と、その前に朝は蜂の巣の件だ。今日はポリゴンで朝ごはん食べるね。お留守番宜しくです」

 時計を見ると七時過ぎ。朝飯前のお仕事だから早くいかなくちゃ。

 「はい、わかりました、行ってらっしゃいませ。くれぐれも気を付けてくださいね。」

 ノックをして入ってきたミアに、大きなバスケットを渡される。


 今日も屋敷の玄関ではなく部屋の扉から送り出される。



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