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50【異世界では六歳でそんな大きなもの買えるの?】

 「シュンスケ、俺はこれからも卒業までは責任をもってお前の勉学に出資する」

 ある日、ポリゴン町に来た俺は単独でドミニク卿にギルマスの部屋に呼び出された。


 副ギルドマスター兼秘書のセレさんに入れてもらった紅茶に、茶菓子のパウンドケーキを出したのは俺だ。南国で買い込んだドライフルーツを自前(母さん)のブランデーに漬けて刻んだのをたくさん入れて焼いた俺の自信作だ。もちろん俺とドミニク卿に切り分けた残りは、セレさん経由で「ギルドの女性職員たちに」と預けてある。


 ドミニク卿は、北の国でえらいさんをやっている俺の父さんからの養育費をまだ受け取ってくれていない。ある意味?それで俺を縛っていると捉えることもできるかもしれないが、ウリサが言うには、孤児院の子らにも、帝都の学園ほどではないけど才能が有りそうだったり、将来性がありそうな子には積極的に支援をする、貴族の鏡のような人だ。


「だが、シュンスケ、お前の資産は結構なものになっているのじゃないか」

 ・・・そうなんですよ!先日南の国から、白鯨のムーさんやヴィーチャ姫との絵とともに付いていたのは、

 セイレンヌアイランド共和国の名誉国民の証書と、アジャー島の中の小島丸ごとと、そこの建物の権利書だった!

 とうとう、夢の一戸建てを手に入れたのだ!4LDK+1LDKの二棟あって、プールとビーチと船着き場付なんだ!

 しかも、無償で管理もしてくださるそうだ。

 それに、これまでの冒険者としての稼ぎ(ミノタウロスやクラーケンも入ってます)はもちろん、やんごとなき姫様から頂いたエリクサーのとんでもない単価の販売代(まだ実際に売ったのは小さい瓶で十本分)とか、俺の口座がすごいことになってると思う。途中から怖くて見てないけど。


「それでな、このガスマニア帝国にもお前名義の家を買わないか?」

「俺の家ですか」

「お前をこの国に縛り付けておく、というわけではないぞ。お前の国にいつかは帰らないといけないことも分かっている。しかし、お前なら帝都にも自分自身の拠点があった方が、もっとのびのび活動できると、思うんだ」

「・・・そんな気もしますけど」

「その拠点を何とかこの国にも持ってほしいと思ってな。それは俺だけの望みではない、殿下達はお前の親のことは知らないが、ガスマニアにずっと住んでほしいとは言っていた。

 案としては、お前に貸している王都の屋敷の離れをお前名義に譲渡するか、この、ポリゴン町に、ウリアゴの拠点も兼ねて、それなりの土地と家を買うかとかだな」

「ふむふむ」

「さらに、両方手に入れるということも、もう可能だろう?」


 ドミニク卿って、商売上手いな。その気になってきたじゃん。

「でも、滞在していない方の管理が・・・」

「ポリゴンの方は、孤児院のやつを雇ってやれば良い。お前の秘密のためには魔法で契約して雇った方がいいしな、孤児の方が都合がいいだろう」

 あーあの子らの就職先かー!

「あの、急ぐことでもないですよね」

「もちろんだ」


「ちなみに、あの帝都の離れはおいくらですか?」

 白金貨三枚だ。税金は年に金貨二枚ぐらいだな。

 一、五億円と二百万円・・・確かに今の俺には余裕だ。

「セバスチャンさんとミアさんの雇用契約も譲渡してくれますか?」

「もちろんだ、セバスチャンはもともと定年後の再雇用で雇っている」

そのうえで、まずは、セバスチャンに執事業務を教わってもらう人と、ミアに侍従や侍女の仕事を教わってもらう子を研修という形で離れで暮らしてもらい、数年後にポリゴンに作る家を管理してもらうとかできたらいいな。

 ぶつぶつ言う俺を見てドミニク卿がニヤリとする。

「決定だな」

 あっ口に出ていた。

「執事はな、ウリサがお前が学園を卒業するころには使えるだろう」

「え!」

「お前を拾った責任と言うわけではなくてな。妹従弟のためにも転職を考えてるとか言ってたしな。まあ若いうちは冒険者と家の事と両方やれば良いんじゃないか?」

「なるほど」

「俺も、昔は冒険者をしてて、やめる前には、ポリゴン町の面倒を見ることになってたからな」

「たしか、ゲール師匠とパーティー組んでらしたんですよね」

 Aランクパーティーとして大陸中で活躍してたって、ギルドの古株冒険者が二人の武勇伝を幾つか教えてくれた。

 でもなー、ウリサは兄ちゃんポジションでいてほしいんだけどな。


「まあ、そうと決まれば、ポリゴン町の拠点でも決めとくか。土地だけでも押さえたらと言いたいけれど、ここは帝都と違って、誰のものでもない土地がいっぱいだ。強いて言えばマルガン領だがな」

「マルガン家から買うという事ですね」

「所有権だけ持って、家を建ててからほんのちょっと税金を払っていけばいい」


 一気に三つも不動産を持つことになってしまった・・・。五歳で始めた異世界生活の初めの大人の階段はこれですか。うん、パソコンに家計簿のソフトを入れよう。


 ギルドのレストランコーナーに行くと、アリサねえちゃんとセレさんがいた。

 ウリサ兄さんとゴダは、ぎっくり腰になって動けなくなった農家のご主人のところへ春に向けた畑起こしの手伝いを依頼されて朝から出ている。


 冒険者ギルドには空間魔法と風魔法を利用したファクシミリみたいな通信の魔道具があって、王都のギルドにご指名でウリアゴに依頼が来たので、俺の空間魔法で一緒に来た。

 今日は学園はあるけど、俺が学ぶ教科が丁度なかったからまあ、休みみたいなものだな。


 アリサねえちゃんと地図を持ったセレさんと一緒にポリゴン町の冒険者ギルドを出る。

 南国から帰ってしばらくは、寒くて寒くて、ゴダも風邪をひきかけた。うん馬鹿じゃないですよ?あの子も。


「まだ寒いねー」

「帝都と違って建物が少ないから、風が強いのかしら」

「川の水が流れてくるから寒いのよ」

 そう言いながら、町の門に続く道に並行するように流れている川の側に近寄る。

 道に沿って建っていた家屋が途切れる。もう少し歩いていくと、ウリサ兄さんたちが作業している畑につながるのだ。ポリゴンの町は害獣から守るために門のある壁の内側に畑がある。外側にも農園はあるけどね。


 ポリゴンの町はそれなりに広さはある。ただ、教会やギルド周辺に建物が集まっているだけだ。


 川幅は十メートルぐらいあるだろうか。河原には丸い大きめの石がゴロゴロしている。


「アリサねえちゃん、ちょっと川を覗いて来てもいい?」

「え?危ないわよ!私も行く!」

 付いてきちゃった。そっちが危なっかしいじゃんもー

 手を繋ぎながら川岸へ水を覗きに行く。

「あ、魚がいっぱい」

「小さいのもいるね」

 足元の石の間を小さなカニが逃げていく。


 この川は、ポリゴンの町の飲み水になっていて、だから、誰もゴミなんか投げないし、皆できれいな状態を保っている。うんすごいね。どこかの世界の人たちに見せたいよ。


 災害の多い日本では川の側は嫌煙されがちだけど、ここは違う世界だもんね。

「アリサねえちゃん、ちょっとごめん」

 と言いながら彼女をお姫様抱っこして、浮き上がる。

 上から見ないと分かんないもんな。今のスマホのMAP機能にはぐるぐるマップみたいな航空写真はない。

「え?なに」

「ここどう?道と川の間で、ギルドもそんなに遠くないし」

「いいわね」

 この町というより、ガスマニアの国は道の下に下水が設けられている。

 飲み水と混ざらないようにきっちり整備してされているのだ。

 この川は、やがて帝都に流れる河につながっているから。

 ちなみに道の方が南側で横断しているので、南向きの土地になるね。


 下水は川と同じように最終的には海に流れ着くのだが、途中に浄化の魔道具がいくつもあって、環境にやさしいライフラインとなっている。


 魔法ってすごいぜ。


 地上に降り立ち、セレさんに言う。

「ここらへんで」

「わかりました。ではこの魔道具を四隅に差してください」

 と言って、五寸釘にしか見えないものを四本渡された。


 まずは町に寄った川岸のところ。

 グサ

「もっと埋め込んでください」

「わかりました」と言って、釘の頭を押し込むと

 ピコーン って音がする。これでいいのね。

 そうして、次は道の境目。これが奥行きってことで、十五メートルぐらいある。

 グイ

 ピコーン

 おお二本の釘の間に緑色の線が光り出した。

「次は間口だな」

 道に沿って十メートルぐらいのところで刺そうとしたら

 ブブー

「うわ、欲張りすぎた?ごめんなさい」

 少し狭めて、また刺そうとした。

 ブブブブー

「うわ、もッと拒否された?え?反対かな」

 じゃあ、ま今度は十五メートルぐらいで刺そうとするとまた

 ブブー

 拒否されてないけど、まだ駄目なんだな。

 それからは一メートルぐらいずつ刺しては拒否を続けていた。

 二本目に差した釘のところにアリサに立っててもらっていて、スマホで距離を測りながら進んでいた。

 ピコーン

 ここならいいの?もっと遠くは?

 ピコーン

 大きい方がいいのか。しかし、手入れがしやすいのは小さい方だよな。

 少し戻って二回目のピコーンの位置に戻って釘を押し込む

 ピコーン

 二十五メートルもあるよ。しょうがない

 そして、また川岸に釘を刺す

 ピコーン


 緑のレーザーみたいな線が長方形に描かれた。

 対角線にも線が引かれている


「シュンスケさーん、対角線の交差している中央に立ってくださーい」

「はーい」

 中央に立った途端、俺から魔力が少し引き出されて、レーザーで囲まれた土地全体がぱっと光って、線が消えた。釘は残っているのか。


「はいお疲れ様です。

 広さはこれです。確認してこれでよかったら。この枠の中にサインを書いてください」

 セレさんが、板に挟んでいた紙を見せる。

 種別、宅地。広さはえーっとメートル法に換算すると三七五平方メートル。うん、東京っ子には広すぎてわからんな。土地の税金は年でえっと五千円?うーん安いよねぇきっと。まあいいか。

 日付を書いて、〈田中駿介〉っと


 サインは真似されないように契約書とかは漢字(日本語)で行こうかな。田中は簡単だけどね。駿はね。

 ステータスに表示されているのなら使えるそうだから。


 紙に名前を書いたとたん、地下から何やら音がして、ぽこんと二つの管が少し離れて飛び出てきた。

 蓋が付いている。一つは上水と書いてあって、もう一つには下水と書いてある。

「これでこの土地はシュンスケ君の所有になりました」


 スゲー!この世界は中世っぽいと侮ってたけど!魔法でのライフラインの構築がサイン一つで出来るんだよ!魔法っていいね!


「では私はこのままギルドに行って登録してきますので。シュンスケさんは、もうちょっと居ますか?」

「はい、あの、ここにさっそく木を植えてもいいですか?」

「いいですよ。もうあなたの土地ですから。けど、上下水道を避けてくださいね」

「はーい」


「シュンスケ、何を植えるの?手伝おうか?」

「ちょうどよかった、アナザーワールドで育ててるのがあってさ」

 そして、アナザーワールドに入る。アリサも付いてきた。

「あ、ここにスコップがあるわ。用意がいいのね」

 と言って二本あったスコップを持ってきてくれた。

「あとは、この子たち」

「これは?」

「林檎の木だよ。ほら、ギルドで食べた」

「うん?」

「食べた後の種をね、水につけて置いたらいくつか芽が出て、ここに植えていたんだ」土属性魔法も使ってね。

 植木鉢に一本ずつ、全部で二十本の林檎が、土と水の魔法で俺の身長ぐらいになっている。それに、リンゴは一本では実がならないみたいなので(ウエブ先生によると)別の日に貰ったり買ったりした林檎の種をばらばら育ててた。

 このうちの五本を持ち出す。


 これを川岸に五メートル間隔で植えるとちょうどいい。本当は桜が良いんだけど、サクランボが見つからなかったし、リンゴの方が実も楽しみだもんね!


「家のための土地だったんじゃないの?先に果樹園にするの?」

「まあね。暖かくなったらここでパーティするよ!」


 そう言いながら五メートル間隔でリンゴの苗を植えていく。


 もうすぐ春。どうせなら間に合わせたい!

「緑色ちゃん!四月に咲くように調節したい!タイミングを教えて!」

 “おっけー”

「じゃあ行くよ」

 真中の苗木の側の土に両手をついて、土魔法を五本の苗木の下で、根を張りやすいように耕しながら、回復魔法を発動する。

 海の中でも見たけど、聖属性の回復魔法は少し工夫すると成長促進も促すんだ。


 五本の苗木はすくすくと成長し、俺ぐらいの高さだったのが幹だけでも二メートルを超え、全体で5メートルぐらいの高さになった。その間に実は付けずに二度ほど落葉した。魔法の出力を減らし、ゆっくりと葉をつけ、花になる芽が出てくるのを見守る。


 “おっけー おうじ!あとは、あたしたちがめんどうみとく”

 “みずのかんりと”

 “おひさまのかんり”

「ほんと?ありがとう、みんな!」

 “そうそう、ことりのすばこも つくっとくといいよ”

 黄色ちゃんから追加のアドバイス。

「なんで?」

 “けむしでるよ。ぱとろーるしてくれるよ”

「おおう」

 “あとは みつばちのすばこ”

 緑色ちゃんからのオーダーもありました、

「よし!つくれるかな。林檎の蜂蜜ほしい!」


 ハニーまみれのあまーい妄想を実現するため俺は動くのだった。

駿介「父さんにもらった蔓から育てた葡萄を干しブドウにしたんだよね」

アリサ「それで?」

駿介「あとは林檎待ち。焼き林檎って小さいときは良さが分からなったんだけど。美味しいよね」

アリサ「・・・今も小さい時」

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お星さまありがとうございます。もっと頂けたら♪

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