54【昔のちびっこは へーんしん とぅ だぜ(昭和の特撮特集ってので見た)】
俺は再び図書室の地下閲覧室にいる。今の全学生で、ここに入れるのは俺だけらしい。教授は入れる。
地下一階まで行ける人はほんのちょっと居るんだけどね。まあいいや、いつも貸し切りです。
この際だから、もうちょっと変身魔法を極めてみよう。
魔法だから、イメージが大事。それに、魔法と言えば変身だよね! え?それは魔法少女?いいじゃん、魔法少年がいてもさ。
俺の本当の姿は、白っぽい緑銀色の髪の毛と体毛、明るめの緑色の光彩。鏡でじっくり見ると色んな色が入り乱れている。緑がメインで、黄色、水色、白、そしてちょっと赤もあるね。お肌はうん、メラニン色素無いのかな?ってくらい白い。不健康な感じではないのは不思議ではある。あ、顎らへんの静脈が透けている。そして十五センチぐらいの長さの少し尖った耳。先っちょはそんなに鋭い感じではないよ。
ほんの少しつってるおめめは、我ながらぱっちり、髪と同じ白っぽいまつげがふさふさしている。だから目の輪郭?はぼんやりしている。今は髪の長さが腰ぐらい。
先日から、お猿以外の色々な変身魔法の本も読み漁った。
母さんは動物にもなれるんだしね。
重ね掛けして何かがあったら怖いので、首のひもと、ピアスの二つの人間族への変身グッズは仕舞っている。まあ、三属性の特殊な組み合わせは分かったしね。
パンツ一丁はあれなので、よれよれのランニングシャツと、高校の時に履いていた短パンをひもで緩めにしております。
前には姿見。
そして、イメージを固めるようにスマホ。
重ねるんじゃなくて、一発でそれに変化すればいいんだよ。・・・気合で?
まずは、いつもの俺のデフォルトを。結局まだ散髪していないですが、根性で短髪にできないのか?自力で、いつもの姿に戻る。
よし、〈田中駿介日本人六歳〉に変身!
鏡を見る。おお!出来た、これこれ、ここにきて一年間の俺のデフォルトはこれ!魔道具なしでやったじゃん。髪も、うん引っ込んだ!でもよく見たらあれか、向こうの姿?こげ茶色だな、瞳も黒ではない。明るめのこげ茶色だ。すごく久しぶり。本当に昔鏡で見ていた色だ。
んで、キャンセルする。
ロングヘアエルフになった、こっちが元に戻ったって感覚はまだないけどな。
まさか、あの時のチョップは日本人に変身していたのをキャンセルされたんだったりして・・・。
つぎは、ここに来る前のクリスマスイブの俺だ!
よし、〈田中駿介日本人十七歳〉に変身!
・・・やったぜー
俺の理想に全然足りない、一六五センチの俺。まあ、そうだったんだけど。いま思えば、一六五センチでも十分長身だ!六歳に比べれば!腹筋も復活!ランニングシャツをめくって確認。
そしてキャンセルする。
つぎは大人のエルフ、いや、精霊王だ。
外国やそれこそ父さんの国に行けばエルフはたくさんいるんだろうけど、俺は自分以外には教授しか知らない。だから、ここはイメージを固めるために、コスプレイヤーさんの画像をもう一度検索。・・・ちょっと違うけど、頭の中で少し修正。
よし、今度は〈シュバイツ フォン ロードランダ 精霊王 五十四歳〉に変身!
これって、こうなりたいが実現する夢のような魔法・・・
目を開けると、そこには「これぞ妖精王」って感じの男が立っていた。
うん、身長はありがたいことに、日本人の時よりは少し高いです。そして細いけど引き締まっている。
髪の毛は尻の下まである。長い。こんな長髪シャンプーとかドライヤーとか大変そう。
そして、背中から、生えているんじゃなくて、磁石で反発する玩具のように…翅が。イメージしていないのに八枚ついている。下の腰に近いところは、翅と背中の間にランニングシャツの後身頃が挟まってる部分もあるのに。
腕を伸ばして、その一枚の羽を触ってみると、なんか指には触った感じと触られた感がある!背中から浮いている羽なのに、神経があるというか、感触を感じる。ということはまさか・・・
うぉー動かせたー。しかも、浮力が付いているのが分かる。
“きゃー おうじ まえのおうさまそっくりー”
“すげえ!”
“やーん なつかしい”
“ふくがいまいち だけどな”
君たち、見かけによらず・・・何歳なんだ?
地下の閲覧室の空をすこしだけ飛ぶ。この翅で飛べるわー。魔法で飛ぶのとまた違うな、しかも楽に飛べちゃう。こりゃいいぜ。
そして、ふわっと床に戻ろうと足を着こうとしたとき入り口で座り込んでいる人が居た、
座っているのじゃなくて、跪いていたのだった。
「ブラズィード教授」
「おお、王よ」
「教授、俺です、駿介ですよ」
「そ、そうじゃったな。すまない、あまりにも御父上に似ておられたのじゃ。それにその翅」
「ええ、すごいでしょ?動かすと跳べるんですよ」
ぱたぱた
しばらくして俺は、小さいエルフ姿に戻って、学園の制服を着る。
「こうして、実際に目にすると、ロードランダ王は伝説の精霊王だったのじゃな。儂がお目にかかったのは、建国される八百年ぐらい前じゃったか、すでに、ハイエルフとしていらっしゃっての、しかし、人として暮らす経験が少なかったので、儂が色々とサポートさせていただいたのじゃ。建国後二百年ぐらいまでな」
そうか、教授は父さんの右腕のような人だったんだね。
「お主は、御父上の元の精霊王としての性質をも受け継いでいるのだな」
「そうかもしれません。俺がいま試した変身の魔法は、異世界で暮らしていたころの姿と、シュバイツ フォン ロードランダの未来の姿になるという事でした。俺は将来、エルフじゃなくて妖精の方にジョブチェンジして、みんなの前から消えてしまったりするのでしょうかね」
服を着てから、黒目黒髪短髪に変化してから、黒い石を外した身分証のひもをかける。自分の魔法だけで、変身状態を維持する訓練だね。
「儂にはわからぬ。ひょっとしたら、お前さんが選ぶべき時が来るのかもしれぬ。まあ御父上のことは気にせず、悔いのないように好きな方を行けばいいのではないか?」
「そうですね」
教授と話をしたいので、久しぶりに螺旋階段をゆっくり歩きながら地上を目指す。
「それとな、変身の魔法は、犯罪防止のために、一般の者が使えることは冒険者ギルドに報告する必要があるのだ。お前さんの場合は、ドミニクが届けていると思うがの。まあ、王族の上の方の者はある程度許されているがの。その場合は外務大臣とかそういうものが届けるのじゃ」
そうだな、他人のふりして悪いことはしちゃいけない。悪いことを考えている奴にはやばい魔法だな。
「あとは、もし、女性に変身したときに、気を付けることがあるのじゃ」
と言って、振り向きながら薄っぺらい冊子をわたされた。
〈女性のための保健体育〉
「女性になるときは、必ず読んでからじゃよ」
六歳児に渡すかー!と思いながらも階段を上りながらパラリパラリ。
ご丁寧にカラーイラスト付き。
だって、興味はあるもん。え、女性側のエッチの仕方。は?う、うわ、男性側でも未体験なのでパス!俺はチュー止まりだったし。でも赤ちゃんの絵は可愛い。
「え、ここまで完璧に変身なんてできるんですか?出産とかまで?」
「お前さんは、ほれ、たぶんこの世に二人とない存在じゃから。儂にも何があるかわからんし。」
「俺は、変身はするかもしれないけど、性転換まではしませんよ!」
俺の物語はまだそっちのジャンルではないはずだ。
地上に出る寸前に教授に断りを入れて、ポリゴン町の冒険者ギルドへ瞬間移動ぶ。
受付ではちょうどセレさんが冒険者の対応を終えたところだった。
「あら、シュンスケ君。へえ帝都の学園の制服姿、似合ってますね。
それで、どうされました?」
「俺が変身魔法が使えるのが登録されているか分かりますか?」
「ちょっと待ってくださいね・・・はい、登録されていますね」
「よかった」
・・・けどなんで?
「なにに、変身するんですか」
実は常に変身状態なんですとは言えないけど、
「今度、学芸会で少し披露するので」
「なるほど、演劇とかに応用するんですね」
「そうなんです。それだけなんで、どうもありがとうございました。じゃ」
聞くだけ聞いて、学園に戻る。
「と、いうわけで、あの劇に使えそうな変身の魔法を会得したから見てみる?」
魔法学科の教室で、ギャラリーをカーリンと殿下と護衛だけにしてもらって、お披露目。
先日泣いていたのは、変身の魔法が失敗したから悔しかったからと言ってある。
子供っぽい言い訳になってよかったぜ。
またもや、ランニングシャツと短パンにせめてカーリンから隠せたらということで、大人サイズのローブを羽織る。裾は引きずってます。
小さい妖精は舞台には不向きなので、今のサイズの妖精を。正確には精霊だけどな。
エルフに戻って翅をはやす。妖精王バージョンになってから、エルフでも人間でも、どのサイズになっても、翅は自由自在に出せるようになってしまった。枚数も二枚から八枚まで変更可能。子どもサイズで八枚はうるさいので、四枚にしました。
変身姿と嘘を言いながら、初めて見せるエルフの姿。そして翅。
翅のイメージを固めるために目をつぶってたから、恐る恐る目を開ける。
「きゃーシュンスケ君。まじ妖精!」
「おおっ、スゲーな」
“みどりいろだー”
“おうじが あたしといしょー”
“いつにもまして かわいいぜ おうじ”
「この、翅は幻影か?」
と言いながら殿下がローブにふれる。
「ああ、触れないんだな」
「そういうところもリアル」
「触れないですか?俺はつかめますけど」
と言いながら右手を背中に回して右の上の翅を摘まむ。
「おもしろいな」
手を離した俺は、ついポジションを整えようと翅を動かす。
「やーん動く」
「ははは」
「これはどのぐらいの時間持つんだ?」
「えーっと、半日?」すみません嘘ばっかりで、翅はともかくこの姿が俺なんで一応。
「じゃあ次ある?」
「はい、いきますよ」
次は五十代(見た目は十八歳)の俺、翅八つ。
「きゃー、神秘的!かっこいい」
「おお、史実通りか、翅が八枚ある」
「俺より少し低いけど、背が伸びましたね」
一八〇センチのブリドには届きません。
「シュンスケ殿、それで飛べちゃうんですか」
なぜかもうちょっぴり浮いちゃっている。ブリドと同じ目線になる。おお、初めてブリドのアップを見たぜ。ん?なぜに赤くなる。
「ちょっと待ってくださいね」
翅を動かしながら空中へ浮かぶ。
「こんな感じですー」
「声もちょっとだけ大人っぽいな」
少し喉仏も復活しております。ムスコは・・・内緒です。
「ま、シュンスケはもともと飛べるしな」
「しかし翅を動かしながら飛ぶなんて、どっちにしても器用ですな」
「ねえ、シュンスケ君、いっそ〈ヴェール ドゥ シュバイツ劇団〉でも作って、世界中を回らない?」
「俺がブランネージュ王様役だとして、他の女神さまはどうすんだよ」
「それはオーディションしたらいいだろう。よし、おれが支配人しよう」
「殿下、何を本気になってるんですか!俺はしませんよ!他にしたいこともあるし。
それに、本人に許可がいるんじゃないですか?こんなこと」
俺的にはかっこよく神秘的?になったつもりなのに、中身が俺のままだからか、いじられるのは一緒なのか。
「でも、ありがと、シュンスケ君、これで君の衣装のイメージがめっちゃ湧いてきたわ!」
「仕立てるのは外注だけどな」
「もちろんよ、私たちがお裁縫できるわけないじゃない。領地で習ったのは刺繍だけよ」
「それにしても、大人のシュンスケ殿はなかなか良い躰ですな」
「あ、分かっちゃった?ほら、腹筋が、えへへ」
ペロンとローブの下のランニングシャツを某声優さんのようにめくってみる。
「キャー」
と言いながら、カーリンが手で顔を隠す(ふりして指の隙間から見てんじゃん)。
「あ、失礼しました」
ランニングシャツを整えながら、六歳サイズの黒目黒髪に戻していく。俺のデフォルトに。
「えー、戻っちゃった」
「ところで、他の女神さまのお姿は、どんな感じなんですか」
カーリンが風の女神をやってくれるらしい。
「カーリンとラブシーン楽しみだな」
いろいろ仕返しだ。
「ちょ、シュンスケ君」
恥ずかしそうな顔をしながら、スケッチを俺に押し付ける。
おや真っ赤。楽し。
ふんふん、これが水の女神で、これが土の女神?
「土の女神さまはちょっと違いますね。髪の毛は長くて黒くて、
こういう服ですよ。」
と言いながら、空いたところに平安時代風の女性を描く
「え?そうなの?」
「ええ」
「なんだか難しそうね」
「同じ形の服を色違い作って重ねるだけですよ」
と言いながら、何故か持ってる、おさげ髪のひな人形の女雛様をウエストポーチから出す。(ひな人形は七段飾りでセットされた状態でポーチに入ってた)
「まあ、なんてきれいなお人形。え?土の女神さまってこれ?」
「このイメージでお願いします。この人形はお貸ししましょう。
でも肝心の風の女神さまのイメージは知らないなー」
「それはこれよ」
と言って、スケッチの一枚を見せてくれる。
「ラーズベルト領の教会は、ローダ様がメインの神殿なの。だからこういうお姿で」
「へえ、Aラインワンピースに何か長い領巾というか薄手のショールの組み合わせか」
そういえば、母さんが良く着てたな。あの日の冬のコートもそんなシルエットだな。好みの服はずうっと変わらないんだね。
ヘアスタイルも自然なエアリーな長めの。ああ、そうそう、仕事中は束ねたり団子にしているけど、オフはこんなだね。
そういえば以前に金髪にしてたこともあったっけ、カラーリングしたとか言って。
「あれ?これここんところがレースで」
「そうそう、クリーム色か淡い黄色がいいかなって」
「ひょっとしたらこれかな」
ウエストポーチから母さんが時々来ていたノースリーブのワンピースを出す。まあ、もともと母さんのポーチですから、母さんの服が入っていてもおかしくないねうん。
「シュンスケ、これを着るつもりで?今度女性に変身を?」
「殿下!違います。このポーチは母さんのなので、母さんの洋服です」
「え?これ、教会の像は真っ白だから色は解らないけど、レースの位置とか模様とかそっくり」
「たまたまでしょ。ついでにショールはこれぐらいかな」
日よけと言っていた黄色い花がらのストール
「そうか、それを着たカーリンとラブシーンだな」
ラスが俺をからかう体でカーリンを攻撃する。
あらら。また真っ赤になっちゃった。俺はもうこんなに小さくなってるのに。さっきの姿を覚えてるんですかね。
調子に乗って服を出してみたけど、そうか、母さんに抱き着くのはありだしね。なんてったって息子だから!うん、照れないぞ。
「これを演るって言ったのはカーリンだし、がんばろうね」
あざといスキルあったっけ、意識してカーリンににっこり。
「うっ、今の小さいシュンスケなら大丈夫よ」
しかしすぐに反撃に合う。
照れ隠しに抱き着くのはやめろ!
「ちょ、カーリン、俺は大丈夫じゃないー」
セ、セクハラ反対!
お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪
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